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2024年05月19日
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いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 1

2010年08月22日
いつだって君という存在に一喜一憂しているよ 1


「えー。本日、先生は別任務に借り出されることになったから」
指定した集合時間を余裕でぶっちぎって登場したカカシの第一声にその部下であるヒヨコ達は各々の表現方法で批難したがそれを受けたカカシの「俺だって行きたくないよー。なんでナルトとの任務を休んでまでBランク任務に付き添わないといけないのさー。あーツマンナイ」という言葉に部下達は固まる。
Bランク。
自分達が日々課せられているDランクのものとは違い、それは確実に里外任務に当たることを意味するのではないだろうか。しかも場合によっては命の危険にさらされることもある。
だが忍びたるもの、己に研鑽を、さらに里という形態を維持するための使命感を感じているならば与えられる任務は己の能力に見合った正当な上層部からの評価の表れなのだ。
しかしカカシの中ではBランク<(ナルトと一緒にいられる)Dランク、らしい。
「ウスラトンカチ」
「むっ?!」
「お前今すぐ強くなれ。お前が強くなれば俺達もCランク任務あたりが通常になる。わかったか、今すぐ強くなれ」
「……オレってば弱くねーもん」
「俺に組み手で勝てた試しがないくせにか?」
「むきーっ!サスケだって俺に負けたことをあるくせに!なにあっさりなかったことにしてるんだってば!」
「は?俺がいつ負けた?お前、頭も悪いのか」
「あ、あ、あー!?頭も?頭もって!?サスケこそ都合いい脳みそだってばね!サスケの馬鹿!アホ!スカシ野郎っ!」
「ちょっとナルト!サスケ君のことそんな風に言わないでよ!」
途端に騒がしくなった部下達を眺めていたカカシだったが「はいはいはい。先生、お前達の態度にいろいろ言いたいことはあるけれども今は時間ないかーらね」と告げると同時に。
「え」
「おいっ!」
右手でサクラ、左手にサスケをがっと抱えたカカシは、続いてナルトの方を見た。
その視線を受けて、ナルトはひくっという音を立てる。
「ナルト」
「ナ、ナンダッテバ」
「お前はここ。つかまれ」
カカシが顎をくいくいっと上げる。ナルトは後退った。
「ほら、早く」
再びナルトからひくっという音がしたがそれはサクラの「カカシ先生!それ!と、これも!セクハラですよ!」という声や「カカシっ!離せ!あとウスラトンカチに何言ってやがる!」という声にかき消された。

ぼふん、という音がしたのでイルカは顔をあげた。
そこには里の至宝と謳われる男はたけカカシが両脇にサクラとサスケを抱え、ナルトを背中におぶさって立っていた。
その表情は唯一あらわになっている右目でしか推し量ることはできないが、見る人が見れば無茶苦茶不機嫌そうだとわかる。なんたって目が据わっている。
しかしそれで怯むイルカではない。戦場で敵として向かい合った場合はその限りではないが。
「カカシ先生、お待ちしておりました」
「……ドーモ」
あれ、イルカ先生?それにここってばアカデミー?とイルカの姿を捉えたナルトがするするとカカシの背中から滑り降りてイルカに駆け寄り、なんで?なんでアカデミーに?とイルカの両腕をとって疑問を口にするとそれに答えるかのように微笑むイルカ。カカシの目がさらに据わる。そして天地無用というステッカーが貼ってあったらその扱い訴えられますぞ!とどこぞの誰かにいわれそうなくらいにぞんざいにサクラとサスケを解放した。
自然落下で床に落とされたサクラはしばらくはその痛みをぶつぶつ言っていたがナルトの言葉を思い出したのか周囲を見渡し、あ、ほんと、図書室だと呟く。
サスケも無言ではあるが現在位置を把握したようだ。
「今日はね、俺の代わりにイルカ先生がつくから。お前らもいきなり知らないヒトに無茶いわれるよりはいいでしょ」
唯一見えている右目だけで笑顔を作るカカシの言葉に部下達はそれぞれ喜びの表情を見せる。
「ま、それはそれとしてだな。はいはいナルト、万年中忍先生から離れて離れてー」
そう言いながらカカシはナルトとイルカの間に割り込み、ナルトを背に回した。
「本当はいやなんですけど。ナルトをアナタに預けるのなんてホントーにいやなんですけども、Dランク任務といえどもそのお給金はナルトの生活に関わるじゃないですか。俺としてはお嫁サンに苦労させるような甲斐性無しなつもりはないんですけどもこの子を一人前の忍びにするのも俺にとっては大事な誓いなんで。今回はしょうがないのでナルトを預けますけどもー」
「……ハイ」
「ナルトに手ェ出したら殺します。わかっていると思いますけど一応、ね?」
「カカシ先生、あなた相変わらずですね」
「はい?それがなにか?」
社交辞令とは相手とのつきあいをうまく進めるための儀礼的なほめ言葉やあいさつのことである。大人というのは時に本音をかくして建前をほんの少し表に出すことによって人間関係を円滑にする努力をする。そう考えればカカシとイルカのやりとりを社交辞令というには無理がある。そもそもカカシのようにすぐ物騒なことを口にするのは恫喝なのだ。
「いえ、別に、特には」
イルカが視線を下に向ける。元同僚であったミズキはなぜこの男に怯まなかったのだろうか。そんなことをつらつら考えてみたりする。自問自答しているうちは答えは出ない。
「ではお前ら。イルカ先生の言うことをよく聞くように。じゃーまた二日後ね」
カカシがその場から文字通り煙のように消えると、サクラもサスケも、そしてイルカも大きく息を吐いた。が、ナルトだけが「二日後?!」と素っ頓狂な声をあげた。

「やー、ただいまナルトー。俺、疲れちゃったよー」
二日後の夜。
ナルトの部屋の窓からそんなことを言いながら侵入してきたカカシ。
任務から帰ってきたであろう、いつもよりもちょっとくたびれている風情にナルトは「お風呂、用意しているってばよ」と返す。
それはなによりーとぽいぽいと額宛も手甲も外しながら風呂場に向かう。
浴室のドアに手をかけようとしたカカシはすでに全裸状態。が、そこでぴたりと動きを止め振り返るとカカシが脱ぎ捨てた物を抱えてついてきているナルトと目が合った。
「ナルト」
「なんだってば?」
「一緒に入ろ?」
途端にナルトが真っ赤になる。
「やだってばよ!」
「なんで。前は一緒に入ったこともあったじゃない」
それはそれっ!ていうかこっち見んな!前隠せ!とナルトは抱えていた衣服その他をカカシに投げつけてその場を離れた。
「……ナニをイマサラ」
ある意味、雄雄しい格好のままでカカシは呟いた。
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