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2024年05月19日
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結婚できない男 5

2010年04月05日
「あ!今日はカレーなんだー」
ひょっこりと窓から現れた男が嬉しそうな声を出す。そのまま室内に侵入し、いそいそと食器棚から皿とスプーン取出しテーブルに並べ、席についた。
「……」
その様子をフライパンの中をかき混ぜながらナルトは見ていた。
「カカシ先生」
「なに?」
まさにワクワク、といった風情で座っている己の上司の姿にナルトは眉間にしわを寄せた。
「先生ってば、うちじゃなくてさー。彼女さんとこで食えばいいじゃん」
「ナルトの作る飯って美味くてさ。それに俺、今、彼女いないんだよねー」
「うそ」
「ホント」


結婚できない男 5


カカシの身辺に変化があったらしい、ということをナルトが知ったのはその日だったが、すでにその情報は周知の事実だったらしい。
女が切れないはずのカカシが今フリーである。しかもその状態がすでに数ヶ月に渡っている。
噂の真偽を興味本位で直接本人に確かめた者がいて、そしてその者によるとカカシもそれをあっさりと認めたとのこと。
つまり。
「カカシ先輩は木の葉の里女子だけで千人斬りを達成してしまった、ということですね。さすがです。そしておめでとうございます」
「……テンゾー。なにがおめでとうなのよ。オンナノコ達のいる前で変なこというんじゃないよ」
「彼女達の前で堂々とイチャパラシリーズを読むというのにいまさらそういうことを言いますか。そして僕の名前はヤマトですから」
「千人斬りってなんだってば?サクラちゃん?」
「えええ?それを私に聞くのっ?」
「この本によると、1) 腕だめしや祈願の目的で、千人の人を斬り殺すこと。2)2俗に、千人を数えるほど多くの異性と肉体関係を結ぶことをいう。だそうです。ふむ」
「はいはい、サイは変に納得しないように。ナルトもそこで目を丸くしなーいの」
変則的な構成のカカシ班。そこでの会話といえば普段ならば各自が意識を向ける存在、ナルトのことで盛り上がる。
だが今回ばかりはあまり焦点の当たらない、というかいつも聞き役に徹している通称コピー忍者が中心だ。
適当にはぐらかすのではないかと思われたカカシが意外にもきちんと答えるものだからナルトとサクラはとあれやこれやと質問攻め。
「でもカカシ先生がフリーでいるなんてホント、不思議よね」
「そうなんだってば?」
「そう。先生の彼女は今誰某だって話題はいまや里の天気の話と同レベルよ」
「そ、そりゃすごいってば」
「くのいちは情報が早いからね。ナルトはそういうことに興味はないのかい?」
「カカシ先生って上忍だしすげー忍者だってのはわかるんだけど、モテルって言われてもピンとこないっていうかー」
「お前、何気に失礼だねぇ」
ぎりぎりぎり。
「先生っギブ!それ本当に痛いんだってばー!」
なんとかカカシの拘束から抜け出せたナルトの肩にぽんと手が置かれた。
見るとサイが笑顔を浮かべている。
「ん?」
「なるほど。ナルトはカカシさんに興味がないということですね。僕はナルトに興味があります。だから僕と付き合いましょう」
なんでそうなるんだってばっ!とナルトは怒ったが、当のサイはというとニコニコと笑顔を浮かべるだけだ。
「でもカカシ先生が彼女と一緒にいるところって見たことないわね。で、気がつけば違う人になってたりするのよね……うーん?」
とサクラが唸る。
「先生の性格についていけなくなるんだってば?」と問うナルトにさーてね、とカカシは曖昧な表情を浮かべる。
気がつけば火影室の前だった。

「きたか」
室内に入ると書類に囲まれた状態で執務をしていた綱手が顔を上げ「いきなりで悪いがこれを頼む」と書類を一枚差し出した
それにカカシはざっと目を通す。
「……なるほど。これでしたらこのメンバーで十分対応できるかと思います」
その回答を受けて小さく頷いた綱手が姿勢を正した。
「ところでカカシ。お前の婚活は芳しくない状況だって?」
ニヤリ、という表情をつけて。
どうやら噂は綱手の耳にも入っているらしい。

「さっきもこいつらにも責められてたところですよ」とははは、とカカシは後頭部を掻く。
「相手にこれといって注文があるわけじゃないんですけどねー」
しれっとした表情を浮かべてカカシが答えた。
「注文ねぇ。この相手がいい、という存在もいないのかい?」
「……はぁ、まぁ」
幾分声のトーンが落ちたような、歯切れの悪い返事に綱手は片眉をぴくりと上げたがカカシの表情はいつもの飄々とした雰囲気を纏っていた。
「失礼します。綱手様……あら、皆さんお揃いで」
綱手のサポートとして腕を振るっているシズネが書類を抱えて部屋に入ってきた。
「ナルト君。これから任務ですか?」
「おうってばよ!」
元気よく答えるナルトにシズネは微笑みかける。
「よしカカシ。シズネと付き合ってみろ」
「了解しました」
その即断即決に皆があっけにとられる。そして。
「あひーーっ綱手様、何を言ってるんですかー!しかもカカシさんもなんで了承してるんですかーっ!」
シズネの絶叫が室内に響き渡った。

『よい女房をもらおうと思ったら、ダンスの輪の中から選ばずに、畑で働いている女性の中から選ばなくてはならない。』
byプリボイ
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