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2024年05月19日
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涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 3

2009年06月23日

涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 3



なんだか疲れちゃったってば。
落ち込んだ時でも一楽のラーメンを食べれば元気になるってばよ!途中で誰かに会ったら誘ってみよう!
そう思って駆け出したがこういう日に限って知り合いに会わない。
だんだん足取りが重くなる。
誰か、なんて。
一人でいるのが平気だったのに。
一楽に行くのはやめてとぼとぼと家に向かって歩く。
街路灯がすっかり灯っている時間帯。
忍者だから暗闇を怖がることはないけれどもその等間隔の光はほのかだけども先を照らす明かりで、なんとなく目で追いかけながら歩いていた。
通りに設置されたその一つがチカチカと点滅している。
その場所から発せられたであろう「音」にナルトは反応した。
「……ね……カカシさ…」
点滅する光の下には二人。ナルトの視界に最初に入ったのは茶髪の女性の後姿と銀髪の男性。
街路灯に背を預けている男は片手を女の後頭部に添えていた。
それまで女の頭に顔を寄せていた男が顔をあげる。目を見開いたナルトと視線が合った。
男が空いている手を女の背にまわしてゆっくりと、しかし強く抱きしめる。
それに至るまではほんのわずかだったはずなのに、けれどもナルトにはそれが長い時間に感じられた。
男の瞳が見せる感情の色は冴え冴えとしていて、強くナルトを見据えていた。
 

玄関のドアを開けるとすぐさま飛び込むかのように室内に入る。
急いで鍵を閉めようとするが手が震えているのかなかなか鍵穴に入らない。
金属同士の擦れる不快な音が連続して起こる。
ようやくカチャンと音が聞こえて、ナルトは小さく息を吐いた。
そのままその場にしゃがみこんで自分の体を抱きしめた。
胸から下げているチェーンに通したリングが肌を掠める。
つけはじめた頃には違和感があったけれども今では気にならなくなっていたその感触にきつく目を閉じる。
 

私が誰かを……あの人や里を裏切っているから自分もそういう目に合うんだろうか。
こんな弱い自分は知らない。
こんな風になる感情ならいらない。
あんな目をするカカシ先生なんて……知らないってば。
 

うー、という低い音が漏れた。
 

体の奥から、ナルトを気遣うような気配がある。ナルトを呼ぶ声もする。
だけどもナルトはその呼びかけにも応えずにずっと蹲ったままだった。

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