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2024年05月19日
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結婚できない男 3

2010年03月17日
その後ナルトは自来也のもとで修行の旅に出て、そしてそれを終えて里に戻ってきた。つまりそれ相応の年月が経っていたのだが。
「カカシ先生ってば、また?」
「また、というかいつもと変わらずというか」
店の軒下に備え付けられたベンチで甘味を楽しむ二人。
ナルトは手にしたみたらし団子を今にも口にしようとした状態で固まり、そのナルトと並んで座っているアンコは汁粉ドリンクをぐびりと飲み、にやりとする。
どうやらかの上司の身辺事情はナルトが里にいない間も相変わらずだった。


結婚できない男 3


分かったことがいくつかある。
カカシは毎回告白されて付き合うこと。そして3ヶ月ほどで相手から別れを切り出されるということだ。
「なんで3ヶ月なんだってば」
「そこは男女のイベントが絡むからよ」
なるほど、とナルトは思った。
つまりそういうイベントを過ごした上で、カカシは相手に見切りをつけられるということなのだろうか。
「カカシ先生って……あんな本読んでいるのに」
「そりゃあんた、あれを参考書にしていきなりイチャイチャエロエロ全開で迫られても困るってもんでしょ」
あっはっはーとアンコは声を出して笑う。
イチャイチャエロエロ、と呟いたナルトはほんのり赤くなる。
それを見たアンコはいつまでもガキンチョだと思ったのにアンタも成長したのねぇ、なんていって背中をばんばん叩く。
痛いってばよーとその手から逃れようとするナルトをしっかり引き留めたアンコは「まぁ正直なところ、カカシは結婚願望が強すぎて引かれるんでしょ。わかるわかる」と言う。そして、ねぇカカシ、と何もない空間に呼びかけた。
すると一陣の風とともに木の葉が舞い、カカシが現れた。
「うお、カカシ先生っ?いつから?!」
「……それなりな時間はいたかもね」
「そ、そうなんだ」
ちょっと詰めてちょーだい、とカカシはナルトの横に座る。
カカシの気配をまったく読めなかったということが露呈し、ばつが悪いナルトは小さくなる。
ちらりと横目でカカシを窺う。
マスクや額宛で隠されているのでいまいち分かりにくいがカカシは昔と変わってないような気がする。
「カカシ先生ってば、結婚したいんだってば?」
「ん?まーね。ステキなお婿さんになるのが俺の夢でね」
「じゃ、すればいいのに」
「相手がいなきゃさすがに俺でも無理なーのよ」
「相手」
カカシの言葉をナルトは鸚鵡返し。
そういえば自分の覚えている範囲でもカカシの相手は常に忍びを職としてない一般女性ばかりだったような気がする。
「先生は一般の人がいいってば?」
「そうだね。なんか家庭的って感じするでしょ」
そういってカカシはニコリと微笑む。
「カカシは『家庭的』ってものに夢見すぎなのよ」
アンコがお代わりの汁粉ドリンクを注文しながら吐き捨てる。
「夢見ちゃ悪い?」
「夢の度合いによるわよっ」
自分の頭上で視線を闘わせている二人に挟まれてナルトは焦る。
「だいたいねーっ」

家事が苦にならず率先してやってくれて、特に料理が得意で、物腰は柔らかなんだけど仕事が速くて、身の回りの世話はもちろん嫌な顔ひとつしないでいつもニコニコしていて、白いエプロンが良く似合って、最悪の自分を優しくしかってくれる一方で最高の自分を褒め称えてくれて、自分を何よりも大事にしてくれて、そしてたまにプリンを作ってくれる人を~なんてそりゃ奥さんじゃなくてもはやお母さんだよっ!!

一気に言い放ったアンコはぜえぜえと肩で息をしている。
そんなアンコの姿にナルトは目を大きく見開く。
「い、今のって?」
「昔カカシが酒の席で理想の奥さんについて語った言葉だよっ!くのいち全員ドン引きだよっ!」
カカシはというと、うんうんと肯いている。本当に言ったらしい。
ナルトには物心が付いた頃からお母さんという存在はなかったのでいまいちピンとこなかったが、そんなスペシャルな人がいたら確かにお嫁さんになってほしいなと思う。
なるほど。カカシほどの忍びであったら相手もそれにつりあわないといけないのか。
ナルトの視線を感じたカカシはそれをどう解釈したのか困った表情を浮かべた。
「こういう稼業だからね、相手に癒しを求めているのよ俺としては。でも、なかなかいないみたいでねーそんな人」
そういってさびしそうに笑ったカカシをナルトはずっと見つめていた。

そして。
この時アンコの口から出た「カカシの言葉」が後に意外な展開を呼び込むことになる。 


『結婚とは顔を赤くするほど嬉しいものでもなければ、恥ずかしいものでもないよ。』
by夏目漱石
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