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2024年05月19日
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2015年09月15日

俺様カカシとちょっと成長したナルトちゃん。



窓から差し込む太陽光との戦いに負けたナルトがベッドからむくりと半身を起こすと同時に外からナルトを呼ぶ声がした。
「ナルトー?今日暇だよね?午後から先生に付き合いなさい?」
カカシだった。
反射的に頷いたナルトの反応にご機嫌な様子のカカシ。
「じゃー、映画館前で待ってるからねぇ」
そういうとカカシは白煙とともに消えた。
「……あー、あ?」
ようやく頭が覚醒したナルトは慌てて飛び起きて窓という窓を開け放し換気をする。
本日は確かに休みだ。
暇な象徴のように惰眠を貪って見えたかもしれないが今日はたまりに溜った家事労働日。
好きで溜め込んでいたわけでは無い。
下忍のナルトでも忍務内容を選ばなければそれなりに忙しくなるのだ。それでそういうことをちょっとさぼっていたわけで。
「……よしっ!」
昨日帰宅したときに脱ぎ捨てた忍服を拾い上げて洗濯機に突っ込んだ。
天気もいいからマットレスも干しておかないといけない。そしてトイレ掃除もしよう。
朝ごはんはその後でいいから一気にやってしまおう。


午後。
映画館前に到着したナルトは驚いた。
午後からの待ち合わせ時間をカカシは設定しなかったはず。
だから午後枠の範疇であればその場で待機するのも問題ないように短時間で家事をこなしておいたのだ。
だというのにそこに彼がいてまず驚いた。
木の葉の里唯一の映画館では珍しくハッピーエンドでラブなストーリー物の上演をしていてしかも貸しきり状態で再び驚いた。
そのあと予約を入れているから、と言われて連れて行かれた場所は里でも有数な料亭でまた驚いた。
テーブルに並んだ料理の数と豪華さにさらに。
とりあえず一通り箸をつけていく。
「美味しい?」とカカシが聞くので「……うん」と答える。
そういうとカカシが目尻を下げた表情をする。うれしい時はそういう表情をするからきっと嬉しいんだろう。
が、ナルトは思う。
これではまるでふつーの、ちゃんとした、デートではないか。
いや待て。
そんな『デート』をなぜわざわざするのか。
怖い想像が浮かんだ。
「ナルト?」
「あ、うん」
落ちこむのは何故か。そんなことを考えてもしょうがないしきれいに盛り付けられた目の前の料理に罪は無い。
ナルトはとにかく目の前の食事を片付けることに専念することにした。


幼少の頃よりナルトはカカシに特別扱いされていた、とナルトは思う。
そうなったきっかけといえば……そのことを思い返すと記憶が混乱するので考えるのを止める。
いつの間にか彼はそばにいた。それは間違いない。
そしてなんだかよくわからない大人だった、ということも。
でも周囲の話によると里の至宝と喩えられているほどの人物だと聞き驚いたこともあった。
いまでは先生と呼んでいるけれども。


店を出ると意外に時間が経っていたらしく空には星が瞬いていた。
ちょっとだけ、と酒を楽しんだカカシはナルトの目から見てもなにやら上機嫌。
もやもやする気持ちを押さえつけてナルトを声を上げる。
「明日も晴れそうだってばね、カカシ先生!」
「そうだね」
「今日さ、先生ってば待ち合わせ時間も守ったよね!」
「俺だってやれば出来るのよ?」
「普段からもそうだといいってば」
「ナルトだけが待ってくれるんなら、ねぇ」
「……」
「……」
「先生っ!オレってば今日は楽しかった。じゃ、じゃじゃじゃー先生っ!今日はご馳走さ……」
「家まで送るよー」
「なんでだってばっ?」
「なんでって、なんで?」
「なんでって……」
こういう時どうしていいかわからない。
コドモな頃はもっと単純に考えていた気がする。そしてカカシも、時々暴走めいたことをしていたがもっとわかりやすかった。
適当にいい所に連れ出して楽しませてやれば満足するだろうなどと、安く見られているようになったのではないかと怯えたのだ。
「なぁに?なんか機嫌悪いの?つまんなかった?」
「そんなんじゃないってば」
するとカカシがため息をつく。
怒られる!と思ったナルトはびくついた。
その反応にカカシの目が細まった。
「なんなの?せっかくナルトが喜ぶと思ったからいろいろ考えてあげたのに」
考えて、あ・げ・た。
その言葉にナルトはカチンときた。
「……喜べないってば」
「はい?」
「こんなの、違うってば!喜べないってば!嬉しくないってば!」
「はぁぁ?」
カカシの怒気が刺さってくるのを感じたけれども。
「先生はぜんぜんわかってないってば!」
本当は術の指導受けたり忍具店で先生の薀蓄聞いたり一楽でラーメン食ったりがよかったってば
そんな気持ちを言葉にしていくうちに涙がぽろぽろと溢れ出てくる。
右腕で乱暴に涙を拭っても止まらない。
「……でもそれじゃぁさ、いつもと変わらないんじゃなーい?」
「そういうのが大事だってば!」
「ふーん?」
カカシの手がのばされる。ナルトはぶたれる!と思って再びびくつく。
が、カカシはナルトの頭をぽんぽんと軽く撫でた。
驚いたナルトが顔を上げるとカカシと目が合う。
「勝手なことした俺のこと、嫌いになった?ごめーんね?」
「大好きだってばよ!」
叫んだ瞬間。
しまった、とナルトは思った。思っただけではくはくと口が動くのがわかった。涙も止まってしまった。
目の前のカカシはというと。
ナルトの頭に手を置いた状態で固まっていたが、徐々に表情が変わっていく。
本当に、ほんとーに、満足気な表情を浮かべていく。
ますますナルトはしまったぁと思う。
「……そっかー。じゃ、ナルト。やっぱり家まで送らせてねー?」
カカシが機嫌よさそうに言う。

ああ。
憎らしい。
でもなんていうか。
これは送られるだけではすまないかも。
午前中部屋を掃除をしておいてよかった、とナルトは思った。


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2012/9/28~2015/9/15
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