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2024年05月19日
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伝えたい言葉はまだ言えずにいる

2011年03月09日

カカナルコ←ヤマトの、ヤマト視点、切ないのが読みたいのです。カカ←ナルコ←ヤマトでも……。それで、ナルコがヤマトにも揺れてくれたりすると、尚ステキな感じで!!
>蒼さまからのリクエスト


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伝えたい言葉はまだ言えずにいる
 
 

「今日も私ってばよく頑張ったってばよねー!」
泥で汚れ顔だというのに、にっかりと笑うナルト。
それを見て僕もほっこりとした気分になる。それはきっと同班構成メンバーのサクラもサイも同じ、だと思う。
「はいはい、今日はナルトが頑張ったおかげで任務も楽だったわぁ。多重影分身のありがたみがようやくわかったわ」
「そうだね。それに泥さらいなんて地味な仕事、ナルトにぴったりだね」
でも二人してなにか言わずにいられないのは気心が知れてきているせいか否か。いつもの会話のやりとりのそれに安心して、だから僕は苦笑い。
「もう!サクラちゃんもサイも素直に褒めれってば!」
ねねね、ヤマト隊長!私ってばもっと褒められてもいいってばよね?ご褒美に一楽のラーメン奢ってってばー!
蒼い瞳をクリンと輝かせてナルトが僕の返事を促す。
その顔が本当に面白くて、可愛くて。
つい本音まじりで言ってしまったのだ。
「いいよ。じゃご褒美として明日、デートしようか」
一楽もその時にね。僕がにっこりと笑ってみせると、ナルトはあの大きな目をさらに大きく見開いた。その時にナルトの表情といったら本当に。
「デート、って一般に食事やショッピング、観光、映画や展覧会・演劇・演奏会の鑑賞、遊園地・アトラクション、夜景などを楽しむ、といった内容であることが多い、とこの本に書いてあります。さらに、これらの行為そのものよりもそれを通して互いの感情を深めたり、愛情を確認することを主目的とするということも書いてます。ということは要はセックスする為の準備行動で」
途端、サイがサクラによって地に伏していたのもいつものことだ。
 

いつもと違って今日はナルトの部屋に直接迎えに行くということにした。
ドアを三回ノックする。
「ナルト?迎えに来たよ」
「え?隊長?もうそんな時間だってばーっ?」
ドアの奥からなにやら慌てている気配がする。実際どたばたした音も聞こえる。
かちゃりと鍵を開ける音がして、ドアの隙間からナルトが顔を覗かせる。そしてナルトが僕を見る。そんなナルトを僕も見返す。そしてお互いへらりと笑い合う。
「隊長の私服ってはじめて見た気がするってば」
「そうかい?」
今日の僕の格好というとオリーブカラーのタートルネックセーターにブラックジーンズだ。カラーリングだけでいったら忍服と大して変わらない。
「そういうナルトも今日は珍しい格好だね」
白のタートルネックセーターに赤と黒のチェックティアードスカート。
「もしかして僕とのデートってことで頭悩ませちゃったかな?」
ナルトの背後に視線を向けると、ベッドの上にはいろいろな服が広げられていたりしている。
「この服は!前にヒナタと買い物に行った時に見立ててもらったやつで!今日着たい気分だったから、着たんだってばよっ!服は自分のために着るんだしっ!誰かのためになんて絶対無いしっ!」
真っ赤な顔して反論するナルトを、僕はハイハイわかったわかった、とおざなりな返事をしてその頭を撫でる。その対応が不満なのか僕の手の下でナルトは頬をぷっくりと膨らませる。その表情も可愛いなと思ってしまい声を出して笑ってしまった。
それもナルトには気に食わないらしく頬がますます膨らましている。
 

「これからどこ行くってば?」
「映画、とかどうかな。今、何をやっているかわからないんだけど」
商店街を歩きながら、そんな会話。
サイが解説した通りにデートの定番といえば映画だ。木の葉の里にも映画館はある。
映画鑑賞というのはその映画の上映内容を見ている間は女の子と話す必要がないし会場内が暗くてお互いの顔がよく見えない。だから例えば初対面で面と向かって女性と話すことが苦手とか緊張してうまくいかないことが多いという男性にとっては、すごく向いているデートコースの1つだ。
正直言うと僕も、任務や修行に付き合うという方向無しでナルトに長時間付き合うのは滅多にないことなので無難なところを選んだつもりだ。
「あー、そういえばさ。昔カカシ先生の素顔を探ろうと思ってサクラちゃんやサスケと先生を尾行したことあったんだってば。その時さ、カカシ先生ってばイチャイチャシリーズの映画化!って看板見つけてさ。すっごい感動してたんだってば。絶対観にいくっ前売り券買わないと~とか言ってさ。あの時は自分の先生がこんなエロエロでどうしよーって真剣に悩んだってばよ!」
「エロエロ?」
あ、という顔をナルトがする。
「そういえば隊長の知っている昔のカカシ先生ってどんな感じ?」
「どんなって……すごい人だったよ。それは今もだけど。エロエロって印象はなかったなぁ」
「えー、だってさだってさ、カカシ先生ってば昔も今もイチャパラとか十八禁の本、人前だろうがなんだろうが堂々と読んでるってばよ?あ、それとも隊長の知っているカカシ先生はあれを読んでなかったってば?」
「いや、読んでたけど」
「あういう行動がエロじゃなきゃなにがエロなんだってば?」
「……さぁ?」
僕はナルトの話に適当に相槌を入れたりしているがそれでもナルトは満足しているようで話は尽きない。
いつの間にか映画館の前に着いていた。
上映演目を確認してみようと看板ポスターに目を移すといち早くそれに気がついたナルトが「ぎゃーっ」と吠えた。
「た、隊長!私っこれだったらノーサンキューだってば!」
宣伝ポスターに描かれているのは暗闇の背景から誰とも知れない手がこちらにのばされているイラスト。煽り文句はまさに。
「……ホラー映画だね」
「ぎゃー!言うなってばーっ」
ナルトが手で両耳を押さえている。怖いんだったら見なきゃいいのに。
思わず僕が噴出すと、ナルトが涙目でそんな僕を批難する。
結局映画は観なかった。
双方の嗜好に合っていなかったから、ということにしておく。
空いてしまった時間をどう過ごすかという段になりそこで初めて気がついた。日常の生活行動範囲がさほど広くない僕は誰かを楽しませる場所というものをよくは知らない。どうしようかと思ったけれども結局いつもの甘味処に行くことにした。案内された席に着く。注文を済ませた後、変な間が発生した。
「ナルト?」
「隊長」
「なんだい?」
「あのさあのさ、今日のって、もしかして、フリ、する必要出てきたんだってば?それで?」
こそこそ。小さい声でそんなことを訊くナルトの視線は正直だ。浮かんだ疑問を素直にぶつけてきた。そして戸惑いの色もそこにはある。
「そんなことないよ。僕はね、ナルトと普通に休暇を過ごしたかったんだよ。……だってナルトは僕の、そのー、……だろう?」
そう告げるとナルトは正に困っていますといった表情で、けれども笑って応えてくれた。浮かんだ表情のわけが推察される分、僕の心中は穏やかではないけれども。
その後ナルトの希望通り一楽のラーメンで夕食を済まし、今はナルトの部屋に送り届ける途中。最後はナルトの部屋の玄関先まで送り届けるのが定番だろうけど。
「そこまで送ったら、それだけじゃすまないけど。いいのかい?」
僕がにっこり笑いながらそう告げると、ナルトはしばらくぽかんとした顔をしていたのだけど徐々に頬を赤く染めていく。
「あ、あー。じゃあさじゃあさ、ここでいいってば。隊長今日はありがと。楽しかったってば」
「なんてね。そんなに焦らないように」
さっき言ったのは冗談だよ、という意味をこめてナルトの頭をぽんぽんと軽く叩いてみせるとナルトは真っ赤な顔のまま口をぱくぱくさせている。その表情が面白くてかわいくて。
 

ナルトと別れ帰路に着く途中。道先に並ぶ電灯のひとつが明滅していていることに気がつき、なんとなしにそこを見る。途端に僕の周りの空気の気配が変わった。
予測できたことだった。その先に立っていたのは、やっぱりあの人だった。
「任務おつかれさまです。今里に戻ったんですか?カカシ先輩」
彼の名は今日散々耳にしていてそのたびにもやもやしたのは確か。だけど自分の口でその音を発するとなんだか、違う。それが興味深く、微笑んでみせる余裕が出来た。
歩みを進めていけば自然とカカシ先輩の前に立つ位置に。
「あ、うん、そう。……お前は今日休みだったって?」
「はい。それでせっかくの休日だったので、今日はナルトと一緒にいろいろと」
「そう」
「先輩がいらっしゃらない間もナルトは相変わらず元気いっぱいですよ」
「そう」
「九尾の暴走もなく平穏なものでした。報告することは特にないですが、必要なら今後も」
「別にそういうことじゃないんだけど、ね。サクラが、さ。お前たちがデートだって嬉しそうな顔をして教えてくれたもんだからそれで」
「僕がナルトに手を出すんじゃないかって心配して、それで?」
「……あ、まぁ、なんていうかさ」
僕の問いかけに対して、カカシ先輩はぼそぼそと呟く。
「大変ですね、『先生』というのは。僕も下忍の子を担当することになったら先輩みたいな感じになるんでしょうかね」
カカシ先輩がふっと息を吐くのがわかった。次いで首を傾げたことによるコキ、という音がしてそれらが思いの他に大きく響いて聞こえた。
「お前、なんか変わったねぇ」
「そうですか?僕自身はそういう自覚はないんでちょっとわからないですが。僕よりも先輩のほうこそ変わったんじゃないですか」
今でもナルトに多大な影響を与えていて、ナルトの心を占めるほどの存在になっていて、しかも先輩ほどの人がそれを手放そうとしないなんて。
「……本気なの?上に言われてフリをしてるんじゃなかった?」
「本気もなにも」
フリしてるなんて、先輩に言った覚えはないですけど。
そんなことを敢えて告げてみるとカカシ先輩の瞳の表情が変わった。刺すような、というのはこういうのをいいます。その見本のような視線で。
それで動じているようであったら駄目なわけで、だから僕は笑って応える。
「ナルトの中の思い出を全部塗り替えるのは叶わないかもしれないけども、そこに僕との時間の記憶を入れるくらいはいいでしょう?それともそれすらも許しませんか?」
「……別に、ナルトがいいんならいいんじゃなーい?」
そう言いながらそんなことは許さないよという殺気を見せてくる。
「……僕の子供はカカシ先輩に見てもらいたいな、なんて思うんですよ。先輩が指導忍なら安心できます」
「奇遇だねぇ。俺も自分に子供が出来たら、その時はお前に見てもらいたいなと思ってたところだよ。お互い長生きしなきゃーね」
ナルトのこととなればまったくカカシ先輩は僕の知らない人のようだ。
「……明日は久しぶりにナルト達との任務につくよ。それを伝えようと思って待ってた。お前の予定は明日にでも自分で確認して。じゃーね」
「はい。おやすみなさい」
白煙とともにカカシ先輩がその場から消えた。
少しだけ知覚を鋭敏にしても彼の行方は辿れない。でもきっとそのまま帰路についたんだと思う。
鳥なり犬なりとにかく他の伝達手段を使えばすむことをわざわざ。僕の口角がうっすらと上がる。
本当に先輩はナルトのこととなれば。
「……次の休暇はいつかな」
そう呟いて、僕は小さく笑った。

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お待たせしました!
リク主の蒼さまは「LOV」シリーズがすきと言ってくださったこともあってその設定でいかせていただきました。
蒼さまのみお持ち帰りOKです。今後ともよろしくお願いしまーす。

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