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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 16

2009年12月08日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 16


「そこまで言い切ってくれるのは先生としても嬉しいけどね。お前の為になることだから、ね?」
嬉しいとか言いながら、カカシ先生が困った風に目元だけで笑っている。
「……ってばよ」
「ん?」
「誰だってば。オレの先生になる人」
「ああ、来てるよ」
ほらお前の後ろ、とカカシ先生が指差すほうを振り返ると。
「……むっつりスケベじゃんっ!!」
再び待合室にオレの声が。
むっつりスケベと呼ばれたエビス先生は「ご、誤解ですよ!うずまきさんっ!あ、あれはですね?……っ!カカシ先生違うんですよ!」と上擦った声を出した。
へぇ?と小首を傾げていたカカシ先生は「ま、そういうことで」と言って消えた。
あとに残るのは煙ばかり。
「……」
「……」
「オネガイシマスってば」
オレがぺこりと頭を下げると「このエビス、自らの誇りをかけてうずまきさんを鍛えてあげますよ」とエビス先生がうすく笑った。
実のところオレはエビス先生がちょっと、というかかなり苦手なんだけど、きっとそんなことはカカシ先生は知らない。

エビス先生に連れられてきた修行の場は修練場とかじゃなくて温泉宿街だった。
いくつかある源泉から湧出した温泉水はすべて、温度が高すぎなためそのまま引湯をすると熱すぎる。なので宿を囲むようにして誘導溝を作って温度を冷ましている。その湯煙がこれまた温泉街の風情に合っていていいんだよ、と以前イルカ先生が語ってくれたことがある。
そこでのエビス先生の指導というのはチャクラコントロールのさらに上を行く制御の方法。
常に動く水面。
足元にチャクラを集中させてそこへ踏み出すと。
「と、このように水上に立つことが出来るというわけです。さ、やってみなさい」
エビス先生が促す。
そして。
「あああああ熱いってばよーーーッ!助けてーッ!」
オレの叫びが温泉街に響き渡る。

エビス先生がくれたミネラルウォーターのペットボトルをごくごくを飲み干す。
「ぷはー!生き返るってば!」
そんなオレを見てエビス先生はまたうすく笑う。
「ねぇねぇねぇ、エビス先生?」
「なんですか、うずまきさん」
ちなみに今は休憩中。
何回か挑戦してみた結果、すぐにドボンと水中に落ちることはなくなって幾分キープできるようになった時点で休憩を命じられた。
温泉水が熱いということはそこから立ち上る蒸気も熱い。水蒸気の温度は水の沸点よりも高く、さらに熱エネルギーをたくさん持っていて分子の活動量がたくさんだから火傷などのダメージも大きくなる。ちなみに温泉水は鉱水つまり鉱物質を含んだ水でそれに漬かり過ぎてはかえって毒になります、と言うエビス先生の言葉に則っての休憩だ。
「オレ、強くなってる?」
全然技の修行とかしてないのにこれでも大丈夫なんだろうか。限られた時間の中で強くならなきゃいけないのに。
考えてみればオレってサスケみたいに攻撃系の技とか無い。
「勿論」
オレの不安を一掃するかのように間髪いれずに言葉が返ってくる。
「うずまきさん。今、私は君を個人指導しているわけですが、そもそも私は誰をみていましたか?」
「……木の葉丸、だってば」
「そうです。お孫様です」
見返すとエビス先生の表情はやっぱりうっすらと笑っていて。
「火影様が実は血筋至上主義で自分の孫にその地位を譲渡したいという私欲のために幼少の頃から家庭教師役として私を任命したのでしょうか?そして私は権力に逆らえなくて甘んじているのでしょうか」
だいたいそんな孫馬鹿だったらどうしますか?と質問を畳み掛けられてうろたえる。
「才能の無い人の指導を続けるほど私も閑職ではないのです。お孫様は、将来火影になる器だと感じたので個人指導しています。才能あるからこそ」
エビス先生の口角が先ほどより上がる。
「うずまきさん。いくらカカシさんに言われたからといって才能の無い者の指導を続けるほど私はお人よしじゃないですよ?カカシさんも才能ない人に私を宛がうほど目は眩んでないのです」
とはいえ今のところ、私の指導方法は直接実戦に役立つ技を教える類ではないせいで不安になっても仕方ないです。ですが、単純な強さを求めるだけではなく将来の火影と自負するなら信じなさい。私は火影になる者しか指導しませんし、とやはりエビス先生は笑う。
「それに君はお孫様のライバルですから指導にも手は抜きませんが?」
つまりエビス先生がいうことはそういうことだ。けっしてカカシ先生はオレを見捨てたわけではない。エビス先生もイヤイヤオレを指導しているわけでなく。
信じてくれてるんだ。
うすく笑っているエビス先生の前にこぶしを突き出す。
「ドンとこいってば!」

そして数日。
水上静止もずいぶん様になったころ。
「エビス先生っあそこ!女湯覗いている!」
「なんですと?憩いの場でもある温泉街で不埒な行為っ!許しませんぞ!」
そう言って飛びかかったエビス先生をあっさり吹っ飛ばして。
「あいやっこの自来也!取材でこの地を訪れたのだが!それを痴漢呼ばわりするとは!」
と大見得を切っている人に出会うのだった。
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