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2024年05月19日
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いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 3

2010年11月14日

いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 3



車軸が積載量オーバーです!と訴えんばかりにぎーぎーと不快な音を立てるのをナルトは聞きながら大八車の後方から押して進行を手伝う。サスケもサクラも同じように押す。
道中は緩やかではあるが山道なのでそれなりに力の要る任務ではある。積載量の割にはすいすい進むのはカカシが引いているせいだろう。
だからいつもよりも楽なのだ。体力的には。
通常与えられる任務がたとえDランクといえども、そしてその内容がどんなに過酷であろうが指示はするけれどもよっぽどのことが無い限り手は貸さない担当上忍のカカシが率先して大八車を押している。いったいこれはどういったことなのか。
そして意識をそちらに向けるとなんのメロディーかわからないが鼻歌が耳に入ってくる。
常では考えられない状況に子供たちはそれぞれ不安に押しつぶされそうになっている。
特にサクラ。ああ、きっとこれはナルト関連なのだなーと思い至ったサクラはちらっと視線をナルトに向ける。と、それを受けた本人は真っ青な顔をしてぶんぶんと顔を横に振る。
(ナルトーっこれもあんたのせい?そうなんでしょっ!)
(ち、違うってサクラちゃーんっ!オレもホントわけ分かんないだってばよー!)
読唇術を使わなくても、それこそ写輪眼を行使しなくても読み取れるであろう会話。
こんな不安材料を抱えたままではいけない。見ろ、サクラもナルトも青い顔をしているじゃないか。それは任務に支障をきたす、と考えるのがうちはの姓を冠する子であった(ちなみに彼も常に無い状況に具合が悪くなっていたのだが、そこはプライドでもって隠し通していた)
いつもカカシはおかしいが今日は特に、というのが彼らの共通見解なのは間違いない。しかし誰も何も言わない。
サクラは優等生故に基本的にカカシには従うし、自分にはなにかとぎゃーぎゃー突っかかってきたりイルカ先生には無邪気に寄っていくナルトが、ことカカシに関しては引き気味だ。
だから彼は言ってやったのだ。
こいつらを守るのは俺だ!そんな心意気とともに。
「カカシっ!」
「ん?なに?小便か?」
「違う!」
「じゃ、ナニよ」
クダラナイことで俺の足を止めたのだとしたらお前を頭から喰ってやる、そんな物騒なオーラを醸し出しているカカシにサスケは怯んでしまった。
「……そろそろ昼だ」
そう呟くのが精一杯だった。

「これでCっていうのはさすがにおかしくないか」
サスケが昼休憩でそんな風に疑問をぶつけるのをナルトは手にもったおにぎりを今にもかぶりつこうとしたポーズのまま固まって聞いていた。
サスケの主張はこうだ。
護衛任務でもなく、これは単なるお使い任務。本来ならDで十分なはず。
「言われてみればそうよね。里外に出るとか、里内でも内容次第ではCにランクが上がるのも考えられるんだけど」
サクラも同意する。
ナルトはというと昨日のカカシとのやりとりを思い返していた。
頑張って任務をもぎ取ってきた、と言っていたがランクの高い任務をとは言っていなかったような気がする。カカシはサクラやサスケがどう思っているかはなんとなく予想がつくくらいわけのわからない人間の代表格ではあるが任務に関しては嘘はつかない。
「あのさあのさ、Cだと思ったのってオレ達が勝手にそう思い込んでたんじゃないってば?カカシ先生ってばそういうこと言ってなかった気がする」
ナルトの言葉にサクラとサスケは「あ」という顔をし、そしてがっくりと項垂れた。
「そろそろ出発したいだけど、お前ら飯はもう済んだか?」
カカシが現れてそう告げる。
休憩してからまだ20分も経っていない。いつもだったら昼食に割り当てる時間は1時間、少なくても30分はとるはずなのにもう出発するのか。慌てて手持ちの昼飯を頬張る三人をカカシはつまらなそうに眺めていたのだが。
「ナルト」
はむり、とおにぎりを口にしたナルトにカカシはちょいちょいと手招きをする。
「……なんだってば?カカシ先生」
「先生ね、弁当忘れちゃったの」
「はぁっ?準備あるからって帰ったクセに?その準備に弁当の用意は入ってなかったってば?それとも家に忘れて来たってば?」
「まぁまぁ。んでさ、その食いかけ、ちょうだい?」
食いかけ、といわれたのはナルトが手に持ったおにぎりあと一口分。
「……先生、これで足りるってば?」
不安気なナルトにカカシは唯一曝している右目でにっこりと表情を作る。
「モチロン」
口布をさっと下ろして一口でおにぎりを口にしてまた元通りにしたカカシは口をもごもごさせたまま「ごちそうさまー。おにぎりはやっぱりシンプルな塩にぎりがいいねー。米の味が引き立つしー。さすがナルト、塩加減も絶品だーこれはもう愛だねぇ」と言う。
それを聞いてナルトは照れてなのか顔を赤くし、サスケは己の手のおにぎり(具はおかか)を無言で握りつぶしたあとハッとして残りを平らげ、サクラはハイハイ、惚気ってやつですねーと母親に作ってもらった弁当のおかずで最後に残しておいた玉子焼きを口に放り込んだ。

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