ＬＯＶ

今思い返すと、それは嵐の前触れだった。


百花繚乱恋の歌　３　花に嵐


「昨日から風影様が木の葉を訪問中なんですって」
次の日。
いつものようにサスケ班の集合場所に行くと紅がそんな情報をもたらしてくれた。
なるほど。
通りで、里の空気がいつもと違ってなにやらそわそわしているなと思ってたんだ。
「里の提携のためとはいえ、ご苦労なことだよなぁ。わざわざ砂、からだぜ」
アスマが砂の里から木の葉の里までの行程を考えて、それにかかる時間を想定して呆れたように声を出す。
木の葉と砂は忍びの里には珍しく関係が良好だ。この関係に尽力したのが四代目火影様と自来也様だという話だ。
そんなわけでかれこれ何年も前から忍びの技術習得に関しても協調路線をとっていて、定期的に指導協力と称して双方から人材が派遣されているし、時には合同で任務をこなすこともあるらしい。
「それにしてもずいぶんいきなりな話だし、風影様自らって･･･珍しいような？」
俺は思い当たった疑問を口に出す。
「まったくだ。おかげでいつもの警備体制ではダメ出しがでた」
と、いつの間に現れたのか、サスケ先生がぼやく。
おはようございます、と俺達がサスケ先生に挨拶をすると、先生は片手を軽くあげて「……ああ」と応えた。
「これからメディカルハーブ園に移動するぞ」
「え、今日の任務はそこですか？」
「ああ」
メディカルハーブ園といえばうずまきさんが管理している場所。
今日も会える。サスケ先生、ナイスチョイス！

だが。
指示されて向かった場所はハーブ園に併設された温室。
そこにはナルトさんはいなかった。

「あ、やっぱりカカシだー！やったー」
名前を呼ばれてそっちを振り返る。アスマと紅もそちらに視線を向け、そしてギョッとした表情を見せる。
向こうから駆け寄ってくるくのいち。それは。
「美夕？」
なんであいつがここにいるの。紅がうんざりした口調で呟き、アスマは乾いた笑いを見せた。

美夕は俺達とアカデミーの同期だ。
彼女の家系はそれなりに忍びを輩出している家柄だから、そういう道を選択するのもごく当たり前な流れであったとしても、おそらく一生下忍で終わる。そしてその前に結婚引退するかもしれない。その程度の才しかない。
はっきりいえば彼女は忍びに向いていない。正直いえば彼女が下忍になれたのは奇跡だとすら思う。
まぁそんな子のことをどうして覚えているかというと。
「久しぶりーカカシー！」
ぼふっと無邪気に俺に抱きついてくる美夕。
「もしかして今日、カカシと一緒の任務なの？美夕、嬉しー」
「ホント、変わってないわー……」紅がぼやく。
「ちょっと。離れてくれない？」
「えー、やだぁ」
美夕の手をとって引き離そうとすると、それに抵抗しようとしてかぐいぐいと体を密着してくる。
「こら、美夕。あんた、なに自分の担当をほっぽいてんの」
「あ、サクラ先生ぇ。だってぇ」
「だって、じゃない。シズネはちゃんとやっているというのにあんたときたら」
サクラ先生というその名の通り桜色の髪色をした凛々しい視線の持ち主は、俺から美夕をいとも簡単に引っぺがした。ありがたい。
そして周囲を見渡すと、これまた同期だったシズネが作業の手を止めて、こちらを見ていた。
軽く頭を下げるとシズネもそれに応える。表情が苦笑気味だ。
「サクラ班と合同作業になる。詳しくはサクラに聞け」
「よろしくね」
サスケ先生が指令書を読み上げ、サクラ先生が挨拶をする。
俺は、サスケ先生、と声をかけた。先ほどから思ってた疑問をぶつけてみる。
「今日うずまきさんはいないんですか？」
おや、という表情をサクラ先生が向けた。美夕も俺のほうを見る。
「ウスラトンカチはしばらく別任務にあたることになっている」
「えー、そうなんですかぁ？なんでナルトさんだけぇ？」
美夕が不満の声をあげた。
そんな彼女にサクラ先生が視線で制しようとしたが、それに気がついてもいない。
「指名任務だからだ」
サスケ先生の言葉に美夕はまだブツブツ文句を言っている。
「美夕もうずまきさんを知ってるのか？」とアスマが訊ねると「だってナルトさんもいちおーサクラ班だもん。途中加入だけどぉ」という。
それなのに同じ下忍で指名任務なんておかしくないですかぁ？と美夕は不満を口にする。
サクラ先生は苦笑し、サスケ先生は無表情だ。

しばらく作業をしていると温室の外が騒がしくなった。
顔をあげたタイミングでドアが開いた。外気が通り抜ける。
「ここっ！ここも見てほしいんだってば！」
空気の流れにあおられて金色が舞う。
「……うずまきさん？」
そこにいたのはうずまきさん。
後ろには風影様の姿が立っていた。

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美夕さんは「never-for-ever」の沙匠様のオリキャラです（参萬リクに登場）許可いただけたのでお名前をお借りしました。