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2024年05月19日
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百花繚乱恋の歌 6

2010年01月28日
振られた、と。
意識すると涙が出そうになるのはまだそれほど日が経っていないから。
でも、それくらい許されるだろ。


6 風吹けば木安からず


それからの数日。
サスケ先生や班の仲間とともに任務を終えて受付所にいくと、美夕が必ず待っていた。
俺の姿を見つけると「カカシー」と駆け寄ってきて、右手に縋る。
紅はその様子を見てはむっつりと黙り込むし、アスマはそんな紅を見てはどこか遠くに視線を飛ばす。
サスケ先生はなんだか奇妙な表情を浮かべて俺達を見るのだけれど、結局なにも言わずに受付所のカウンターに本日の任務報告を出す。
俺はというと、美夕にされるがままになっている。
「ちょっと、美夕。あんた、いい加減にしなさいよ」
紅が周囲に気を使ってか、小さい声でそう言う。
言われた美夕はというときょとんとした顔をしている。
「なにが?」
「なにがって。カカシが迷惑してるって私は言いたいんだけど」
「えー?だったらカカシがそう言うんじゃないのぉ?ね、カカシ?」
美夕が上目づかいで俺を窺う。
黙っている俺を見て、紅と美夕の反応は対極にある。
なんだかどうでもよくなっていたから。
我が意を得たりというかのように口元に笑みをのせたまま「迷惑じゃないってー」と答える。そしてうふふ、と笑い出す。
紅がぴく、と反応する。
「なーに、紅。もしかして美夕がカカシと仲がいいから、嫉妬、してるー?」
「……!そんなわけないじゃないッ!」
「紅、声でかい」アスマがボソリと言う。
張り上げた声は思いの外、周囲の注目を集めてしまったようで、サスケ先生すらも紅を見やる。
当の紅は顔を赤くしたが、それでも俺から美夕を引き離し「カカシにはうずまきさんがいるんだから」とその体を押しやった。
「……うずまき、さんって、え?うずまきさん?ナルトさんのこと?」
理解できなかったのか紅の言葉を繰り返している美夕。
言ってやりなさいよ、とでもいうように紅が踏ん反りかえっているが、俺は何も言わなかった。
ほんと、どうでもいいんだ。

帰る道すがら、美夕が俺にいろいろと話しかけてくる。
「ナルトさんっていえば、相変わらず任務休んでいるのよー。サクラ先生に聞いたら、体調崩しているからって。でもこの前風影様と一緒のときは元気だったよね。もしかして仮病?先生を騙すなんてけっこう性格悪いよね」
それはうずまきさんが今極秘任務についているから。サクラ先生が適当に誤魔化したんだろう。
「そもそもあの時ナルトさんがなんで風影様と一緒だったかわかんない。護衛だとしたらもっと上の人がするものでしょ?もしかしてコネ?抜け目なさそうだったもんね。男の人ってあの笑顔を向けられると弱いのね。きっと火影様も騙されたのね」
騙されているわけじゃない。うずまきさんの笑顔は癒しなんだよ。求めちゃうんだ。
それにいい加減にしてほしい。好きな人の陰口を延々聞かされて気分がいいもんじゃない。
「そういえば紅が変なこと言ってたね。もしかして、あの人、カカシをつけまわしているの?」
「違うよ。俺、振られたの」
そうだ、振られたんだ。
「……うずまきさんがいけないのよ。カカシはなんにも悪くないもん。可哀想なカカシ。美夕がいるから、元気出して」
美夕が俺を見上げてそんなことをいうが俺の心はちっとも動かされない。

「あ、カカシー」
名前を呼ばれてそちらを見ると、そこにはうずまきさんが笑顔で立っていた。
横には黒がイメージカラーになりそうな、黒尽くめの服を着用した、の黒髪の男。
俺の進行方向にうずまきさんとその男が立っているから、俺が歩いていくと自然と距離が近づく。
二人の前まで近づき立ち止まった。美夕はというと俺の後方に立ち、なにやらうずまきさんと男を見比べている。
会釈をすると「こんにちはだってば」とうずまきさんがニコニコして挨拶を返してくる。
その表情を見ているとなんだか切なくなる。
別れを告げられたのは、たった三日前だ。
そして、もううずまきさんの横に立つ男がいる。
そんな俺の心の内を気にも留めていないであろううずまきさんは腰のポーチをなにやら漁っている。
はい、と手渡されたそれは紙袋。
「これね、カカシにお土産。チョコデーツ」
「デーツ?」
「ナツメヤシの実。砂隠れでは昔は貴重な栄養源で。それをお土産にしたものだってばよ?」
「へえ……」
「ナルトさん、砂に行ってたんですか?病気で休んでたとかじゃなく?」
美夕が騒ぐ。
「あ」
途端にうずまきさんが慌てる。
すると横の男が「病欠扱いしたのはおそらく君の先生の判断だ。君も木の葉の忍びならわかると思うが守秘義務があって詳細は語れない。だからこれ以上は騒がないでほしい」と微笑みかけた。丹精な顔立ちの男に話しかけられたせいか、一瞬美夕の頬が染まる。
素直に綺麗な男だな、と思った。
二人は並んでも不自然さを感じさせない身長差だ。俺とうずまきさんでは、うずまきさんのほうがまだちょっと高いのだ。
サスケ先生と並んだ時も思ったけれども、うずまきさんのもつ髪色は黒と並ぶとその美しさを増すような気がする。
「うずまきさんの周りって……黒髪の、しかも綺麗な男がホント、多いですね」 
俺はぼそりと呟いた。
するとうずまきさんが小首を傾げる。
「そう?オレってば、カカシのほうが綺麗だと思うけど?」
ね、とうずまきさんが横の男に訊ねると、そいつはこくりと頷く。
うずまきさん、どうしてそんなに嬉しそうなんですか。
「俺なんかよりもその人のほうがうずまきさんにはお似合いですよ」
声にある種の感情がこもってしまって内心あせった。未練がましい。
いたたまれなくて、その場を誤魔化すようにそのまま二人の脇を通り抜けて歩き出す。
すると黒髪の男に手をとられる。しかも瞬時に後ろにねじりあげられた。
「ナルト君。やっぱり誤解されてる」黒髪の男がうずまきさんを咎める。
「え?そうなの?」
ていうか手が痛いんだけど。いったいこれは何の仕打ちだ。
「俺は振られましたから。だから今はここにいるのはつらいです。だから離してください」
さらに美夕が割り込んできた。
「ナルトさんったら、カカシを振ったんでしょ!これ以上カカシを困らせないで!カカシは美夕のモノなんだからっ」と美夕が叫ぶ。
うずまきさんの目がすっと細くなった。
「……カカシはモノじゃないってばよ」
その声色に美夕が震える。
だが。
「え?オレが?振った?カカシを、振った?え?」
うずまきさんがなにやら焦っている。驚いたような、困ったような顔をして黒髪の男を見て、そして俺を見る。
「あの時うずまきさん言いましたよね。終わりにしようって」
なんでこんな悲しいことを確認しないといけないのだろう。涙が出そうだ。


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すいません。終わりませんでした次回で。
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