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2024年05月19日
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知らない振りなど出来やしない(無自覚4)

2009年04月16日

知らない振りなど出来やしない(無自覚4)
 


重く垂れ込めた雲に、降るなと思ったらやはり夜には雨になった。
 

アスマとカカシは待機が終わった。
それぞれ傘を差して連れ立って帰路につく。
なんとなく小腹がすいた感じだったので蕎麦でも食っていくかという話になった。
あっちの店な、とアスマはその方向に足を向けたのだがカカシの足は動かない。
訝しげにカカシの様子を伺うとある一点を見ている。
雨で視界が悪いせいかアスマの目には何も見えないのだが。
しばらくそのまま立っていると視線の先には二本ほど骨が折れた傘を差してこちらに向かって来る子供。
傘の下から見える服の色は間違いなくあの子、か。
「うずまき」
「あ。アスマ先生、カカシ先生」
こんばんはだってばよ、とその子供の声が傘の下からする。
「なんだ。お前の傘壊れているじゃないか」
「えへへ。これしかなくってさーでも使えるってばよ?」
顔が見えない。
身長差を考えればその状況もありえなくはないけれどもそもそもこの子供は挨拶時は相手の顔を見て言う子だったはずだ。
「ナルト」
カカシが手をひざに当ててナルトの顔を覗き込む様子をアスマは黙って見ていた。
「・・・何かあった?」
「なにかってなにがだってばよ?」
「お前笑い方、変だよ」
傘が揺れた。
「アスマ、また今度。悪いね」
「ああ了解した」
カカシはそう告げると消えた。
ナルトは傍からみてもわかるくらいに焦り始めている。
カカシが立っていた場所とアスマを、そして先ほどナルトが歩いてきた方向を繰り返し見て。
その目が少し赤くなっていて。
「うずまき。俺ァ腹が減っているんだよ。蕎麦食いにいくから付き合え」
「で、でも」
「……カカシのことだったら気にするな。あれは趣味をやりに行ったんだ。急に思い立ったんだろ」
「しゅみ?!」
「熱心なヤツだからな」
やらないと気が済まないんだろうよ。
そういってアスマは笑って煙草に火をつけた。
 

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2009/03/19初出

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