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2024年05月19日
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だからその涙ごと抱きしめてあげるよ

2009年07月03日

だからその涙ごと抱きしめてあげるよ
 


「分身の術ッ!」
と気合十分な声がしたと同時にナルトは白煙に包まれる。
それが霧散すると…そこにあるのは分身。
髪の色とか着ている物とか本人を指し示すであろう符号はあっている。ずいぶんとヘタレているけれども。
「……へぇ?」
見返すとナルトが真っ赤な顔をして俯いている。
恥ずかしいらしい。
「分身といえば分身だよなぁ」
コレ。と指差すとますますナルトは俯く。
「に、兄ちゃんはコレが俺に見えるんだってば?」
「見えなくもない」
ぽふんと音を立ててヘタレな様子なそれが消えた。
「兄ちゃん」
「んー?」
「オレ、忍に向いてない…?」
「なぁに。おだててもらいたいの?ナルトならきっと大丈夫!自信もてー!フレーフレーナ・ル・ト!って?」
俯いていたナルトがますます真っ赤になった。
多分今は泣きそうになっているのを一生懸命耐えているんだろう。
「あのさあのさ」
「うん」
「試験ね、毎年分身の術なんだってば」
「まぁ基本だしね」
「オレ今年もそれできなくて・・・でもほかにも分身出せなかったやつもいたんだってば。でもそいつ卒業試験受かった!」
「そう」
「オレ、……オレはダメなの?」
忍になれないの?と言った途端ナルトの瞳からぼろっと大粒の涙がこぼれた。
 

その言葉の裏には、どうして認めてくれないの。そういう悲鳴。
 

ナルトがアカデミーの卒業試験に合格できずにすでに数年在籍しているということを聞いたのは最近だ。
年度のそれの基準は当日に発表になるのだけども、まぁ大概は基本中の基本の確認だ。
そして瞬時にそれに対応できるか否か。
だいたいチャクラ特性だけを査定にしているとしたらガイが担当することになったというアイツなんてはどうなんだ、と思う。
実際のところアカデミーを卒業した全員が忍として里に貢献しているかというとそうではないわけで、要はどうしても忍になりたいという意志の確認作業が卒業試験。
で。
そういうことでいえばナルトはとっくの昔に卒業できるはずなんだけどねぇ。
そう思いつつも面で隠している左目はそれの回答を出している。
ナルトのチャクラは瞳の色に近い青。でも練りこむ時に微弱な赤が見える。
本人がもともと持っている資質とは違うそれが邪魔をしている。
そしてその「赤」の存在を警戒している外圧によってナルトはアカデミーを卒業できないとして。十中八九そうだとして…だからこそしょげているナルトを慰める言葉を俺はもっていない。
 

「俺はお前と任務が一緒にできる日を楽しみにしてるよ。待てるから安心しろ」
ただこういうのが精一杯。
いつも以上に小さくなっているナルトを腕の中に閉じこめるとうーうー言いながら鼻をすすり上げる音が聞こえた。

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俺様カカシとおぼこなナルトちゃんシリーズ
2009/06/27初出
 

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