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2024年05月19日
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結婚できない男 4

2010年03月29日
カカシという男は付き合う分にはOKでもいざ結婚となると難ありなのだろうか。
「大方、誰でもいいって態度だから、じゃないの?オンナってそういうとこ、敏感にわかるからね」
したり顔で頷くアンコに、カカシは誰でもいいってわけじゃないよと呟いた。
店先での恋愛相談モドキは、実はまだ続いているのであった。


結婚できない男 4


「じゃあさじゃあさ。カカシ先生が付き合う人って、先生が言うところのお嫁さんタイプだったんだってばね?」
「うーん。まぁあれはものの例えというか。そこまで知る前に、別れちゃうんだよねー」
「ていうか?あれだけの理想をお持ちながら恋愛事に関しては常に受身で捨てられるってパターンを踏む。そこんとこどうなのよ、カカシー?」
ナルトの疑問にカカシが答え、そしてアンコがヘッと哂う。一瞬でその場の空気が変わった。
「あのさー。俺だって別れましょとか言われる度に傷ついてるんですけど?男ってけっこう繊細なイキモノなのよ?」とカカシはむっつりとした声で反論する。
「それは存じませんでしたわー。カカシの心はガラス細工で砕けまくってもうこなごなねっ」
視線で人が殺せるとしたら今のこのやりとりの最中のことをいうのではないか。
間に挟まれたナルトはというと頭上で繰り広げられている冷戦に汗をだらだらと流す。

話だけ聞けばカカシは来る者拒まずという付き合い方をしてきたらしい。
その時付き合った人が好みのタイプ、という人がいるのでカカシもそうなのかもしれないが。

「カカシ先生って好きなタイプとかねーの?エロ仙人みたく若いねーちゃんがいいとかさー」
うーん?とカカシは唸る。
「んー、若いに越したことはない、かな」
「そうかーやっぱり先生もおっさんだったんだってばねぇ。……って痛いってばぁぁぁ」
「なにが、やっぱり、なのかなー?そして誰が、おっさん、なのかなー?」
ぎりぎりぎり。
ナルトのこめかみを両の手で形作った拳骨、しかもその中指をピンポイント攻撃の要にして締め上げるカカシ。
そんなやりとりをアンコは止めるわけでもなく、お代わりを注文するために店員を呼ぶ。
汁粉ドリンクの追加。さらにみたらしダンゴもだ。ナルトも食べるだろうと思って1皿多めに注文した。
店員の手によって運ばれてきた団子を一串、瞬く間に平らげ、その串でカカシを指しながら口を開く。
「正直なところさ、カカシが一般女性だけを相手にしてるうちは結婚は無理だと思うのよアタシは。あーいうオンナってやれイベントだ記念日だって盛り上がるじゃない。それに応えられる?出来ないでしょ?」
「うーん。まぁ確かに」
こういう稼業だ。
暦通りの休みなんてとれるものでもないし、不定期休だ。しかも危険と隣り合わせな仕事。
「その点、同業の人間のほうが仕事に理解ある分、マシじゃないの」
でもお年頃くのいちの連中にはカカシはアウトオブ眼中だけどねーというアンコの言い分を聞き、うーむと天を仰いで何事かを考えていたカカシはナルトの顔をじっと見た。
「カカシ先生?」
「じゃ、ナルト。俺と結婚しない?」
安易、それでいて唐突なカカシの発言にアンコは口に含んだ汁粉ドリンクが器官に入り咽る。
「えーっ?ノーサンキュー!オレってば火影を目指す女!しかもまだピチピチの10代だってば。なんでカカシ先生みたいなおっさんと結婚しないといけないってば!」
「お前ってドタバタ忍者だけどこうやってみるとなかなか可愛い顔してるし、俺の仕事も理解してるだろうし、悪くないんじゃないかな。で、誰がおっさんだって?」
「先生だってば。分かってねーの?って、痛いイダイーっ!やめろってばーっ!」
「お前も懲りないねぇ、あっはっはー。」
じゃれ合っているなぁ。
再びピンポイント攻撃を受けるナルトを見てアンコは思う。

「ところでナルト」
とカカシがナルトに声をかける。ナルトはこめかみを擦り涙目になりながらも「なんだってば」と返事をする。
「お前が食っている団子、うまそうね。一口ちょうだい」
「いいってばよ」
はい、とナルトが差し出された串にぱくりと食いつくカカシ。もちろん口布は下ろされていた。一瞬で元に戻されたが。
「甘いねぇ」とその頬をむぐむぐ動かしているカカシに「甘いは美味しいだってばよ」と串に残った団子をはむりと口にするナルト。
その一連の様子をアンコは見た。
「か、カカシっ」
「なに?」
「今アンタっ」
「なによ」
顔を隠す系忍者という括りがあるかどうかはわからないがその際たるカカシが(自分もいるというのに)無防備に己の面をさらした。対するナルトも至極当然のような反応だった。
その行動にお互い自覚がないのか。それとも。それとも?もしかしてありえるんじゃないか?この師弟。
呼びかけられたというのに一向に返事をせず、それどころかニヤリニヤニヤと笑うアンコの表情にカカシは眉間に皺を寄せた。


『急いで結婚する必要はない。結婚は果物と違って、いくら遅くても季節はずれになることはない。』
byトルストイ
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