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2024年05月19日
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それを恋と認めざるを得なかった

2010年09月20日
それを恋と認めざるを得なかった



幸か不幸か、ナルトに関わるとすべての感情が乱される。
それは自分だけではなかった。
九尾という負の要素をもってしても気がつけばナルトの周囲にはそれをものともしない理解者がほんの少しだが増えていた。
今まで知り合ったどんな人間にもないものがナルトの中には備わっているだろうか。
それがどんなものかは測りようがなかったがカカシを惹きつけて止まないのは確かだった。
絶対的な信頼を寄せられて、無邪気に自分にまとわりついて修行を強請る。たったそれだけの行動がただ可愛らしかったし嬉しかった。
だから自分がその存在に恋することになろうとは、思ってもみなかったのだ。
初めて感じた恋情に、カカシは恐れることはなかった。ただ戸惑った。
カカシは子孫を残すことにも、家という安らぎを得ることにも興味はなかった。ただ己の技量を里のために使うことのみを必要としていた。排除すべき敵のみを必要としていた。
大切なものは、里の忍びとしての自負心。
ナルトは、捨てることが可能だ。一番は決まっているから、いつでも切り捨てられる。
捨てられるが故に捨てられない。矛盾した感情がカカシを焦がした。
たとえば折にふれ、ナルトのことを想っていたなど、当の本人は知りもすまい。
飄々とした表情を擬態していた裏にそんな感情を隠し持っていたなんてナルトはちらとも思い浮かべもしなかっただろう。
安全のために保護下におきたいといえば聞こえがいい。正しくは自分だけのものにしたい、だ。
だからナルトのために力を揮ったことも多々あった。
もう一人のカカシが、そんなカカシを見て危ういと思っている。
思っているだけだ。留めようとも思わない。
自分は本来、そんな薄情な男なのだ。
要ると思えばなんとしてでも拾い上げもする。要らないと思えば見向きもしない。
欲がないと褒め称える者もいるが、決してそうではない。
必要な物が、本当に少ないのだ。だから、欲深くなく見えるのだろう。

初めて制したのが自分だと言う自負からか。ナルトの体だけが目当てだと言い切れれば、どれだけ楽だったろう。
それとも人にくれてやるのが惜しくなったからか。
けれど一度たりとてナルトが己の物となったという確信を持ったことなどなかった。
ナルトに原因があるのではなく、カカシの方に原因があるのかもしれない。あるいは両方。
最も得たいと願うことがナルトを手に入れる為の条件であるならば、ヤマトだってカカシの相手にもならない。里にいる他の面々もだ。
彼らはナルトを案じる余裕がある。カカシには、それがない。案じる余裕など微塵も持てぬほど、ナルトを得たいと願っている。
唯一の例外はサスケだ。サスケについてはナルトの執着のほうが強い。そしてサスケがそれに甘えているところがあると見ている。
ナルトのいうとおり彼を里に取り戻すことが出来たとしたら、その執着も薄れるはずだ。

ナルトは必要だ。
もう隠すことにも飽きていた。ナルトはカカシにとって必要不可欠なのだ。
だからもう一人の自分が、そう想うことが危ういと思って見ている。
見ているだけだ。だが、見ている。
そこまで考え、あぁ、と気がついた。
何をどうしても要る物は要る物として手に入れるのだから、当然もう一人の自分もそのことを知っているはずだ。だから見ているだけなのだ。
見ていることが最大の制止になると、もう一人の自分は知っているのだ。

カカシは、やはりそれを恋と認めざるを得なかった。

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2010/9/2~2010/9/15 元拍手文。LOV設定。先生の独白めいた感じですが思いつめ過ぎてなんだか怖い人になってしまった気がします。
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