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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 10

2009年11月11日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4)10


ふぅ。
小さく息を吐く音が耳に入ってきた。
その音につられて顔を上げると、カカシ先生が窓を閉めていた。
「そろそろ寝ないと、ね」
のんびりした口調でカカシ先生が言う。
部屋を支配していたあの圧も今は霧散しているようでオレはようやく解放された気になる。
「あ、あ。じゃ!オレってば部屋に戻るって……ばーっ?!」
気がつけばカカシ先生がオレを抱え込んだ体勢で布団に横になっていた。
見れば大人の大きな腕が2本、オレの腹に交差するようにして絡み付いている。
「せ、先生?!」
「もう遅いからお前はこのままここで寝ていきな」
「え?ええ?!」
「しー。うるさくすると皆起きちゃうでしょ」
じたばたしても先生の手からは逃れられない。
「……オレってば、寝相悪いしっ布団けっとばしちゃうしっ」
「そんなことないよ」
小さい声が背中のほうからして、そこに息が当たって、熱い。
きっと先生はオレが寝るまで離さないつもりだろうしそれくらい簡単にやってのける。
あきらめて力を抜くと、フフとくぐもった、それでいて楽しそうな笑い声がした。
「そうそう。素直になるのが一番だよ」

波の国での最後の夜。
オレはカカシ先生と一緒に寝ている。
っていってもまだ眠れてない。無理やり目を瞑って寝ようとしているんだけど。
だってさ、だってさ。
オレってばもう逃げたりしないのにカカシ先生ってばずーっとオレを抱えたまんまだからなんだか緊張するし、先生が呼吸するたびに背中に熱が伝わって、それがなんだかハズカシイ。
先生はそのままの姿勢で身じろぎもしないから、もしかしたらもう眠っちゃったのかもしれない。
これに合わせたらもしかしてオレも眠れるかも?と思って先生の気配に自分を同化していく。
九尾に教えてもらったこれは、昔は森の中でよくやっていて、そこだったらうまく出来るしゆっくり体を休めることが出来た。
合わせるそれが森か、カカシ先生かの違い。
しばらくそうやって合わせているとようやく意識がとろっとしてきた。
「……ナルト?もう寝た?」
カカシ先生が背中に顔を当てたまま小さな声で問いかけてきた。
「……ううん。せんせい、おこしちゃって、ごめん、なさい」
先生が微笑んだ気配がした。
「おやすみ。ナルト」
先生の手がすっとのびてきてオレの目元を覆った。
途端に睡魔がオレを襲う。
意識が深いところに沈みこもうとしていた。
「ナルトが生きていく世界にね、サスケが必要っていうならそれでいい」
先生がなにか囁いている。うまく聞き取れない。
「ナルトが笑ってくれれば、それで、いいよ」
遠くからかすかに波の音が聞こえた。

明日は波の国を発って木の葉の里に帰る。
あの日々が帰ってくる。
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