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2024年05月19日
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LOV3

2009年04月04日

スーパーで買う物はいつも決まっている。
カップラーメンと牛乳。
だからすぐ済む。
カゴに必要な分だけ買い込んで会計をすませたら5分もかからない。
「記録更新だってば」
外に出てやり遂げたーってにんまり笑った目に女の人の姿が入った。
その人は通りを歩いてそのまま角を曲がって行った。
この前オレをぶった人。
そうか、よかった。
「あの人、死んでなくて」
よかった。


LOV3


夕食にカップラーメンを食べて、お風呂上りに牛乳を飲んで、明日の準備をしてベッドに入る。
シーツで被ったお腹を一撫ですると体の中からくぐもった、それでいて密やかな笑い声が聞こえてきた。
「九尾。寒くない?」
『外気なぞ気にならんと前にも言っておる。お前の中は居心地がよいのだから』
そう?とナルトが目を細める。
日中に見せる喜びを前面に表したような輝く笑顔ではなく、ひっそりと。
小さくも女の顔だな、と九尾は思う。
『それで?わざわざ我を呼び起こすくらいだから話をしたかったのであろう?』
「うん。今日あの人見た。生きてた」
お腹を右手で擦りながらナルトが話し始めた。
その時の情景を思い出したのかナルトはくふくふ笑う。嬉しそうだ。
『ふん。犬が忠実に主人の命令に従った結果だ』
「カカシ先生は犬じゃないってばー」
『犬だ』
主人の命令に従う。
主人を守ろうと必死になる。
主人の為にその牙を剥く。
……主人の愛情を欲しがる。
これが犬でないというならば何であるというのか。
「カカシ先生を悪く言うなってば。
先生は上忍でかっこよくて里の皆に好かれていて……オレにも優しいんだよ?そんなすごい人がオレの監視をしてくれてるんだってば」
里を守るために。
オレが生まれたこの里を守るために先生が力を振るってくれるんだから、とナルトが諭す。
『間違えるな。お前ではない。我を見ているのだ』
九尾は複雑な思いがする。
この里は、この小さい娘と自分を同一視する愚かな者が多すぎる。
幼いうちから里の人間からの理不尽な仕打ちの理由を後押しするように囁いてきたというのに逆にそれが所謂反面教師というものになってしまったらしい。
まっすぐに育ってしまった。
だがしかし。
今となってはそれでよかったと思う。
でなければ己はこの娘の腹を食い破っていたことであろう。
それを躊躇するくらいには幼い宿主を気に入っているのだ。
「九尾はなんでそんなにカカシ先生に対して厳しいんだってば」
『……犬は狐を狩ると相場が決まっておる』
あれだけはやめておけと言いたいがお前がその犬を好きならば仕方ない、と続いた九尾の言葉にナルトは赤くなった。 
 

2009/02/19初出

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