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2024年05月19日
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2010年05月01日
さくらさくら・1


満開を誇るかのように咲いている桜の並木道をカカシ先生と歩いていた時のことだった。
先生はふいにオレの前髪に手を伸ばしてきた。
「先生?」

------桜の樹の下には死体が埋まっている

カカシ先生がぽつりと呟いた。
私は「え?」と聞き返す。
カカシ先生は眠そうな目を細めるだけで何も言わない。
「マヂで?え?」
桜を見ると心が浮き立つくせに妙に感傷的になったり、夜の桜の壮絶なまでの美しさに怖いと感じることがあったりするのはそういうことなんだろうか。
不安気な表情で周囲を見渡す私を見てカカシ先生は「実際は埋まっていないと思うけどね。そういうことを書いた小説があるんだよ」と教えてくれた。
「な、なーんだっ!焦って損したっ!カカシ先生脅かすなってば!」
我ながらワザとらしいほどな大きな声を出すとカカシ先生が小さく笑った。
「ほら、花びら。ついてたよ」
「う、うん」
行こうか、と私の頭をぽんぽんとはたいて先を進んだ。
先生の目がどこか沈んでいたのが気にかかった。


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さくらさくら・2


ナルトは楽しそうに桜の樹の間を歩き回っていたから馬鹿なことを言ったと思う。
ほら、追いついてきたナルトは幾分か戸惑った表情をその青い瞳に宿している。

花は花。
桜の美しさには罪は無い。

ナルトは、今では桜には目もくれず俺だけを見つめている。
そうすれば俺の心の内が読み取ることが出来るというように。

桜はただ咲くだけ。
美しさゆえに人を惹きつけているだけだ。それに咎などあるわけがない。
集う人達に煩わしさを覚えるのは自分の中に宿っているある感情故。
咎を受けるべきはそんな浅ましい心を持っているのを知られたくなくて隠している自分だ。

「先生」
「ん?」
「もしさ、もし桜の樹の下に死体があったとしてさ」
「……埋まってないよ」
「そういわずに聞いてってば。あのさあのさ綺麗に咲くための助けになってるんだし、それでさ、桜を観に人が集まるから死体の人も毎年この時期はさびしくないってばね?」
「……っ」

ね、と俺の手をとるナルトのそれを思わず強く握り返した。
ナルトは一瞬驚いたような顔を見せたが、へへっと照れくさそうにする。
「そうだね。さびしくないかも」
そんな返事を受けて、「……よかったってばよ!」と笑うナルトの笑顔は本当に綺麗でつられて俺も笑った。


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2010/4/15~2010/4/30

1は梶井基次郎の短編小説「桜の樹の下には」、2は世阿弥作の能楽作品「西行桜」をモチーフにしました。
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