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2024年05月19日
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百花繚乱恋の歌 7

2010年01月29日
大事なことはちゃんと言葉にしないと。


7 百花繚乱恋の歌


「あの時?……ああっ!」うずまきさんがようやく合点がいったという表情をする。
うずまきさんにとってはもう遠い過去の話なのだろうか。俺の中ではまだ消化できていないというのに。
「カカシが誤解だ、っていってたし、そうなんだなって。だから話は終わりにしよう、って……あ」
「ほら、やっぱり」黒髪の男は盛大にため息をつき俺の手を離した。
つまり。
どういうことかというと。
俺がうずまきさんの言葉を取り違えたということ。それでいろいろ悶々として。でもうずまきさんのあの言葉だったら仕方ないだろう?言葉が足りなさすぎなんだ。
「は、ははは」思わず笑いがこみ上げた。
カカシ?と美夕が問いかける。
その彼女に向き合う。
「美夕」
「な、なに?」
「俺ね、うずまきさんと結婚を前提としたオツキアイしてるの。うずまきさんと別れることになっても好きなのはやっぱりうずまきさんだけ。だから……お前の気持ちに応えることは絶対、無い。ごめん」
今まではっきり言わないでいてごめん。俺の宣言を聞いた美夕はポカンとしている。
「で、でも、カカシ、私の気持ち、知ってたでしょ?アカデミーの頃から私、カカシのことが好きで」
「知ってたよ。でも気持ちに応える気は全然なかったから、無視してた。気がつかなかった?」
美夕の顔色がだんだん青くなっていく。
「ど、どうして美夕じゃだめなの?ナルトさんなんてカカシよりも年上だよ?人によって態度変えるし、それに」
「うずまきさんは他人を貶めたりしない」
美夕がハッとして自分の口をその手で押さえた。そしてみるみるうちに涙ぐんでいく。
「ごめん」
重ねていうと、美夕は何も言わず走り去っていった。
しばらくしてうずまきさんが美夕の去った方向を見て「オレ、美夕に嫌われてたのかー」と複雑な表情をしている。
仕方ないかーと苦笑を浮かべたうずまきさんに、女の勘ってやつでナルト君のことを察していたんだろう、と黒髪の男が答えた。
「ま、サクラちゃんの部下だし、きっと大丈夫だってばね?」とうずまきさんが極力明るい声を出す。
あの子はサクラ君の部下か、と黒髪の男がなにやら考えこみ、そして「なるほど、だったらあの子は強くなる」と言う。うずまきさんは大きく頷いている。
それにしてもこの男はなんなのだろう。やけに事情通だし。それにこの声。どこかで聞いたことがある。
とりあえず俺は今度はうずまきさんのほうにぐるりと向き直る。
「うずまきさんッ」
「は、はいってば!!」
「俺はうずまきさんが好きです」
「うん。知ってるってばよ?」
「でもうずまきさんは?気持ちをちゃんと言葉にしたことはありませんでしたよね?本当のところ、どうなんですか?俺の告白に流されてオツキアイしているんじゃないですか?」
「それは……っ」
「だとしたらはっきり言ってください。大事なことは言葉にしないと伝わらないものです。そして俺はどんな答えでも覚悟は出来てますっ!」
はっきりと言い放ち、うずまきさんの目を見据える。
目の前に立つ、俺の好きな人は、いつもの笑顔を浮かべようとして、失敗していた。
「……好きって言われて嬉しかったってば」
「はい」
「オレってば、オツキアイって初めてだからどうしたらいいかわかんなかった。だから皆よりもちょっと優先するみたいなのでいいのかなとか思った」
「はい」
「それにオレ、カカシよりも年上だから」
「はい」
「あんまり甘えちゃったら大人のくせにとかって言われて愛想尽かされるかなとか」
「……はい?」
「だけどいっぱい一緒に居たくて、カカシの修行の邪魔になっちゃうから会うのも出来るだけ我慢しなきゃ思ったけど、でもやっぱり会いたくなって」
「……えーっとそれって」
「その、だから、つまり」
「……」
「カカシのことが大好きだってばよッ!」
まるで戦闘に挑むかのように踏ん張って、なうずまきさんの告白に黒髪の男が、おーっという声とともに拍手をする。
真っ赤な顔をしているうずまきさんがそいつを睨むと「きちんと言えたな」と微笑む。それを受けてうずまきさんはうーっとか唸っている。
それにしてもこの男は本当になんなのだろう。
俺の視線を受けていることに気がついた男が「ああ」と、そういえば自己紹介してなかったねと微笑んだ。
「うちの愚弟がどうやら迷惑をかけているようで」
「え」
改めて男の容姿を見る。
……もしかして。
「もしかして、サスケ先生の、お兄さん、とか?」
「正解」
「は、初めまして。変なところを見せてすいません」
俺が慌てて頭を下げると「初めて、ではないんだけどね」とその人は言った。
え、と戸惑う俺の耳元で。
「ナルト君は君の事がちゃんと好きだと言ったよね?」彼はそう囁いた。

あれから時がたった。
各自の昇格とともにサスケ班は解体されて今では全員違うメンバーとマンセルを組んだりしている。
紅とアスマは今では付き合っている。本人達は隠しているつもりだがバレバレだ。
美夕はというと俺達の予想を裏切って今も忍びとして里に貢献している。戦忍には向かなかったけれどもいわゆる内勤として仕事に従事している。
特定の人と付き合っているという話は聞かない。「あの人ステキ。カッコイイ。今度こそ運命の人かも」といつも盛り上がっている。時々相談を持ちかけられるが楽しそうな表情でその時の片恋模様を語っている。
サスケ先生は相変わらず片思い中で妄想中だ。俺へのイヤガラセも相変わらず続いているがこれは甘んじて受けている。
そして俺は。

実はうずまきさんは人見知りが激しくてなかなか他人とは打ち解けられなかったが、今ある友人達とはそういう中で育んできた強い友情で結ばれているとか。
実はうずまきさんはその友人達に俺という人が出来たことをそれはそれは嬉しそうに打ち明けたせいで友人達全員がはたけカカシなる人物に興味をもったとか。
実はうずまきさんは風影様ともそういう友人関係にあって、さらに浅はかならぬ縁があり(その存在と尽力で砂と木の葉の同盟の影の功労者だったりだとか)当然風影様もはたけカカシに興味を持って協定の折に周囲を説き伏せ単身やってきたのはいいがさすがに護衛はつけといたほうがいいだろうとの申し出にうずまきさんを指定した(一応暗部も数人つけた)とか。
実はうずまきさんは誰かの気配があるところで眠ったりしない性質だから俺の膝枕で眠りこけている姿を見て、心から信頼しているんだなと思ったとか。
後に、そういうことをサスケ先生のお兄さん、そして現在は俺の直属の上司となったうちはイタチさんから聞かされた。
でも俺と初めて顔を合わせたときから、彼女は笑顔だった。だから美夕が人によって態度が違うというのがぴんとこなかったのだ。
話で聞いていた男に多少なりに興味をもっていて、そしてその人物に会えたら嬉しくて笑うだろう?
そんな風に語るイタチさんの顔がとても優しげなので、もしやと思い、ある時聞いたことがある。
その時の答えは。
「彼女が幸せならそれでいい。愚弟はその辺を理解すればいいのにな」
だった。

身長はかなり伸びた。
「オレが愛情こめて育てるとみーんなでっかくなるんだってばよ!?」
と誇らしげに笑う彼女のことを今では俺は「ナルト」と呼んでいる。
「ナルト」
「なんだってば?」
「ナルトのことが大好き。昔も、今もこれからもね」と告げる。
すると彼女は「オレも大好きだってば!」と笑う。
それはまるで花が咲き誇るようかのようだった。


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これにて完結。ありがとうございました。
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