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2024年05月19日
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涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 2

2009年06月22日

涙は見えなくても泣き声は聞こえる(LOV3) 2



ナルトは実際の実力はどうであれ今だ下忍。
だから担当上忍がついていて、その者から任務の指定もしくは修練日として予定が組み込まれなければその日は休みということになる。
そしてナルトには今担当上忍が便宜上、二人いる。
昔から自分の担当であるカカシと、以前任務でカカシの代わりに隊を任かされて今は婚約者という立場にいるヤマト。
「カカシ先生は任務だってば?」
「僕も詳しくは知らないんだ」
そのヤマトから三日の待機を告げられた。それを聞いたサクラとサイはそれぞれ調べたいことがあるらしくその場を離れる。
そんな二人を見送ったヤマトは、ナルトの自主練習に付き合ってあげたいんだけど実はこれから三日にわたる里外任務でね。待機命令もそのせいさ。だからしばらく会えないんだと告げる。
「隊長、頑張ってね。いってらっしゃいってば!」
ぶんぶん手を振るナルトに苦笑するヤマト。同班で動かないときの、いつもの出立のやりとりで。
「行ってきます」
ぽんぽん、とナルトの頭を叩いて煙とともに姿を消したヤマトのいた場所を見つめるナルト。
ヤマトの指にあったシルバーリングの控えめな輝きが残影になっている気がした。
 

枝から吊るした的にめがけて苦無を投げつける。
一本二本三本。続けざまに。
微妙に中心を外してばかりだった。
「……集中。集中ッ!」
意識して声に出して再び苦無を放つ。
今度は的を掠めもしなかった。
「あーあ」
脱力したかのように息を吐いてナルトはそのまま後ろに倒れた。
演習場の地面には草が生えているのでたいした衝撃ではない。
空は気持ちいいくらいに晴れ渡っているというのにナルトはもやもやしたなにかに捕らわれているようですっきりしない。
だからそれを払拭するかのように「あーあ!」とさらにもう一度、さっきよりも大きな声を張り上げた。
それでもなんだか気持ちがぐるぐるする。
気持ちだけじゃなく体の内から湧き出るもうひとつの意識体もぐるぐるしているのを感じる。
『娘』
「うー九尾ぃ……」
『何を不安がっておる』
「私ってば不安になっている?」
『わからんのか?』
「なんかもやもやする」
『そうか。餓鬼め』
「うー」
ナルトの心がこの件においては不安定になりがちなのも九尾は理解できる。
自分の宿主である青空を切り取ったような娘は当然陽の当たる場所が似合う。
そこで番いの相手と睦まじく過ごしてほしいというのに。
犬め。
自分の欲求のみで娘を絡めとりおって。
あの時絆された己が悪いのか。娘の意志を尊重したのが悪いのか。
『お前が、お前の意志で、奴の手をとったのであろうが。お前がそんなだと居心地が悪くて仕方ない。しゃっきりせんか』
「九尾は今でもカカシ先生がイヤ?もしかして隊長のほうがいい……とか?」
『阿呆が』
自分がやめとけと言ってもささやかな想いを育ててきた娘だ。
今更諦める逃げ道にされたくもない。 
正直どちらも気に食わないのだが、とは言わないでおこうと九尾は思った。

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