忍者ブログ

[PR]

2024年05月19日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

君の為にできることはきっとたくさんある

2009年04月27日

君の為にできることはきっとたくさんある



山中花店の店先に並ぶ鉢植えの前でしゃがみこんでいるのは金色の髪を持つ自分の部下。
店主がそばに立っていて、ニコニコしながら相手をしているようだった。
そういえばあの子は植物が好きだったなぁ、もしかして買うのかな?と思っていたのだけど結局何も手にしないで去っていった。
子供がいなくなった方向に気配を追いかけてみるとどうやらまっすぐ家に向かっているようだった。
ゆっくりと店まで足を運ぶ。
「おや、カカシ君」
「ドーモ。……ナルトと何を話してたんでしょう」
「……監視役、ご苦労さま」
イヤミだ。
彼は四代目と懇意にしていた世代の一人。
彼らが、自分らの子供達が同級生になるという偶然を楽しみにしていて、それを肴に盛り上がっていたことも覚えている。
それを知っていながらあの子を“監視”している自分にイヤミを言っているのだ。
「花、見てましたよねぇ」
「コレね」
そういって店主は鉢植えを指差す。
「アヤメ科のキュウコンアイリスっていう品種。キレイでしょ」
「そうですね」
そこにあるのはあの子の瞳よりも若干深い青。
「あの子ね、ウチの常連さん。だけど植物が好きな癖に花は育ててくれないんだよ。何でだと思う?カカシ君?」
「……わかりません」
「花を育てるとしたらやっぱり地面だよ」
「……」
「キレイな花を育てようとしたら鉢植えだけじゃ無理。でも許されないんだよね」
周囲が。
あの子を取り巻く環境が。
植物を慈しもうとするあの子の心を踏みにじる。
「水やるだけで育つ観葉植物ってすげーってば!とか言って笑うんだよ」
だから、と店主が鉢植えを拾い上げる。
「カカシ君。あの子の“庭”を用意してあげなさい。これはそのための投資。協力するから」
「……」
「納得できない?じゃ、うちのイノちゃんのお友達の先生に賄賂ってことにしといてくれないかな?」
「これ……このまま渡したらイノイチさんからのプレゼント、ってことになりますが」
「何だそれが気に食わないのか?カカシ君のプレゼントってことにしたいならお買い上げすればいいよ。ありがとうございます!」
綺麗にラッピングしてあげるよ、と奥のカウンターに引っ込む店主を止めることが出来なく、でもまぁいいかと思う。
ナルト。
お前の喜ぶ顔を見たい人はたくさんいるんだ。



------


2009/04/07初出

PR
« ++ | HOME | ++ »