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2024年05月19日
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百花繚乱恋の歌 1

2010年01月08日
うずまきナルトさんとはどういう人だと訊かれれば「意外性が人の形を取っているような感じ」と答える。
彼女と知り合って幾らかの月日が経つというのに、毎度新たな事実が発覚し、そのたびに驚かせられる。
それは常に新鮮な感動だ。


百花繚乱恋の歌 1 花はその主の心の色に咲く


ぽろりともらした言葉にアスマと紅が反応して、揃ってのりだしてきた。
「え、お前まだしてないのか?」
「ちょ、声大きい……」
「カカシって意外に奥手?」
「ちがうって……、って何言わせんのよ」
組み手演習の合間の昼休憩。
皆が持参した弁当を食べている最中、ふられた話題に何の気もなしに答えた俺が悪いのか。
どういう流れでそういう話になったのかは覚えていないがうずまきさんと俺の仲の進展を聞き出そうとしたアスマと紅による誘導尋問だったかもしれない。
それくらいクダラナイ会話の押収だった中のキーワードは。
「俺はキスしたことあるぜ」とおにぎりを頬張りながらサスケ先生が言う。
そう、キス。
じゃなくて。
「サスケ先生、なに普通に俺達の会話に加わってきているんですか。しかもなんでそんなに誇らしげなんですか」
呆れる俺にサスケ先生は胸をそらす。
「ふっ。俺はウスラトンカチとキスしたことがあるからな」
「「「え」」」
サスケ先生がとんでもないことを言い出した。サスケ先生がウスラトンカチと呼ぶ人とはすなわち。
「あれは俺とウスラトンカチがまだアカデミーに通っていた頃の話だ」
ああ、はじまっちゃったわ、と紅が呟いた。

生徒の気配がまだ残る教室の中で俺たちはキスをした。
唇と唇が触れ合うだけの、ほんの一瞬の出来事だった。
けれども、俺から離れたお前は顔を真っ赤に染めて。
『オレのファーストキス……だってば』
ウスラトンカチ。お前のハジメテは俺が全部与えてやる。
俺はお前のことが。

「好きだっ」
「サスケがおかかのおにぎりが好きだっていうのは知ってたけど、そんなデカイ声で主張するほどなんだってば?」
「え、うずまきさん……いつから?」
いつの間にか俺達のそばにうずまきさんが立っていた。
うずまきさんがちらりとサスケ先生を見る。
サスケ先生の手にあったおにぎりは先生の青年の主張により握りつぶされており、歪な形になってしまったそれからは具のおかかがぼろぼろとこぼれていた。
「皆久しぶり。元気だったってば?」
いつものようにニコニコと笑ううずまきさん。
「何か用か」
サスケ先生が手にしていたおにぎりを平らげ、顎でうずまきさんを促す。
こーいう言動・態度を見るとサスケ先生がうずまきさんを好きだなんて到底信じられない。
「ん。あのさあのさ、サスケにっていうか"うちは”にね、火影様から伝令でコレ」とうずまきさんは巻物をサスケ先生に手渡し、それを受け取ったサスケ先生はざっと目を通した後「悪いが今日の演習はここで終了だ」と言った。
紅が不満の声を上げる。
幻術系にその才を伸ばしている紅からすれば演習に当てられた今日のような日はまたとない実践機会だからさもありなん。
サスケ先生が、悪いな任務だ、と告げた。
任務といわれれば仕方ない。
俺たちの先生であるサスケ先生は妄想家でもあるが里に貢献している優秀な忍びなのだ。
「とはいえ、なんでそれをお前が伝えに来る?伝令鳥でも飛ばせばいいだろう」
「あー。だってさぁ、早く顔見たかったし」
俺のほうを見てニシシと照れくさそうに笑ううずまきさん。
実はかれこれ二週間ぶりの再会なのだ。本当は会えて嬉しい。
嬉しいんだけれども俺の心中は穏やかではなくてうずまきさんに微笑みかけることが出来ない。
思わず視線をそらしてしまった。そんな俺をうずまきさんが小首を傾げながら見ている気配がする。
目を合わせることをしない癖に、知覚だけはきっちりそちらに伸ばしていてうずまきさんの反応を窺っている俺。

うずまきナルトさんとはどういう人だと訊かれれば「意外性が人の形を取っているような感じ」と答える。
それは常に新鮮な感動とともにやってくるのだけれども。
実は彼女のことをよく知らないことばかりだからだ、と気がつかされた。
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