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八つ当たりすら不毛(無自覚6)

2009年04月17日

八つ当たりすら不毛(無自覚6)
 


「じゃ行こうか」
とカカシが手を差し出すとおずおずとナルトは自分の小さな手をのばした。
それをとって少し力を籠めると一瞬驚いた顔をする。
与えられる好意にまだ慣れないのだろうか。戸惑うのだろうか。
それでもナルトがゆっくりと笑顔を浮かべるのを確認した時、息を止めて様子を窺っていたことに気がつく。
自分としたことがずいぶんと緊張していたんだなとカカシは思った。
 

7班の任務が終わっての帰り道。
いつもなら子供達は各々帰路に着き、カカシ1人で報告書を出しに行く。
時間を有効に使うために瞬身の術でその場を後にするのがカカシの常なのだが、その日はナルトが一緒に行く!と言い出したのでそう長くもない距離を連れ立って歩いている。
夕暮れ。
他愛のない会話。
・・・繋がれた手から伝わるあたたかさ。
思っていた以上に心が浮き立つのを感じながら脈絡のあるようでないようなころころと話の展開が変わっていくナルトのおしゃべりに耳を傾ける。
 

アカデミーの門が見えた。
 

カカシが握っていた小さな手がするっと抜けて金色が離れていく。
「イルカせんせー!」
門に背を預けていた男が駆け寄る姿を目に留めると満面の笑顔でそれに応える。
イルカの腰あたりにぽふっと飛びついたナルトをカカシは見ていた。
「イルカ先生!待たせたってば?」
「いーやちっとも?」
それからカカシ先生こんにちは、と会釈をする。
「こんにちはイルカ先生。ナルトと待ち合わせですか?」
「まぁそんなとこです。今日一緒に飯を食う約束していて」
そうですか。
いつもの一楽なんですけどね。
そうですか。
会話が止まる。
そんな大人達の間にいるナルトは相変わらずイルカに抱きついたままだがなんだか嬉しそうな表情でそんな二人を見つめている。
「カカシ先生も一緒に行こう?」
ニコニコ笑うナルトにカカシは目を細める。
「んー残念。先生、報告書を出したらそのまま待機なんだよねー」
「そうなんだってば?」と小首を傾げるナルト。
「そうなの」
残念残念、そう呟きながらカカシは二人から離れ、建物の方に歩き出す。
・・・カカシ先生ってばさっき今日はもう何も予定がないって言ってたけど。
オレの勘違いだってば?
「・・・」
「どうしたナルト」
去っていくカカシの後姿をじっと見ていたナルトはイルカに問われるとなんでもないと呟く。
「イルカ先生!行こうってば!」
ぱっと顔をあげて元気に走り出すナルト。
おいおいそんなに急がなくても一楽は逃げないぞーと苦笑を浮かべて一歩を踏み出したイルカは突如背に感じた悪寒に恐怖を感じた。
まるで背骨を鷲掴みにされた感覚。
それはすぐ消えたのだがそっと背中に手を回す。
なんともなってない。
背中から骨が出ているのではと思ったのだ。
そっと後ろを振り返ると建物の中に入っていくカカシが見えた。
今目が合ったような?
「なんで?」
イルカは引き攣った。 


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 2009/03/23初出

 

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