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涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 5

2009年06月25日

涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 5



女は中忍で、元々九尾に対して不快感をもつ思考の持ち主。
あの脅威を過去の記憶として覚えている年齢の人間ならば仕方がないこと、とは思う。
それでもナルトという存在を無意識のうちに否定する言い訳にはならない。ただもっと愚かな人間のように行動に出なかった分マシ。
そんな人間はこの里には数いるし所詮その程度の人間、どうでもいいというのがカカシの認識だ。
だが最近里内で醸し出される不穏な気配の出所とその女が結びついたことが問題になった。
つまり九尾を排除しようとする強硬派の意向に乗ってそのための裏工作をしているかもしれない、ということが。
単なる噂話かもしれないそれ。違うならそれでいい。
木の葉の里は忍の里。一枚岩ではないが、磐石でなければならない。
可能な限り速やかに裏づけ確認を取るにはどんな手を打つのが最適かという段になり、なんのことのないおそらく時間の都合の合う同僚同期が集う呑み会で。
彼女は言ったのだ。
理想のオトコっていったらやっぱりはたけ上忍だよねー!と。
だから色がらみ任務、内偵調査にカカシが指定された。
 

ナルトを裏切るような真似はしてない。
それでもそういう任務、と事前に伝えれなかった分泣かせることになったんだろう。
(ゲンマ君。やっぱり貸し無しだよ)
ナルトが目覚めたら伝えられる範囲で話をしよう。
でもきっと彼女は怒るどころか一歩引く。
もしかしたら感情を閉じ込めて無理に笑ってみせるかもしれない。
きっとそうだ。
ナルトは理不尽なことで耐えている事柄が多いからそれに慣れてしまって苦しいときほど人前では笑うのだ。
(今の俺との関係も……褒められたものじゃないからーね)
眠るナルトから別な気配がする。カカシは己の左目をあらわにした。
「ナルトが心配?九尾?」
『……』
「大丈夫。俺だってナルトが幸せになることを望んでいるんだから」
『お主のせいで娘が泣く』 
「それは謝るよ」
『犬なら犬らしく忠義を尽くせ。阿呆』
伝えることを伝えたのか、気配が消える。
「手厳しいな」
まいった、という表情を浮かべてカカシは後頭部をがりがりとかくがその手を止める。
表情はさきほどと違い、鋭く冷めた視線で室内の何もない空間を見据えている。
ただでさえ複雑な事情と立場のナルトに重荷を背負わせたという自覚はある。
カカシはそっと囁く。
「それこそ時間が解決するよ、九尾。……ナルト」
ナルトさえ後悔してなければいい。
彼女は他でもないカカシの手をとったのだから。

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