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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4)  13

2009年11月25日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 13


降って湧いた休み、というか自主訓練日。オレはお気に入りの修練場にとぼとぼと歩いていた。
いつもなら張り切って修行!とか思うんだけどサスケの言葉、サクラちゃんの表情、そしてさっきの先生の行動と、立て続けに見たそれらがオレの中でうまく消化できなくて、自然とオレの足取りは重くなる。
「おい」
「ひっ!」
ぽんと叩かれる肩、そしてまた背後から声。
慌てて振り返ると、そこにはサスケが目を見開いていた。
「……どうかしたのか?」
「あ、えと、なんでもない……あははっ」
笑ってごまかすオレを不審気に見ていたサスケは「まぁいい」と言って「修行するんだろ?」と聞いてきた。
「あー、どうしようかなぁって思ってた」
「……」
会話が続かない。
サスケがオレの手をとって、いきなり走り出した。引き摺られるようにオレも。
「さ、サスケ?」
「サクラには言い過ぎたと思っている」
「……そうだってば!」
「でも事実だ」
「サクラちゃんに謝れっ!サクラちゃん、すごい落ち込んでたんだぞ!」
「でも事実だ」
サスケが足を止めたのでオレも止まる。
肩で息をしながら周囲を見回す。
そこはオレのお気に入りの修練場。
「サスケ」
「波の国で誓ったはずだ。強くなるんだろ、俺達は」
「……っ」
「だから誰よりも強くならなきゃいけないんだ」

そしてオレは今日もサスケん家に泊まっている。

「“あのうちはか”、って言われることがある」
布団の中でサスケがポツリと溢した。
一方的なそれは返答を期待してないようだった。
「面白いだろ。あの、には写輪眼の、が前提、だ」
「写輪眼」
「ああ、お前も知っているだろ。カカシの左目。あれが写輪眼。
カカシはうちはじゃない、のに……」
寝返りをうってサスケを窺うと、サスケは天井を睨み付けながらボソボソと続けている。
「外にいるやつのほうが、“うちは”を評価、する、んだ」
サスケはもう眠りに落ちるのだろう。
真っ暗な部屋の中で聞こえる声がだんだん小さくなる。でも音でサスケも寝返りをうったんだとわかった。
さほど夜目が利かないオレの視界にサスケの顔がよく見える。
「お前も、そうだ、よな」
「……サスケ?」
「お前も、そうなんだろ」
「……」
「なんでか知らないがアカデミーん時とか、お前、けっこういろいろ言われてたよな。俺の耳、にも入って、きてた」
「……うん」
「あのころの、お前って」
サスケの手がオレのほうにのばされる。
その指先がオレの目元をすっとなでる。
「今の、お前って」
それっきり声は聞こえなくなった。ぱたり、とサスケの手が落ちた。
「風邪ひくってばよ……」
オレは起き上がって、サスケの手を布団の中にしまう。
サスケが眠ってくれてよかった。
だって今オレの顔は誰が見ても真っ赤になっているはずだから。

次の日。
「中忍試験がなんぼのもんよーっ!サスケ君についていくわよーっ!」と叫ぶサクラちゃん。
その前で、ハハハーと乾いた笑いを浮かべるオレと「せいぜい足を引っ張るなよ」と呆れた風に、でもちょっと嬉しげに言うサスケが立っていた。
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