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2024年05月19日
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I LOVE YOU

2009年04月06日
まだまだヒヨッコな部下達との日中の任務とは違って、夜のソレは殺伐としている。
火の国、というくらいだから一応国境はある。
その中にある隠れ里、木の葉の里は城壁が囲んでいて、さらにその名が相応しいほどに周囲は樹々が生い茂っているので天然の要塞と化している。
だけどもそこに侵入を試みようとするのはやはり忍なわけであって。
緊急招集がかかったメンバーでそれらを多少の小競り合いがあったけれども無事処理をした。
月が輝く夜だった。

明日も遅刻しちゃうなーまたあの子達に怒られちゃうなーとにんまりしつつ体を休めるための我が家に戻ろうと地を蹴る。
何歩目かのステップでよく知る気配を感じる。
なんでこの時間にこんなところに。
「ナルト」
「わ!」
よれよれな子供の前に降り立った。
「こんな時間まで修行?子供はたくさん寝ないと大きくなれないんだぞー?」
「・・・む!そうやってコドモ扱いするなってば!修行に夢中になっただけだから!もう帰って寝るんだから!」
よれよれ、と表現したけどもそれは正しくない。
目の前のコドモの服は泥だらけだし頬は擦り切れてるし手は腫れてるし。
そして所々血が滲んだ跡があるんだ。
またか、と思う。
でもそれは口に出さない。
だってこの子が一生懸命隠しているから。
「女の子なのにー。顔に傷残しちゃだめデショー?」
ぐいぐいと親指をナルトの、まだ丸みを帯びたほっぺ(ほっぺとう表現がぴったりだ)に這わせる。
もう血は固まっているみたいなのでほっとするとともに自分が見られなった時間に起こった出来事を思うと自責の念に駆られる。
「先生」
「ん?」
「先生は先生の任務の帰り?もういいの?」
「そうだよ。だから一緒に帰ろうか」
そうして手を差し出す。
ナルトのほっぺがほんのりと桃色になった。
よかった。嫌がれなくて。
手を繋いでゆっくり帰路につく。
ナルトの歩幅に合わせているといえば聞こえはいいけど俺がこの時間をできるだけ先延ばししたいから。
「あ。先生、月」
「うん」
あの時見た月が今は上空に。

「“月が綺麗ですね”」
「うんキレイだってばよ!」
やっぱりわからないかと苦笑する。
だったらうっかり洩らしてしまった自分の感情と表情は口布の中の秘密にしておく。今のところは。
「ナルトー?もっと本読みなさいねー?」
「えー?先生が読んでるようなのだったらノーサンキューだってばよ!」
ナルトが笑う。
俺も笑う。
早く育ってね?


2009/02/11初出

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文豪夏目漱石先生の逸話がモチーフ。
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