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2024年05月19日
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愛情指数ぷらす100 後編

2010年02月26日
愛情指数ぷらす100 後編



「……面の兄ちゃんっいつの間に!どこから!」
「そこから」
指差した先は、窓だ。
「兄ちゃん、そこは玄関じゃないってばよ」
「気にするな」
「気にするってば!」
「んで、これ見てたの?」
あ!とナルトが叫んだ時にはナルトの体の下になっていたものはすでに面の兄ちゃんことカカシの手の中にあった。
「『星座別恋愛攻略マニュアル-相性・結婚まるわかりでメルヘンゲットォ!-』?……ナニコレ?」
「占いの本だってば」
「こんなのに頼らなくたって俺とナルトの相性はバッチリだよー?それとも俺というものがありながら他の男を?誰よそいつ?あ、まさかまたミズキ先生ってやつ?ホント奴は邪魔してくるなぁ。やっぱり殺ってこよう」
くるりと振り返って窓から出て行こうとするカカシをナルトが「うわー!怖いこというなってばー!兄ちゃんやめてー!」と叫んでその体にしがみついて止めた。

「大体、隠すからいけないんでしょー。疚しいことでもあるのかって俺勘繰っちゃったじゃない」
「ゴメンナサイってば……」
なぜかテーブルに向かい合って座り、面の男から説教を受けているナルト。
「それにしても相性占いねぇ……」
「そうだ!ねねね、面の兄ちゃんの誕生日っていつ?」
「ん?9月15日だけど」
「9月15日?」
「……ナニヨ」
「兄ちゃん、もしかしてじいちゃんなんだってば?」
ぴしっ。
ナルトが己の額を両の手の平で覆って呻く。
「言うと思ったけどね。思ったとおりの反応だったから反射的に手が出ちゃったよ。まぁ俺はデコピン1つで世界を獲れる男だからな。痛かったでしょ」とカカシはしれッと言う。
「うう……」
「だいたい誕生日うんぬんいったら、お前なんて……」
男の口から出た言葉にナルトは体が竦みそうになった。
(10月10日は、里の鎮魂日)
祝い事には向かない、あまりいい日といえない日に自分は生まれたのだった。
「……目の愛護の日で、空を見る日じゃないの。そうかだからお前の目って綺麗な空の色してるんだ」
え、とナルトは声にならない声をあげる。
目の前の男はぺらりとページを捲ってはざっと目を通しているらしい。
「は?、なんで?」
素っ頓狂な声があがったと思ったら途端に猛烈な勢いでページを捲りはじめた。
「兄ちゃん?」
「なんで?なんでオレとナルトの相性が45%なわけっ?!」
ナルトがそのページを覗き込むと。

『乙女座の彼と天秤座の彼女の相性----45%
純粋な彼は、上品でエレガントな彼女に強くひきつけられます。やさしい彼が彼女にとことん尽くす優雅な恋になりそうです』

「……あ?」
純粋な彼?上品でエレガントな彼女?尽くす優雅な恋?そもそもこの解説が合ってない気がする、とナルトは思った。
それとも自分がもう少し大人になって面の兄ちゃんと向かい合えるようになった時にはこんな恋が生まれるというのだろうか……いやそんなわけない。二人はそういう仲ではないのだから。
自分の想像にあはは、と笑い出したナルトだったが面の向こうからの鋭い視線を受けてその表情のまま固まる。
「笑い事じゃないでしょー。ちょっとこの本間違ってるんじゃないの?」
そういって男はさらにページを捲る。
「血液型……60%?普段からそんなに合う組み合わせではない?長い事やっていくと出てくるのが、お互いの実行力と行動力のぶつかり合い。どちらかが引く事をしないといい方向にはむかないはず?
……これも60%?今後の展開次第で良くも悪くもなるでしょう?
こっちのは?また45%ー?縁はあります。お互いの努力次第ですー?
これはどうだっ……二人は、お互いの価値観を理解することができず、どちらかが我慢しないと成り立たない関係といえますー?
次!……どうしてこの2人、一緒になっちゃったかなあ?最初から本気で付き合うつもりありました?性格も趣味も全部バラバラ。っていうよりお互い、どーでもいい感じになってるよ。仮面夫婦じゃなくて仮面カップル?だってー?」
ばりっ。
「あー兄ちゃんっ何すんだってば!それオレの本ー!」
男の手の中には見事に真っ二つに引き裂かれた本が。
「うるさい。こんなの間違ってる。信用性に欠ける。当てにならない。インチキだ。ここの編集部には今すぐ天誅を下さねば」
地を這うような声とはまさにこのことか。纏う雰囲気が変わったのを感じ取ったナルトは縮み上がる。
面の男がナルトに手を伸ばそうとすると、ナルトはびくついた。その様子を見た男はナルトの頬に触れるか否かのところで動きを止め、その手をぎゅっと握り締めた。
次の瞬間、男はナルトの部屋から消えた。
「に、兄ちゃん?!」
ナルトが部屋の中を見回しても、男を呼んでも、返事はない。
「……面の兄ちゃんってホント、わっかんない人だなー」
苦笑いを浮かべるナルトは本のページをいくつか捲ると、自分の筆箱から黒ペンを取り出した。

翌朝。
全身埃だらけのカカシがナルトの部屋を窓の外から窺うと、すでにアカデミーに登校したあとなのだろう。無人だった。
物音を立てずに中に侵入し、部屋の中央に備え付けられているテーブルに近づく。
テーブルの上には二分割された本が。
「……アレ?」
相性を数値で表したそれになにか書き足されている。太い縦線が1本。
「これって……」 
そこには60%だったものや45%だったものが、全部160とか145とかになっていた。
「ははは、さすが俺のお嫁さん。俺の気持ちをわかってくれている」
たかが相性占い、されど。
当てにならないうんぬん言った自分が一番気にしていたわけで、あの子はどんなことを考えてこういうことをしたのだろう。
あの小さな手で。
「運命も変えてくれちゃうわけだ」
160と表記された相性占いのページの項目を目に留めていると、バラバラになった他のページが目に入った。
「あれ、……年齢差がある場合?」

『孤高の思索家、こだわり派の彼氏と軽快で品のよいソフトイメージの彼女、生まれ月も近くとても親近感があります。
やや女性上位になりがちですが、12星座でみる限り相性的にもナイスカップルになれる可能性があります』

「お、おおおおお?!」
思わずカカシは叫んだ。
「……なーんだ。やっぱり俺とナルトって相性最高なんじゃなーい。ナイス編集部っ!感謝の手紙を書かなくちゃ!」
感謝されるはずのその編集部を深夜に襲撃してデータ系をまっさらにしてきたということを忘れてカカシは喜びの声をあげる。
その頃、アカデミーでは。
「サクラちゃん今度はなんだってば?」
「ナルト、ナルトー。動物占いって知ってる?これによるとねー……」
新たな火種が用意されていたことをカカシは知らない。

どっとはらい。


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あち様による6万リク「おぼこなナルトちゃんにサクラが一生懸命女の子のいろいろ話を言い聞かせたりしてる話」。あまり言い聞かせてません(苦笑)あち様のみ持ち帰りOKです。ありがとうございました!

補足→「空を見る日 」
長野県の文化グループ「信濃にやか」が制定。この日の午前10時10分に、日本じゅうで空を見上げて、その美しさを語り合おうと提唱している。日付は東京オリンピックの開会式が行われた日の青空の美しさからと、10をテン(天)と読む語呂合わせから。
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