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2024年05月19日
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いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 2

2010年09月09日
いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 2


それから一週間もしないうちのこと。
「お前らー、よーく聞けよー。明日は泊まりを必要とする任務の予定だから。それ相応の準備をして阿吽の門の前に集合。それでは先生はこれにてドロン」
端的な用件のみを告げてとっととその場から消えた担当上忍の行動にその場にいた部下達は唖然とする。
が、しばらくしてその残していった言葉の意味するところが頭に入ってきたのか彼らの表情にじわじわと喜色が浮かぶ。
「泊まり?ってことはC級?大変じゃない!」
「C級?!もしかしてすげー任務?やったってばよー!」
「……フッ」
三人三様の反応で帰路につくさまは子犬のじゃれあいのようである。

家についてからナルトは部屋の奥からリュックを探し当てた。
そしてテーブルでメモ帳になにやら書き出しはじめる。事前に必要なものをあらかじめ箇条書きにして準備が終わった順にチェックをいれるという作業。
以前遠出を前提とした任務の時にナルトは何をどう準備すればいいか分からずそれでいて興奮して寝付けず結局当日の朝になって用意し始めて時間に追われて焦った上に任務には必要のないものまで持ち込み大荷物になった、ということがあった。
その時荷物の中身を見てサクラは笑いサスケには呆れられたものだがカカシが苦笑しながらこうするといいと教えてくれた方法が今やっていることだ。
「えーっと?着替えとぉ、忍具とぉ、簡易医療セットもいるってばよね?昼ごはんはおにぎりでいいってばね?それは早起きしてー。あ、そういえば兵糧丸とか足りてたってば?」
ペンを放り投げて収納棚の引き出しを開けては中の物を確認してみるナルト。
「ん?泊まりってことは野宿?んじゃ毛布もいるってばね」
今度は押入れに向かって毛布を一枚引っ張り出す。
その後もあれやこれやと部屋の中を動きまくり、気がつけば床にはナルトが必要と思った物がたくさん広げられていた。
「……あれ?いつのまに?」
「いつのまに?じゃないでしょー。明日から泊まり任務だっていうのにわざわざ部屋を散らかしてどうすんの」
「カカシ先生もいつのまに?」
「……別にいーけどね、お前が俺に全然気がつかなくてもさー」
小さくため息をつき、よいしょと言いながらカカシはやはりいつものように窓から侵入する。
床に転がっている巻物を手にとってそこに書かれている文面にざっと目を通したカカシは「これは必要ない」と言うと棚の巻物を積んでいる箇所に重ねて置いた。
「あとは……まぁ備えあれば憂いなしというし、許容範囲デショ」
「ホントだってば?」
「まーね」
あとはそのリュックに全部入ればだけどねーとカカシが言うとナルトはその頬をぷっくりと膨らませる。その膨れた頬をカカシが指で突くとぷしゅぅ、という音。
カカシがにんまり笑いながらそういう行動をとるのをナルトは不思議な面持ちで見返した。
「先生、なんかいいことあったってば?」
「んー?まぁね。俺としてはナルトが任務に向けて一生懸命に取り組んでくれるのが嬉しくてね」
「オレってばもともと任務にはキチンと向き合うの!」
「その割には普段はサクラやサスケと一緒にぶーぶー文句たれるじゃないの」
ナルトの主張をカカシはあっさりとかわす。ナルトが再び膨らませた頬をカカシがまた突く。もちろんまたぷしゅぅという音。きー!と憤慨するナルトにカカシはますます楽しそうな顔をする。
「こんなに喜んでくれてるんだと思うとさ、頑張って任務をもぎ取ってきた甲斐があったね。明日頑張ろーね」
ニコニコと笑いながらカカシはナルトの頭を撫でる。
なにかおかしくないだろうか。明確にここがおかしいという判断(強いていえばカカシの態度、だが)ができずにいるがなぜそう思うのかわからないままナルトは頷く。
「さーてと。俺、今日は自分家に帰るから」
「え」
「俺もねー、準備があるのよー。じゃーまた明日ーね」
ひらひらと手を振って窓から身軽に飛び去っていったカカシの後ろ姿をナルトは見送った。

翌朝。
阿吽の門の前でカカシを待つ部下三人の目に映ったのはたくさんの荷物を積んだ大八車を引いてこちらに向かうカカシであった。
「やー諸君、お待たせ」
積載量的にもおかしいそれを汗ひとつかかずに引いてきたカカシがいつものように挨拶をする。
「今回の任務はこの荷物を届けること、場所はあの山越えた先、谷間にある『ほむら亭』ね」とカカシが言うと門のそばで入里チェックを行っているコテツが「カカシさん任務であそこに行くんですかーいいですね」と羨ましげな声をあげる。
「いいトコロなんだってば?」とナルトが問うとコテツの隣に座っていたイズモが頷きながら「あそこの温泉宿は周囲が静かでね、風情があるんだよ」と微笑む。
「温泉、宿?」
「そう。温泉」
混浴露天の湯が有名なんだよなっとコテツが含みを持たせた笑顔を見せる。
「混浴……」
ナルトが呟く。
まさか先日の風呂を断ったが為にこの任務を引き受けたのだろうか。
ちらりとカカシを見るとその視線を受けて当の本人は不敵に笑った、ような気がしたナルトはひくっと喉を鳴らした。
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