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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 19

2009年12月17日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 19


「この里はことナルトに関しては信用がおける者が極端に少ない。それでも俺が判断して選んだ人間に今はナルトの指導を頼んだんだ」
本当は俺が見てやりたかったけども。
そう呟いたカカシが纏う空気はそれまでと一変されていて、それがサスケに突き刺さる。
「サスケ。お前さー本当は俺をナルトから遠ざけたいんでしょ?」
「そんなことは」
「考えてないとでも?お前がなにを考えているかなんてこれっぽちも想像もしたくないけどね?たとえば俺がナルトのそばにいなければ、これ幸いとお前がそこにおさまるつもりなんじゃないの?違う?」
「違う、いや俺は」
「いっとくけどもお前もいずれその写輪眼の為に狙われる立場だし、現に大蛇丸に目をつけられている。そんなお前がナルトのそばにいていいと思ってんの?危険にさらしたいんだ?」
「俺はッ」
「なーに?」
「俺は、復讐者、だ。そこにナルトを巻き込むわけにはいかない。だからお前も」
「ふーん。それで離れろって?なに自分に酔って都合のいいことをいってんの。お前にとやかく言われる筋合いはないね。俺はね、ナルトを守ると誓っているの」
「守る?」
「そう。ナルトに害をなす全てから、ナルトを守る。絶対にね。あの子が笑える世界のためだったら俺はなんだってするよ。それだけの力も俺はあるし、実際、そうやって守ってきた」
「何?」
カカシの手にはいつの間に取り出したのか、苦無があり、それをまるで手遊びのように扱っている。
「だから今はお前を鍛える。俺の基準ではお前はいらないんだけど、ナルトはお前が必要らしいから、ね」
「アイツがそう言ったのか?」
「あくまでも仲間とかライバルとして、とかじゃないの?知らないけど。もしかして期待した?」
「……」
あーお前ホント邪魔。邪魔だねぇ。邪魔だけどー、残念。
独り言にしては大きな声でカカシはそんなことを言い、苦無をしまった。
それでもカカシの唯一あらわになっている目はサスケを捉えたままだ。
その瞳に宿る光は殺気。
しかしそれ以上の殺気をサスケは死の森でぶつけられて取り乱したことがある。その時に比べれば。
サスケは深呼吸をして、あらためてカカシを見た。
カカシがなぜこんなにプレッシャーをかけてきているのか。
ぶつけられた言葉は、感情は、何を起因として吐露されたのか。
「ナルト……か」
思わず漏れた言葉にカカシの眉がピクリと動いた。
「うるさいよ」
「……お前に守られるだけの存在になることを、アイツが望んでいるとは思えない」
「うるさい」
「ナルトがそうなりたいとでも言ったのか?違うだろ」
「うるさい、黙れ」
「お前こそ勝手だ」
「うるさいうるさいっ!俺はナルトを守るよ。そのためにはなんだってする。じゃぁサスケ。お前はあの子を守れる気でいるの?俺より弱いくせに。ナルトよりも選んでいることがあるくせに。笑わせるんじゃないよっ!」
まるで叫びだ、とサスケは思った。
なぜ今まで気がつかなかったのだろう。
この狂気に。
ナルトはこのカカシを知っているのか?

写輪眼は洞察眼でもある。
カカシが千の技を盗んだ、とかコピー忍者とか言われているが確かにそれは写輪眼さえあれば可能なのだ。
とはいえ写輪眼で読み取れれば、それだけで相手と同じことが出来るという訳ではない。
波の国の任務時で再不斬とカカシが同時に印を組み始め、ほとんど同時に術をぶつけあった。使用した術は、水遁・水龍弾の術。
カカシが瞬時に技をコピーしたとなれば相殺がふさわしいのに、結果は再不斬が押し切られた。
なるほど。
相手の動きを完全に再現出来る身のこなしや、仕掛けた再不斬を上回る術の構成速度はカカシが長年の修行で築き上げてきた力だ。
写輪眼使いの戦闘を目の当たりにしたのはあれが初めてだった。
使い手が直接指導するこの状況は確かにプラスになる。
鳥の羽ばたきとも鳴き声とも喩えられる音が響く。
「これが千鳥の理論。雷遁系で、なおかつ写輪眼の見切りがないと制御の難しい技だ」
カカシが右手にチャクラを集約させてみせる。
「とはいえ今のお前のチャクラだったら連続で二発といったところだろうな。三発目は無理だ」
「……撃ったらどうなる」
「チャクラ切れで死ぬんじゃない?」
飄々と言ってのけるカカシにサスケはわずかに眉根を寄せた。
「お前は死んでなかったじゃないか」
「少しはビビれ。あと波の国での俺のことを言ってるとしたらまぁ確かにね?正しくはチャクラ切れによる昏倒だ」
カカシが手に集まったチャクラを霧散させると周囲には静けさが戻ってくる。
「お前のような手数が多い戦忍タイプはそれだけで、相手に先を読ませないというブラフにもなるが、それに頼りすぎてチャクラ切れというのは最悪のパターンだ。
単独任務でそんな事態になってしまえば無防備な分、相手にいいようにヤラレル、つまり死に直結するわけ。だからこそのチャクラ残有の考慮。わかるか?」
「ああ」
「この1ヶ月で習得してもらう。お前には強くなってもらわないといけないからな」
サスケの目に強い光が宿る。
「当然だ」
さわやかな朝の日差しの中、交わされる剣呑としたやりとりがあった。

強くなる。
今目の前にいるカカシよりも、兄のイタチよりも。
誰よりも強くなって、すべてを終わらせて。
そしてあいつに向き合いたい。
サスケが己のチャクラに意識を向ける。
カカシはその様子を静かに見ていた。
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