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2024年05月19日
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橘香る朝風に

2009年05月13日

「花香る~」を先にお読みになるといいかもしれません。

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橘香る朝風に
 


「……ってことがあったんだよ。桃の節句に」
キバが子供ながらに憔悴しきった様子で語る。
「なるほどねぇーだからこの状況。あ、ナルトちゃん。柏餅の葉っぱは食べないんだよ」
「そうなんだってば?」
むぐむぐと和菓子を頬張っているナルトにキバの母親ツメが声をかける。
「好きなだけ食べていいよー。ナルトちゃんに食べてもらおうと思っておばちゃん腕をふるっちゃったよ」
「ええ?これってキバの母ちゃんの手作り?」
これは粒餡、こっちはこし餡、それとみそ餡ね。
と示されたそれらをナルトはキラキラした目で見つめる。
「俺に作ったんじゃないのかよぉ」とふて腐れるキバであったが「キバの母ちゃんってすごいってばね!」とナルトが微笑みかけると途端に現金なもので満更でもない表情を浮かべてしまう。
だがその度にキバとナルトの間にいるイレギュラーな存在から送られる殺気で表情筋が強張ってしまうのだ。
「……カカシ君。うちの子に殺気を当てるのをやめてくれないかなぁ?ホント、アンタは大人気ないね!」
「今はコドモですからー」
そう。
ナルトの担当上忍師、はたけカカシが子供に変化して鎮座しているのだ。
「ナルト、知ってたか?柏は新芽が出るまで古い葉が落ちない。そこからこの日に柏餅を食べるのは『子孫繁栄』とか『家系が絶えない』縁起物として広まってるんだぞ」
「へー!さすがカカシ先生。コドモの頃からいろいろ知ってたんだってばね?」
いやいやナルト。この人は今子供の姿に変化しているけれども中身は立派な大人だから。
そんなツッコミを入れるのも今は怖い、とキバは思った。
「キバ?どうしたんだってば?なんか元気ない……オレ、もしかしてキバの分まで食べちゃって怒った?」
「あ?あー……そんなじゃない」
さっきからナルトの世話を争うようにしている里の至宝と謳われる男と自分の母親の間に火花が散っていたような気がしたのだけど今の会話でその勢いのまま殺気をぶつけられた。
 

男子の健やかな成長を祈願し各種の行事を行う風習。
それが端午の節句。
今キバは与えられるプレッシャーに息絶えそうだった。
 


どっとはらい

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2009/05/04初出
 

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