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2024年05月19日
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僕に光を彼女に花束を 4

2009年06月10日

僕に光を彼女に花束を 4
 


いつもナルトは茶屋の前に僕より早く着いて待っている。
そして僕の姿を確認すると腕が千切れるんじゃないかと思うほどぶんぶん振る。
ところが今日はその姿がなくて。
知覚を巡らせると店内から気配がする。
覗ってみるとナルトがいつものようにお汁粉を頬張りつつ向かいに座る男に話しかけている。
カカシ先輩だった。
「ああ、ヤマト。先に入ってたよー」
「あのさあのさ、カカシ先生とそこでばったり会ってね。それで一緒に」
一生懸命説明をしようとするナルトに軽く微笑みかけて彼女の斜め向かいの席につく。
「隊長、いつものにする?それとも違うのにする?」
「いつもので」
ナルトが僕の分を注文するために店員を呼んでいる。
「ふーん。いつもの、ね?」
カカシ先輩の台詞になにか含むものを感じる。
「隊長と私ってば甘味仲間なんだってば!」
「へえ?ヤマトー、お前ってそんなに甘いものが好きだったっけ?」
「……なにか棘ありますね」
「そーお?気のせいじゃないの?」
この程度のことを気にしていてはこの人と付き合っていけないので僕は無言で茶を啜った。
いつもより渋い気がした。
ナルトはとてもイイ表情をして僕とカカシ先輩を見ている。
 

「じゃカカシ先生、隊長。またお茶しようってばねー!」
ナルトがぶんぶんと手を振って家路に向かう。
僕とカカシ先輩はそれぞれ手を軽くあげて、それを見送った。
「……」
「……」
「テンゾーさぁ、ナルトとしょっちゅうお茶してるわけ?」
「そんなには」
「そうなんだ?」
「駄目でしたか?」
「べっつにー?ナルトが楽しそうにしてたからいいんじゃない?」
カカシ先輩から醸し出される不穏なオーラに飲み込まれそうになる。そもそもどうしてこんなにプレッシャーをかけられないといけないのか。
「ま、二人っきりってのはあんまりよくないかもねー。噂になったら困るデショ」
思わずカカシ先輩の方を見た。
「ね?」
そう言ってカカシ先輩は歩き出した。
僕もそれに伴って動き始めた。
「……別に僕は噂になっても困りません」
「ふーん」
その時僕は先輩の左側に立っていたのでカカシ先輩の唯一見える目から表情を窺うことが出来なかったけれども、待機所に着くまでそして着いてからも僕達の間には会話がなかった。
周囲には待機中の忍の面々がいてなんとなく室内がざわついている。
カカシ先輩はいつものように愛読書を取り出して読み始めている。僕はというとコーヒーを飲みながらぼんやりと考え事をしていた。
……繰り返してみる夢は元々僕のもつ記憶のものではない。
でも少女を見つめる男にシンクロするせいか感情が揺り動かされるのは確かで。
それに時として夢の内容が違うことがあるのだ。男と少女と……そしてもう一人。その瞳に宿すのは写輪眼。
少女の顔がナルトになってからはそれが顕著で。
あの遺伝子は僕に何を見せようとしているのだろう。
「ヤマトー」
「はい」
「あの夢まだ見るの?」
まるで僕の考えを見透かすかのようなタイミングでカカシ先輩が本から目を離さずに問いかけてきた。
「……そうですね。まだ見ます」
「そう」
カカシ先輩を呼ぶ声が聞こえた。どうやら任務にかり出されるらしい。
本をポーチにしまって気だるそうに立ち上がるカカシ先輩を何気なく目で追う。
「お前さ、間違えるんじゃないよ?」
そう告げて去っていったカカシ先輩。一瞬交差した視線は……鋭かった。

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