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涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 4

2009年06月24日

涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 4



深夜。
資料編纂室にあてがわれた部屋の灯りにゆらめく影が二つ。
「ゲンマくーん。もうおりてもいいかなぁ」
「で、結果は」
「クロ」
「そうですか。やはりあなたにお願いしてよかったです。了解ですはたけ上忍。この件は今から森野特上に引き継いでもらいます」
「そうして。あともう俺に色がらみの任務は回さないでよ」
「なんでまた」
イビキに伝達する文書の要件をまとめようと筆をとっていたゲンマはその手を止めてカカシを見やる。
「俺さっきさぁ、ナルトに見られちゃったんだよねぇ。ターゲットとの接触中に」
「ほぉ?」
「術の最中だったから咄嗟に女の視界にナルトが入らないように押さえ込んでさ。あーあ。俺絶対誤解されちゃったよーどうしよー」
「別にいいじゃありませんか。うずまきだったらカカシ先生モッテモテー、とか言って終わりじゃないですか」
「ゲンマ君は俺の繊細な心をわかってくれてない。しかも似てない」
どうやらカカシは落ち込んでいるらしい。
そんなカカシの様子を興味深く見つめていたゲンマであったが。
「なに言ってるんだが……そんなにうずまきの反応が気になるんでしたら今からでも会いに行って説明してやればいいんじゃないですか?」
「話してもいいの?」
「まぁもう後処理だけですし。うずまきの為にカカシさんが一肌脱いだわけですから」
「……ありがと」
「どういたしまして。貸し1ということで」
ゲンマが口に銜えている千本がゆっくりと揺れた。
 

窓の外からナルトの部屋の様子を窺うとベッドは無人で。
でも彼女は居る。
そのままいつものように窓(これまたいつものように鍵がかかっていないのでカカシは口布の下で笑みを形作った)から室内に侵入し隣の間に進むと・・・玄関の踏み込みに蹲っているナルトが目に入った。
声をかけても無反応だったので軽く体を揺さぶると何の抵抗もなくカカシにその体を預けてきた。
「こんな所で寝てたら風邪ひいちゃうでしょー」
カカシがナルトの体を抱え上げベッドに運ぼうとするとその動きで意識が浮上したらしい。
ナルトがゆっくりと目を開ける。
「先生ぇ」
「ん。起こしちゃった?」
「……きてくれたんだ」
そう言うとナルトは再び意識を沈み込ませたようだった。
ほどなく聞こえ始めた小さい寝息。
よく見るとナルトの瞼は赤くなっていて。睫には乾いた塩が。
「明日、ものすごく腫れちゃってるかもよ」
カカシはナルトの瞼に唇を寄せてペロリと舐めあげる。
「しょっぱい」
寝室に彼女を運びベッドにそっと下ろす。
カカシはベッドサイドに座りこんでナルトの顔にかかっていた髪を指で払い、そのまま寝顔を見つめる。
不安にさせちゃってごめんね。泣かせちゃってごめーんね。
そう呟いて、そしてくすくす笑った。
この涙の跡も自分を想っているからこそ。
ナルトが涙をこぼした、という事実がカカシを喜ばせる。

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