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2024年05月19日
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君は僕らの太陽だ

2010年04月28日
君は僕らの太陽だ


(あれ、あの子)
僕の視線の先には公園の水飲み場があって、そこで知っている子が袖を巻くってハンカチを濡らしていた。
後姿だったけど、あの子だと分かる。
それはあの子がこの里では珍しい金色の髪の毛だったからじゃない。
幼馴染のイノも同じような髪色だからそれで覚えていた。
まるで男の子のような女の子。それが-----
「うずまきナルト?」
僕が声をかけるとその背中が小さく動いた。驚かせてしまったらしい。
恐る恐るといった風に振り向いたその顔を見て僕は眉をひそめる。
ナルトの頬が赤く腫れていたからだ。

「えっとえっと、……誰だってば?」
「僕?秋道チョウジ。アカデミーで同じクラスなんだけど覚えてない?」
「え、あ、ごめ……」
「話したことないから知らなくてもしょうがないか。でも僕は知ってたよ」と目を細めて見せた。
僕は丸い顔でさらに目が小さいせいでそれをするだけで笑顔になって見えるらしい。
今目の前にいるナルトにもそういう風に映ったらしい。
「うん、チョウジだってばね!よろしくだってば」
そしてにっこりと笑った。
(なんだ)
イノと全然似てない。それどころか。

公園のベンチに腰掛けてるとナルトはハンカチを頬に当てて冷やし始めた。
「それ、どうしたの」と僕が訊ねるとナルトは「転んだんだってば。ほら、オレってドジだから」と小さく笑った。
「……そうだねー、ナルトってなんでもないとこで転んだりしてるから怪我多いもんね。ほらこの前の苦無投げの授業のときもさ、勢いあまって前転してたよね」
途端に真っ赤になってあれは違うんだってばっと言い訳しているナルトの言葉を聞きながら僕はにこにこした表情を崩さずお菓子を頬張る。
本当は知っている。
どうしてナルトが怪我が多いのか、知っているんだ。

今日の授業はどうのこうのと話をしていたらナルトがふと口を噤む。
「どうしたの?」
「あのさ、それ、美味いの?」
ナルトが指差した先。それは僕がさっきから食べている「ポテトチップス とんこつラーメン味」。
「食べてみる?」と袋を向けるとナルトは二枚ほど掴んだ。
小さい声でイタダキマスというとそのまま口の中に放り込んで咀嚼している。
すっごい大口と驚く僕をよそに、ナルトは食べながらの表情をくるくる変えていって、それがまた面白くて。
「どう?」
「……美味い!なにこれ?ホントにラーメンの味がするっ!」
「最近の僕のお気に入りなんだ。もっと食べる?」
頷くナルトに今度は僕も自然と笑顔になった。二人で食べるといつものお菓子もさらに美味しい。
最後の一枚を食べ終わった僕は袋の口を持ってパンっと叩く。
それを見たナルトはびっくり顔だ。
「これすると、食べ終わったって気になるんだよねー」
「あはは、チョウジ面白いっ!今度からオレもやるってばね!」
アカデミーにいる時よりも楽しそうにしているナルトを見て僕は嬉しくなった。

そんな僕にすっと影がかかる。いつのまにか幼馴染のシカマルが立っていた。
「チョウジ、とナルトか。珍しいな。こんなところで何をしてるんだ?」
「シカマル」
「……」
それまで笑顔でいたはずのナルトの表情が無くなった。それを受けてシカマルも怪訝そうな顔をしている。あれ、まさかナルトって。
「ナルト、これシカマルね。彼も僕たちと同じクラスだよ」
「あ、そうだったんだってば?」
「……覚えてねぇのかよ」
ごめんってばと照れくさそうに笑うナルトと呆れながらも口の端をあげているシカマル。
「聞いてよナルト。シカマルったらさ、あのポテチ好きじゃないっていうんだよ」
「えーマジで?あんなに美味いのに?」
信じられないという表情のナルトに見つめられて当のシカマル本人はひくりとする。
「いつの間にお前ら仲良くなったんだ?」
「「さっき」」
はもる僕達にシカマルが噴出した。

それから僕達はアカデミーでも一緒に遊んだりするようになった。
無事卒業して下忍になったときにナルトだけ違う班になってしまったけれど、相変わらず僕達は仲良くやっていた。
自来也様と修行の旅に出るという時は見送りにも行った。
「強くなって戻ってくるってば!」と笑うナルトに実は涙が出そうだった。
だって三年という期間は長いから。

だからびっくりしたのだ。里に戻ってきたナルトに。

相変わらず小さいけれども背が伸びていたし短かった髪は二つに括ることが出来てるくらいの長さになっている。
ナルトを形成するであろう全てが三年という期間を物語っている。
ちゃんと女の子に見える。
「ナルトって、本当に女の子だったんだねー」
「本当にって。チョウジってばシツレイだってばよ」
「でも外見だけ変わっても中身は同じだ……」
呆れるシカマルの言葉に僕も頷く。
ここは一楽で、僕とシカマルはナルトの両隣の席に座っていて、ナルトはすでに二杯目のラーメンに取り掛かっているからだ。
「だってさだってさ、いろんなとこ旅したけどさ、ここのラーメンよりも美味いものなんてなかったってばよ?食べたくて食べたくて、私、夢にまで見たってば」
どんだけだよ、とツッコミを入れるシカマルに僕も笑う。
シカマルはあんなことを言ったけどナルト、中身も少し変わったみたい。
だってさっき自分のこと「私」って言っていた。
「それにしてもカカシ先生がまだ独身だってのが驚いたってば」
「ずーっと恋人作ってないみたいなんだよね。イノが言ってた」
「……へぇ」
「カカシ先生、もてるのにね」
「え、先生ってばモテるの?」
「うん」
一瞬箸を止めたナルトは再びすごい勢いでラーメンを啜りだした。
あのこと本気だったんだでもまさか、とかぶつぶつ言うからナルトの顔を覗うと真っ赤になっていて。
問いただしたくともナルトからはなぜか何も聞くな!というオーラが漂っていて。
僕とシカマルは顔を見合わせた。

あの時質問して、何か行動を起こしていれば、こうなってなかったかな?

「僕さ」
「ん?」
「僕さー、シカマルがナルトを幸せにしてくれればいいなーってずっと思ってたんだ」
「……」
「ずーっと思ってた」
「悪かったな。叶えてやれなくてよ」
「ホントだよ。シカマルにはがっかりだ。でもさーナルトが笑ってくれてるならいいや」
「……そうだな」

今僕らの大事な友達が、降り注ぐ花弁の下、とびきりの笑顔だ。
横に立つ男と時折視線を合わせては照れくさそうにしている。

「ナルトーっ」
手を振って呼びかけるとあの子がこちらを見た。
「チョウジ!シカマルー!」大きく手を振り返すナルト。
「幸せになってねー!」
僕の呼びかけにぱちぱちと瞬きをしたあと「モチロンだってばよー!」と満面の笑顔を見せてくれた。

あの子が笑うと僕達は嬉しくなる。
だって君は僕らの太陽だから。
これからもずっと僕らの太陽だ。


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そらまめ様による7万HITSリク「最後はカカシ落ちの切ない三角関係」。三角関係ってこうじゃないし切なくも無いし。そらまめ様のみお持ち帰りOKです。ありがとうございました!
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