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2024年05月19日
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拍手log 32

2010年10月18日
便乗、してもいいですか


現金なもので今日という日にナルトの顔を見れたと思うと誕生日というのは特別なイベントなんだなと認識になる。
それにしても外で待っていたナルトはどれくらいそこに居たのだろう。
俺の部屋に連れ込もうとしたときに握った手はすこし冷たかった。
そんなナルトを暖めるべく、俺は今コーヒーを入れるために湯を沸かしている。
ナルトにはミルクと砂糖も用意。この部屋にあるそれらはナルトの為に用意したというのに一向に減らない。もっと俺んとこに遊びに来てくれればいいのに変なところで一線置かれている気がする。
コーヒーを差し出すとナルトがじっと俺を見返す。
「カカシ先生」
「なーに」
「いいんだってば?」
「なにが?」
「あの人、まだ外にいるってばよ?」
うーんナルトは優しいねぇ。先生、あれはすでに居ないものとして扱ってたんだけどなー、と人としてどうかと思うことを考えていた。
そのまま放っておいてもいいんだけどさっきから玄関のドアを叩いたり名前を連呼されたりしてて近所迷惑この上ない。
「ナルトはこれでも飲んでて」
そう言って外に出る。
俺の顔を見た途端喜色を見せるその女に俺はこう告げた。
「帰れ。でないと悪夢をみることになるんだけど?」
顔色を変えた女はその瞬間、姿を消した。なかなかの瞬身ぶりだ。いつかの日か任務で必要となる才能の持ち主かもしれない。顔だけは覚えておこう。

「ナルト、腹減ってない?」
「ん?だいじょーぶだってば。今日はシカマルのおごりでさ」とナルトがニシシと笑う。
「……シカマル君と同じ任務についたの?」
「ううん。偶然一緒になってさ、腹減ったから飯食いに行くぞーって。どこで食うって聞かれたから一楽!っていったらそればっかだなとか言われてさ。でもシカっていっつも家でご飯食べるのに珍しいこともあるってばね?んでさー」
ナルトがその後なにか言っているのを話半分で聞く。奈良君、ホント、珍しい行動をとったねぇ。俺の誕生日に合わせてそんなことするなんて。ふ、ふふふ。フフフフフ。
「先生、オレの話聞いてるってば?」
「うん、聞いてる超聞いてる」
「うそくさいってば」
俺の普段からの弛まない努力の結果だろうか。動揺していることにナルトには気がつかれていないようだ。
「先生、実はちょっと小腹が空いてるんだよねー……」
「あ、じゃぁさじゃぁさ、オレってばなんか作ってあげよっか」
「うん、米が食いたい気分なんだけどこの際食えるモノならなんでもいいぞー」
「なんでもって……カカシ先生何気に失礼だってばよぉ」
文句をたれつつも台所に向かうナルトの背中を見ながら俺はひっそりと笑う。手料理ですよ、手料理。俺のために作ってくれるんですよ。
「先生!先生ん家の冷蔵庫、すっからかんなんだけど!いくらオレでもこれじゃ無理だってば!」
そうだった。その時時で必要な食材を買ってその日のうちに食べるというのが俺の自炊スタイルだ。今日は呑みに行ったから買い物をしていない。
困った顔をしてたナルトだったがテーブルの上に置いていた袋の中身を確認してそこからなんの変哲もないおにぎりを取り出した。
まさかこれを食べなさいと?一気に心が沈むがナルトはそれを手にして再び台所に戻っていった。
そしてジューとなにかが焼く音が聞こえる。香ばしいこの匂いは胡麻油だろうか。
はい、と差し出された椀を受け取る。
表面に焦げ目をつけた焼きおにぎりに細かくちぎった海苔がのせられさらにわさびが添えられている。
そしてお茶の入った急須。椀にお茶を注ぎながら「お茶漬けだってばよー」とナルトが言う。
「イタダキマス。……、え、これふつーに美味いんだけど」
よかったってばよー、と笑うナルトに俺も笑い返す。
ステキなプレゼントをありがとう、ナルト。
「え」
ナルトが笑顔を強張らせた。

「今日ってばカカシ先生の誕生日だってば?」
え、え、えー……。

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2010/10/5~2010/10/18
拍手log31の続き。
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