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2024年05月19日
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結婚できない男 2

2010年03月11日
とはいえ、自分達の上司は決して非モテではない、というのもその後に判明したことなのだが。


結婚できない男 2


ナルトはアンコとともに甘味処の軒先に設置された席、オープンテラスですから!と説明された場所に仲良く座って団子を頬張っていた。
(ちなみに本人達はまったく気づいてないが、この界隈の商店街では甘味を美味しそうに食べる二人として有名であり、その効果を遺憾なく発揮して店内に吸い込まれるように入っていく人たちが多数である)
「あれ?あっちから来るの、カカシじゃん」
アンコが行儀悪くも団子の串で指し示した方向をナルトも見る。通りの向こうからいつもの本を読みながら歩いてくるカカシが目に入った。
「カカシ先生ー!」とナルトが大きい声で呼びかけると、呼ばれた男は顔を上げ片方しか見せてない目を弓なりに細める。
そういう表情をするとカカシは途端に印象が柔らかくなる。

「おーや。こんなところでデートですか、お二人さん」とカカシ。
「ふふん。こんな若くて可愛い子と一緒で羨ましいでしょ」とアンコ。
「カカシ先生は何してるんだってば?もし暇だったらオレ達とお茶しねー?」とナルト。
ステキなお誘いだけどねー俺は甘いもんはちょっと、とカカシが答えるとアンコが「プリンだったらいいって?うひひ」となにやら含み笑いをしている。
「プリン?先生、プリンが好きなんだってば?」
ナルトが問うとカカシの瞳は苦笑する。
「……まぁそれは、言葉のアヤというかなんというか。アンコもこんなとこでそれを持ち出さなくてもいいでしょ」
「照れなくてもいいって」
アンコがふとカカシの後方に視線をおくって口を閉ざす。
その様子を見たナルトも何事かあったのかと思い、体をずらしてカカシの後方を見ようとする。
と。
「か、カカシさん!」  
「はい?」
カカシが振り返ると、心なしか頬を染めた女性が立っていた。忍び装束とまったく違う、柔らかな生地と色合いで作られた服を着ている。
「あの!お時間ありますか!お話がありましてっ!」
「んー」
アンコはその様子をニヤニヤしながら、そしてナルトはきょとんとした顔をしつつ、カカシとその女性の顔を見比べている。
「話ってなーに?ここでよければ聞くけど」
ここで、ですか?と一瞬女性は怯んだようである。が、意を決したようにカカシと視線を合わす。
「カカシさんのこと、私ずっと見てました!好きです!もしよかったら……」
「いいよ、付き合おー」
あっさりと言ってのけたカカシに、衆目の前で勇敢にも告白をかました女性もびっくりする。
「俺なんかを好きになってくれてありがとーね」
そしてカカシはまた目を細めた。
向かい合った女子はますます頬を赤く染める。
「あのさ、俺これから明日の任務の確認のためにちょっと、顔出さないといけないんだよね。そのあとでよければー……君の名前もわからないし、いろいろと聞きたいんだけど、イイ?」
「は、はい!」
そしてカカシはさらに目を細めて笑みの表現をする。目の前の女性は真っ赤だ。
「じゃーアンコ、ナルト。俺達行くから。またな」
「おー。いってらっしゃいっ」
「はいってば」
ひらひらと手を振ってまるで追い立てるような仕草でカカシを見送ったアンコが、隣に座っている子供を見る。
ナルトはなんだか神妙な顔つきをしていた。
「ねぇアンコ先生」
「なに?」
「カカシ先生ってば、あのネーチャンと結婚すんのかな?」
「は?結婚?まさかっ。あっはっはー」
恋人→結婚という図式を想像したナルトの子供らしい予想に、アンコは笑う。
もちろんそういう反応を返されたナルトはといえば気分がいいものではない。丸いほっぺたをさらに膨らます。
「ああ、ごめんごめん。アンタを馬鹿にして笑ったわけじゃないよ」
それでもまだアンコはひーひー笑っていた。目には涙まで浮かんでいるところを見るとよっぽどツボにはまったらしい。
「……ふう。おかしかった!あのさ、アタシが見たところあれも3ヶ月だね」
「あれも?3ヵ月?」
「そそ。カカシはねーなんでかオンナが切れないんだけどさ、いっつも3ヶ月しか持たないんだよねー」
早いと1ヶ月とかもあったわまったくあれのどこがいいんだか一般女性の考えることはわからないわー、とアンコが笑う。
「でもさでもさっカカシ先生って上忍だしきっと金稼いでいるし有名人だし」
「だから、ダメなのよ」
きょとんとするナルトにアンコはまぁ見てらっしゃいとにんまり笑う。

そしてきっかり3ヶ月後。アンコの予想通りにカカシは彼女と別れたという。
しかもまた振られるというパターンで。
ナルトの中で謎が深まったが、当のカカシはというと「まーた振られちゃったなぁ」と苦笑しているだけだった。

『男はみんな賭博師だ。でなきゃ結婚なんてしやしない』
byフレデリック・リット
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