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2024年05月19日
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拍手log 39

2011年10月02日
つかまれた指先の、その温度



「ねぇねぇサスケくーんっ」
そう言ってサスケの腕にまとわりついて何事かを話しかけるサクラ。
当のサスケは嫌がる様子もなくサクラのやらせたいようにしているが時折チラチラと後方にいるナルトを確認している。
ナルトはというとそんな二人を見たあとには必ずといっていいほど「なぁなぁっカカシ先生ってば!」と大きい声を出して俺のそばによる。
そんな帰り道の立ち位置が確定しつつある第七班。
俺はというとわざと愛読書を持つ方ではない、空いているポケットにつっこんでいた手を意識してぶらりと出す。
ナルトはそれにするりと掴まってくる。その手はまだ小さく、苦無ダコもない柔らかなものだ。
そのナルトの手の感触を少しばかり楽しんだあと、どうした?と問う。
案の定ナルトは期待に満ちた目でこちらを見上げている。

「なぁなぁカカシ先生。今日オレってば頑張ったとおもわねぇ?」
「そうだねぇ。がんばったねぇ」
「あ、あー?超棒読みだってばよ!本当にそう思っているんだったらもうちょっと心を込めて言ってほしーってば。そして一楽のラーメンを奢ってほしーってばよ!」
「そうきたか」
なぁなぁ先生、と今では両手ですがりつくナルト。
その仕草と表情につられて俺はうっかり笑みを浮かべてしまい、慌てて、でもさりげなく愛読書で口元を覆い隠した。口布で覆っているからその表情を悟られないだろうとは思ったがなんとはなしに。
「あー。ナルト」
「なんだってば?」
そう言って俺は視線を前方に向ける。ナルトもそれにつられて見る。そして「あ」と驚きと嬉しさが入り混じったような声を上げた。
俺の視線とナルトの声を受けてか。振り向いたサスケは慌ててサクラの手を振り払った。
「こらーっサスケー!サクラちゃんがせっかく優しくしてくれてるのにっ!離れろってばよ!このスケベっ」
「あぁっ?お前には関係ないだろうが。このウスラトンカチが。大体お前こそカカシから離れろっ」
「はーっ?」
「ちょ、ちょっとナルト!サスケ君になんてこというのよっ」
サスケの行為に呆然としていたサクラだったが立ち直りは早かった。
今は俺の視線の先にはサスケとサクラとナルトが、まるでじゃれ合いながら歩いている。
ふと、空いてしまった左手に視線を向ける。
不用意に接触してほしくないんだけどなぁ。だってなんか……困るじゃないノ。
手に残った感触を反芻しながら俺はぽつりと呟く。
その言葉を拾い上げる人は誰もいないのだけれども、つい。

D級任務の帰り道。
夕焼けがやけに綺麗だった日のことだ。


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2011/9/2~10/2拍手文
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