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2024年05月19日
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百花繚乱恋の歌 4

2010年01月20日
揺らぐのは、自信がないせいかもしれない。


百花繚乱恋の歌 4 枝は枯れても根は残る


風影様が表情を読ませない瞳で、ゆっくりと温室内のあちこちに視線を巡らせている。
なぜその人が風影とわかったかというとそれを象徴する装束を身に纏っていたからだ。

「あっ!サックラちゃーん!……って、なんでサッケちゃんもいるってば?」
とうずまきさんがサスケ先生を指差しながら声を上げている。
「こーら、ナルト。ちゃん付けじゃなくて、先生ってつけなさい、一応はね」と苦笑いなサクラ先生。
そしてサスケ先生はというと「なんでじゃない。それからサッケちゃんと呼ぶなと言っただろう。ほんと、お前はウスラトンカチだな」と毎度の台詞を憮然とした口調(でもなんとなく嬉しそう)で返事をする。
「じゃぁさじゃぁさ。サスケがいるってことはさ?」
きょろきょろと周囲を見回し始めたうずまきさん。俺や紅、アスマの姿を確認して「あ、やっぱりいた!ってことはサスケ班もここの依頼、請け負ったんだってば?ありがと!」と微笑んだ。
紅が笑顔で、アスマは片手をあげて応える。俺はうずまきさんを見ながら小さく礼をする。
シズネが手元で小さく手を振るとうずまきさんもそれに応えるかのように手を振り返している。
俺のそばに引っ付いて任務に従事していた美夕はうずまきさんが現れた瞬間立ち上がったものの、そのまま直立していた。
「どうした?」と俺が訊くと「あ、……ううん。なんでもない」と言いつつもそのまま視線をうずまきさんから外さずにいる。
その美夕がおもむろに「ナルトさんは何をしてるの?」と訊ねた。
「あ、オレってばね。我愛羅の護衛中」
我愛羅、という響きに覚えがあった。
『我愛羅ってば我侭なんだってばぁ。自分が不眠気味だからってオレに付き合えとかいってさぁ』
あれは風影様の名前だったのか。そしてこの人がその風影様で。
うずまきさんを二週間見なかったのは今回の砂の国との提携がらみによるもの、だったのかもしれない。
サスケ先生とサクラ先生がアイコンタクトをした後、「全員集合」と声をかけた。
わらわらと集まった俺達の前に、気づいているかもしれないけれどもこの人は風影様。もしかしたら耳に入っているかもしれれないけど木の葉との提携もあって現在木の葉に訪問中なのよ、とサクラ先生がいう。
「……こいつに護衛なんていらないだろう。個人感情で私的に権限行使してるんじゃねーよ」
ぼそりと呟いたサスケ先生は、気がつくと風影様の正面に立ってメンチ切ってる。
「うちは……サスケか」
対する風影様はというとそれを真っ向から受け止めている。
なにやってるんだこの二人。
ハラハラ見守る俺達。
サクラ先生はというと肺の中の空気が空っぽになるんじゃないかというほどの深いため息をついた。

俺の前に立つ男の「強さ」は理解している。
絶対防御、だ。そしてそれだけじゃなく、奴は、強い。
だからといって怯んだりはしない。
その防御の上をいく攻撃をかませばいいだけだ。
『オレのために無茶しないでーっ!サスケぇ!』
瞳を潤ませて叫ぶお前に俺は笑いかける。
安心しろ。
俺は必ず。
「勝ーーーーつッ!」

シズネや美夕が目を丸くしている。
風影様が「……コレはどうしたんだ」とサスケ先生を指差す。
サクラ先生が気にしないでいただければ、と呟き「ほら、あんた達。作業に戻りなさい」と言う。
もちろん俺や紅やアスマはというといつもの妄想か、とすでに判断していたので風影様に各自挨拶をして任務に戻った。
ハーブの一群のそばにしゃがみこんで採取する。今回はエキナセア、紫色の花をつける菊科の植物だ。免疫力を高める効果がある、らしい。
以前、うずまきさんが「どっかの国の人たちがね。風邪や伝染病の予防に使っていたってほど由緒正しいハーブなんだってば。煎じて飲むのもいいけど、丸剤にすれば摂取も簡単にできるってばよ」と説明してくれた。「でもひなぎくとか菊科の花にアレルギーのある人は副作用があるから避けたほうがいいし、免疫性疾患がある人も向かないって話もあってね。誰にでもってわけじゃないけど」と残念な口調のうずまきさんに「副作用って?」と尋ねると「んー、軽いとこでいえば下痢?」とあっけらかんと答えたものだ。
手元が翳った。
視線をあげると風影様が立っていた。
「……お前が、はたけカカシか?」
「ええ、そうですけどもそれがなにか?」
「いや……」
やはり表情が読めない。が、先ほどまでのそれと違ってなんだか探られている気がする。
つ、と風影様が視線を外す。
外したあとに向けられた先にはうずまきさんが立っている。
「こいつか」
「うん、そうだってば」
「そうか」
ニシシと笑ううずまきさん。するとさっきまで表情が読めなかった風影様の雰囲気が柔らかくなった、気がする。
「?」
再び俺のほうをちらりと見た風影様だったが「それでうずまきナルト。これらは砂でも栽培できるのか」と訊いている。
「砂の国で育てるってば?だったらこっちのが……」とうずまきさんが別の温室に案内をする。
俺は二人の後ろ姿を見て、再び手元に集中した。

美夕が近づいてくる。
俺のそばに立ったと思ったら、いきなり「……なんだかナルトさんのイメージが違うー」と声をあげた。
それは周囲にいるやつらにも聞こえるくらいの大きい声だったから、皆が手を止めて美夕を見た。
注目を浴びたのがわかったのかなのか。皆の視線を受けた美夕の表情は嬉しげだ。
そして「だってね、私達と一緒の時のナルトさんてね、あんな風に笑ったりしないもの」と言い放った。
笑わない?うずまきさんが笑わない?
思わず聞き返す。
ねぇ、シズネちゃんそうだよね?と美夕がマンセルメンバーであるシズネに呼びかけると顔を上げた彼女は曖昧な表情を浮かべている。
「そうかな。あまり気にしたことないけど。それにナルトさんはサクラ先生の前でもいつもあんな感じだったと思うけど」
「えー、全然違うよぉ。もしかして男の人とか、エライ人の前だけ態度が変わる人なのかなぁ?」
ヤなタイプだなー、美夕、そういう人、苦手ぇ、と唇を尖らせていう彼女。
後方からチッと舌打ちが聞こえた。振り向くと紅が不機嫌そうな顔をしている。
「さっさとノルマこなして終わらせようぜー」とアスマが面倒くさそうに言った。
アスマの意見に同感だ。
横に立ったままいろいろ話しかけてくる美夕に適当に返事をしながら俺は作業に集中していた。
集中しようとしていた。
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