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2024年05月19日
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LOV2

2009年04月03日

お腹の中で九尾が笑う。
『あやつはお前の存在を理由にして刃を振るっているのだ』
決してお前を守るためではないのだと。
思い上がるのも大概にしろと。
その内から囁く言葉に耳を塞ぐ。
だって先生は。
オレの知っているカカシ先生は。

「ナルト?」
「あ、あ!ハイってば!」
いけない。先生はじっとオレを見ている。
「そのハイ、は……良いってこと?」
これでもかというくらいに首を左右に振る。
振りすぎたせいかクラクラしてちょっと後ろにふらついたけれどもオレの両手は先生に捉えられままだから。
そんなオレの様子を見てカカシ先生の目に表情が出る。
笑ってる。それを見て嬉しくなった。
先生、先生。あのね。
「なぁに?」
「ダメだってばよ?」
あ。
また表情が消えた。
「えーっと、えーっとね。いきなりだったからビックリしたんだってば。サクラちゃんとオカイモノしてたから」
「うん」
「ビックリしただけで……」
「……」
どうしよう。
言葉が出てこない。

お腹の中で九尾がせせら笑う。
『命令してやれ。あれは犬だからな。主人と認めたヤツの命令には服従するのだからな』



女は先ほどから髪を耳にかける仕草を繰り返しながら話をしている。
「だからねカカシさん。こんなところで立ち話を続けるのもなんだから~どこかに寄らない?私の家でもいいんだけど」
それを聞いて今まで無言で佇んでいたカカシの右手が女に向かい、その首を優しく撫で上げた。
「細いね」
「カカシさん・・・」
女の目になにかしらの期待の色が浮かび上がったのが見える。
「知ってた?気管って太さが2cmもないんだよ」
カカシの右手に力が入る。
「だからちょっと力を籠めるだけで塞がれちゃって、逝くわけだ」
その言葉の意味をようやく理解したのか。
女がもがき始めたがカカシは右手の力を緩めない。
「なんで?って顔をしているね。なんでだと思う?そうそう俺さ、聞きたいことがあったんだよ」
語りかけるカカシの声色は平静だ。
「狐って誰のこと?」
女の目がカカシのそれを捉える。
「なんであんたがあの子に手を出すの?」
唯一顕わになっているその目からは感情が読み取れない。それが女に恐怖を与える。
「俺はね、あの子の周りはあの子を好きでいてくれる奴ばかりになればいいなと思っているんだよ。だからお前みたいなのはいらない」
「か、カカ・・・」
「でもねーあの子がダメだっていうんだよね」
カカシが右手を離すとそのまま女はその場にへたり込んで咳き込む。
「俺は別に手を下してもいいんだけど。そうしたらあの子は怒るだろうしもしかしたら泣くかもしれない。泣かしたいわけじゃないんだよねー。だから俺にそういうことさせないでね?」
そこではじめてカカシの目が弓形になり笑ったのだと女は気が付く。壊れた人形のようにカクカクと肯くのが精一杯だった。

望むはあの子の笑顔。
そのためには何だってするし何だって出来る。

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2009/02/08初出

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