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2024年05月19日
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2011年10月10日

それもまた日常のヒトコマ

 

昨夜は少し、飲み過ぎた。
勧められたからって、あんなに飲むんじゃなかった。最悪だ。
がんがんと二日酔いで痛む頭を抱えて、ナルトはそう思った。
九尾の自浄作用はこういうところには効かないのだと初めて知った。
おまけに、とナルトは少々苛立たしげな気持ちで隣を見る。
ナルトを最悪な気分にしてくれた男は静かに眠っている。自分に背を向けたまま。
……起爆符をお見舞いしてやるってばよ。
一瞬本気でそう思ったが。
そんなことをしてどうなるというのだ自分も巻き添えになる、とナルトは頭を振る。そして鈍い痛みに小さく呻く。
八つ当たり気味に思わずカカシを睨み付けたが、当然というか眠っている相手には何の効果も及ぼさない。
そういえば、とナルトは考えた。
どうして今カカシは自分のベッドに寝ているのだろうと。
昨日はキバ達に誘われて楽しく呑んでいた。
気がついたらカカシ先生が隣にいて。
それでそれで。
……。
……。
だめだ。思い出せないってば。
ナルトは俯く。
そしてちらりと横にいる人物を見る。
相変わらず眠っているようだった。というか寝息も聞こえず。
もしや死んでいるんだろうか。
いやいやそんなこと、先生に限ってありえないってばと頭を振ったナルトは再び鈍痛に呻く。
音を立てずに眠っている様子がいかにもカカシ先生っぽいってばよと、ナルトは妙な感心をしていたが、ちょっと心配になった。
彼も昨日はけっこうな量を飲み干した気がする。
そして現在、まるで本当に息をしていないように見える。そっと肩に触れてみる。やはり反応が無い。
ナルトは恐る恐る呼びかけた。
「カカシ先生……」
「何」
「うわっ」
間髪入れずに返事があったので、ナルトは思わず大きい声を上げてしまった。
カカシは体を反転し、面白そうに尋ねた。
「呼ばれたから返事したのに、なんでそんなに驚くのかねぇ。ねぇナルト?」
「……先生!まさかまさか。最初っから目ぇ覚ましてたってば?!」
「マサカ」
目尻を下げながら答えるカカシにナルトは溜め息をつく。
視線を下ろすとパンツな自分。ブラジャーはベッド下に放置されていて、ナルトは顔を顰めた。
「……人が酔っ払ったのをいいことに、先生、好き放題したってば?」
「言っておくけどがナルトから誘ったんだよ。それくらいは覚えていなーい?」
「は?」誘ったって?それこそマサカだ。だが言い返そうにも覚えてない。覚えていないけどもそこまで自分に対して無責任な行動はしてないはずだ。
じっとりと見返すと「あー。やっぱばれたか。ないない。そういう事実はないよ。ナルトが勝手に暑いーって脱ぎだしたんだよ。先生焦っちゃった」
てへへーと笑ってみせるカカシは嘘は言っていないだろう。だからといってここにカカシがいる理由にはならない。
反論する気も失せたナルトはベッドから下りる。床に放置されていたブラジャーをさっと拾い上げて洗面所に向かう。洗濯機にそれを放り入れ、他の洗濯物と一緒に洗い始める。
カカシはそんなナルトをしばらく黙って見ていたが、ナルトが「今日の格好」に着替え終わったのを見計らってから傍に寄ってぽつりと呟いた。
「先生ね、今日は半日休みなんだ」
「ふーん?だったら家帰ってゆっくり休めばいいってばよ」
ナルトはヤカンを手にとった。
「コーヒー、のみたいな」
そう言いながらカカシはナルトの顔を引き寄せる。
「……ないってば」
「じゃ買っておいて」
ね、とカカシが首を傾ける。
ナルトはそんなカカシを見返し、やがてあきらめたようにため息をついた。

そうして、今日という日が始まるのだった。

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2011/10/2~2011/10/10

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