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2024年05月19日
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ため息もあきらめも今更で(無自覚5)

2009年04月17日

ナルトの髪を紅が櫛で梳いている。
丁寧なその仕草がくすぐったいのかそれとも照れくさいのか。
時折密やかな笑い声がする。
それを見つめる人、人、人。
 


ため息もあきらめも今更で(無自覚5)
 


任務ではなく、カカシ班と紅班の合同演習。
与えられた制限時間内に索敵に優れている紅班から如何に逃げまくるか、攻撃性とスタミナに優れているカカシ班を如何に追い詰めるか。
言ってみれば鬼ゴッコ。
その演習の最中にナルトは川に落っこちたのであった。
 

演習は一旦中断。
中断の理由ははっきりしているのでキバはナルトをからかい、サスケは鼻で笑う。シノはというとじっと見守るだけだ。
そんな有様に区切りをつけるようにそこまでの反省点や評価できる点を上忍師であるカカシは後頭部を掻きながら語る。
確かこの男は木の上でイチャイチャパラダイスとかいう18禁の本を片手に寛いでいなかったか。
下忍達らはそんな疑問が浮かぶのだが真っ当な意見に耳を傾ける。
「くしゅん」
一同が音のしたほうを見る。
髪の毛から滴を垂らしたナルトが口元に手を当てたまま頬を染めていた。
いつも着ている上着は今は木の枝にかけて干している。
その下に身に着けているタンクトップだって絞ったのをそのまま着直した状態なのだ。
冷たさにクシャミのひとつも出るだろう。
「まだ髪濡れているじゃない。ハンカチとか持ってないの?」とサクラが言いながらかばんを探る。
「ナルトちゃん。もしよかったらこれ使って?」とヒナタがタオルを差し出す。
サンキューと微笑んでそれを受け取ったナルトはガシガシと水気をとるために手を動かした。
「ああそんなんじゃ髪が痛むよ。貸してごらん」
紅がさりげなくタオルを取り上げる。
そして前述のシーンに戻るのであった。
 

陽を浴びて、水分を含んだ髪に光が乱反射する。
髪を梳く紅となすがままのナルト。それを見ながら女の子話をしているサクラとヒナタ。
カカシはというと目を細めながらナルトを見ている。
当然、というのもうんざりするが自分達の傍にいる。
男子はというと少し離れた場所で思い思いに過ごしているのに。
その様子は予想できたから、紅は小さくため息をついたあと今目に入った姿はなかったことにするように首を振る。
「うずまきは髪を伸ばさないかい?せっかく綺麗な髪をしてるのにもったいないよ」
そう問いかける紅にナルトは複雑な表情をする。
「だってサクラちゃんだって今短い……」
「あらナルト、私はこの髪型が似合ってると思うんだけど?」
不敵な笑顔を見せるサクラに対して慌てて「うん、すごい似合ってるってばよ!」とナルトが首を縦にふって同意を示す。
今の髪型のサクラちゃん大好き!とそういって笑うナルトにありがと、と返すサクラ。
「ナルトちゃん。私これから髪を伸ばそうと思うの」とヒナタは語りかける。
日向の血に縛られて自信が持てなくて苦しんでいた宗家の娘は髪を伸ばすのを頑なに拒んでいた。
だからその決意に紅は微笑む。
「うずまき。こういう言い方をするのもなんだけどね。男ってのは基本的に女の長い髪に弱いんだよ?」
お前もくのいち。そんなので騙される男を笑ってやればいい。
そう耳元で囁いた言葉をうけてナルトはくりっと視線をカカシに合わせる。
「カカシ先生も髪の長い人が好きだってば?」
「うん?好きだよ?でも今のナルトの髪型も似合っていると思うよー」
そう言ってニコリと笑う銀髪に一斉に襲い掛かるのは思わずなのか実力行使にでた方が楽なのか、な火・犬・蟲。
それらが狙った攻撃ポイントから瞬時に距離を稼ぎなんなくかわすのも上忍としては当然だろう(いくら自分達が受け持っている下忍達が優秀だとはいえ、それをかわせないようだったら問題ありまくりだ)
それにしても。
あの視線は単なる部下に対してのそれじゃない。
どれだけの想いを込めて見つめていたのか。
そしてどれだけ耳を欹てていたのか。
まだこんなにちびっこい子供相手に。
紅はまたため息をついた。
 

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2009/03/19初出

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