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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 18

2009年12月17日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 18


周囲を見回しても緑がない。切り立った岩崖ばかりが目に入る。地熱が高すぎて乾燥してしまう地。
カカシが指定した修練場はそんな荒涼とした場所だった。
ここだったら邪魔は入らないし、もし何者かが襲撃をかけようとしても周囲の見通しがいい分、気がつきやすいから、と理由によるものらしい。
それでも夜の帳が下りると その風景も闇色に染まる。
その頃にはサスケも体力の限界がきて、地にひざをつき肩で息をするのが精一杯になり、それがその日の修行の終わりの目安。
1対1での集中指導は確かに成果をあげていた。
ここで修行を始めた頃は昏倒するように眠ってしまっていたからこれでもスタミナがついてきたということなのだろう。
ごろんとひっくり返って空を見上げる。周囲は遮るものがないから星の瞬きがよく見えた。
「飯、買ってきたぞ」
視線だけを声がした方に向ける。
七班で行動していたときよりもそっけなくなった上司のカカシが立っていた。

弁当を食い終わるとカカシがお茶の入ったカップを差し出してきたので、それを受け取る。
中忍試験に入る前からだがカカシは一緒に食事を取らない。ただ黙ってみているのだ。
それにようやく気がついたのは今の状況になった時。
七班で動いていたときにはナルトの行動や言動に目を奪われることが多くて気がつかなかった。
今ここにいない存在が鮮明になっている、そのことにサスケは少し心が暖かくなった。
ナルトは今、どうしているんだろう。なぜここにいないんだろう。
七班から本選に進出する二人だからてっきりナルトも一緒に指導を受けると思っていた。
だからサスケは、その疑問をカカシにぶつけてみた。
「ウスラトンカチも本戦にでるのになぜここにいないんだ」
「俺なんかよりももっとナルトの指導に向いている人に頼んだんだよ」
結果的には淡々とした返事しかかえってこなかった。
それでも。
自分を取り巻く世界は狭い、とサスケは経験を積む出来事があった。でも狭いながらもおかしいと感じた。
……カップを見つめてそんなことを考えているとカカシがこちらの思考を窺っているような気配がある。だからさらに質問を重ねた。
「聞きたいのは、七班はなんのために存在しているんだということだ」
「……俺がお前らを認めたからだけど?何が言いたいの?もしかしてお前、いまさら忍になりたくなかったーとか言うわけ?」
「違う」
「ま、そうだろーね。お前は忍の家系に生まれ育ったわけだし」
忍の家系。その言葉にサスケは反応する。
シカマル達十班は親の代からマンセルを組んでいた。キバ達八班も名家の集まりだ。
だがカカシ班は。
カカシ班の構成だけは説明がつかない。
カカシは今まで下忍を受け持たず、ことごとく落としていたという。なぜ今回カカシは下忍を担当する気になったのか。
「他国のビンゴブックに載るようなお前だ。弱みになるような要素を排してきたんだろう?だから今まで担当をしないでいた」
「……まぁそうだけど」
それだけじゃない。
成績を考慮してバランスよく配したと班編成のときにイルカ先生が言ってたが、それがおかしい。
イレギュラーなのは誰か。1人か2人かそれとも全員か。
「だから第一の理由は俺が"写輪眼”を有するうちはの人間だから。第二の理由、ナルトも”ナニカ”なんだろ?」
「……」
知っているのにカカシは隠してる、とサスケは踏んでいる。カカシだけじゃない。この里の大人たちは隠したままだ。
「双方を監視しないといけないならばひとつところに纏めたほうがいい。そういう判断を里がしたんじゃないのか。そしてお前はその命令に沿っていたんだ」
それなのに。
「お前はナルトを切り捨てたのか?」
「俺、これでもお前らの担当上忍だからそんなこと」
「じゃぁなんであいつがここにいないんだ」
「……堂々巡りになってるね」
「でもナルトはナルトだ。アイツが何者であっても」
俺はアイツとともに。

「黙って聞いてれば勝手にべらべらと」
途端に殺気をぶつけられ、サスケの手にあるカップにぴしりとひびが入った。
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