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2024年05月19日
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驚き桃の木山椒の木

2010年01月21日
驚き桃の木山椒の木


しゃっくり。
別名「横隔膜けいれん」と呼び、その名のとおり横隔膜のけいれんによって起こる症状である。
横隔膜とは胸とおなかを隔てる筋肉のことで、迷走神経や横隔神経知覚枝から、延髄の呼吸中枢に刺激が送られ、そこから横隔神経運動枝に刺激が伝達されるといった流れで横隔膜は働いている。
その横隔膜が、この一連の流れのうちどれかひとつにでも異常な刺激がおきるとけいれんが発生する。
横隔膜が不随意にけいれんすると、胸空内圧が低下し、空気が急速に吸い込まれて、同時に声門(吸気時に声帯が弛緩して緩むことでできるすきまのことで、空気の通り道)がすばやく閉じるので、吸気の流れが妨げられ、そのときに出る音がしゃっくりである。
なぜいきなりこんな薀蓄が出たかというと。

「ひっく」
「なかなか止まらないですね。カカシ先生のしゃっくり」
「んー、困ったねー……ひっく」
七班の任務中、監督をしていた俺から不意にしゃっくりが出た。
息を止めてみても、ゆっくりと大きく呼吸を繰り返してみても、止まらない。
とりあえず部下の本日の任務に差し支えがないだろうから、そのうち自然にと高をくくっていたのだ。
それなのに任務終了時間になったというのに、相変わらず。
「ひっく」
「せんせー、大丈夫だってば?」
最初のうちは「カカシ先生ってばしゃっくりしちゃってダッセーのっ!」と笑っていたナルトであったが今ではずいぶんと心配そうな顔でこちらを見上げている。
「だいじょうぶ、そのうち止まるからね」と安心させるように微笑みかける。
そういえばしゃっくりについての迷信があったなぁ。なんだっけ?
「しゃっくりって100回続くと死ぬんじゃなかったか?」とサスケがぼそりと呟いた。
それだ。
「え、マジだってば?カカシ先生、今何回目?!」
「そろそろ100回くらいなんじゃないのか?」
「カカシ先生っ!先生、死んじゃうってばッ?!」
ナルトがすごい勢いで俺の体を揺さぶる。ちょっと気持ち悪くなりそうなんだけど。
そんな俺の視界に、サスケがニヤリと笑うのが目に入った。
「……」
お坊ちゃん、わざとか。

コンコン、と玄関のドアをノックする音がした。
「はいよーどなた?ひっく」と開けると随分と緊張した面持ちでナルトが立っていた。
何の用?と訊ねる前とナルトは室内の様子を窺っているようだった。
が、テーブルの上のモノが目に入ったのだろう。途端に俺の脇をすり抜けて室内に侵入する。
「ちょ、こらこら」
慌てて奥襟を掴む。
首だけをくりっと振り向いたナルトは目がうるうるだ。
「……先生っまだ止まってないってば?」
「うん、ひっく、まーね」
テーブルの上にはさっきまで水が入ってたコップとか、さっきまでごはんが入っていた茶碗とか、さっきまで柿のへたを煎じたものが入ってた湯のみとかが並んでいた。

「あのさあのさ。オレってばイルカ先生に聞いてきてね。色々調べてきたんだってば」
そういってナルトはポーチからごそごそとなにやら紙切れを取り出す。
「ふーん。イルカ先生に何を聞いてきたの?」
「えーっと、しゃっくりの止め方。呼吸を一分間くらい止める。深呼吸を複数回行う。 冷水を大量に飲む。ご飯をかまずに飲み込む。特定食品……ワサビ、酢、砂糖、蜂蜜、柿のへたを煎じたものなどを摂取する 」
「それはもうやったよ」
「あとはねー。
急に驚かす 。
くしゃみをする 。
あごに水をつける 。舌を引っぱる。眼球を圧迫する 。
腹に湿布を当てる 。直腸壁を揉む。
人肌より多少温かい(40℃~50℃程度の)お湯を少量口に含み、ゆっくりと飲み込むことを 3~4回繰り返す。
どんぶりに張った水を、反対側から飲む 。左手をまっすぐ上にあげ、唾を飲み込む 。
コップに水を入れ、その上に割り箸を十字に置き、四方から一口ずつ飲んでいく 。
なすびをしばらくの間頭に思い浮かべる。
お腹に力をこめて、“にーくーだーんーごー”と出来るだけ長く伸ばしていう。
豆腐は何からできてるの?と聞いてもらい、大豆大豆大豆と三回答える」
最後あたりの療法にはさすがに笑ってしまう。
「笑うなってば!せ、先生は死ぬかどうかの瀬戸際なんだってばよ!」
「だいじょーぶ。先生の知り合いでしゃっくりで死んだ人はいないから」
「マジ?」
「マジも大マジ。……ひっく」
安心させたかったのに最後のしゃっくりで台無し。
案の定、ナルトは今にも泣きそうになってしまった。
「えーっとナルト。じゃぁ古典的なところで“急に驚かせる”ってのはどう?これは1人では出来ないしさ」
妥協案として提示してみると、ぱぁぁっと表情が明るくなる。
そして両手を拳の形にして「……うん」とか呟いてうなづいている。
気合を入れてるその様子にどんなびっくりを仕掛ける気なんだろ、ナルトのことだから「わっ」とか言うんじゃないかな、と予想していたらなんだかちょっと楽しくなってきた。

先生、座って。
とナルトの指示に沿って俺は「はいはい。ひっく」と返事して椅子に腰掛けた。
「そのまま、座ってて」といってナルトは俺の後方に回る。
ああ、やっぱり「わっ」かな?それじゃ想定内で驚かなーいよ、と少し笑みがこぼれたが、なかなかアクションを起こさない。
いつまで経ってもアクションを起こさないのでさすがに痺れを切らして「ひっく。なぁナルト」と振り返ると。
「センセイがスキ、だってば」
と真っ赤な顔して立っているナルトが視界に入った。

しゃっくりはというと勿論。


2010/1/11~2010/1/21 拍手
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