忍者ブログ

[PR]

2024年05月19日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

近道は遠道

2009年04月09日

前回までのあらすじ
カカシはナルトからバレンタインチョコをもらうことが出来ませんでしたとさ。
 
 

近道は遠道



そんなこともあったねーとカカシは嘯いた。
視線の先で繰り広げられている光景はホワイトデーという日に相応しいプレゼントの受け渡し。
もちろん自分の部下でもある愛しい金色の髪をもつ子もそこにいて同期の女の子達と一緒に受け取っている。
あーあ、そんなに嬉しそうな顔をしちゃって。
ん、あいつもナルトからもらったの?え、あいつらも?
ちょっとちょっとー。
俺のナルトをそんなデレデレした顔で見ないでよねー!
渡すもん渡したらさっさとこの場を去れ!
いつもと変わらぬ飄々とした様子で彼女達を眺めているようにみえるが写輪眼はぐいんぐいん回っている状態だ。
お見せできないのが残念である。
 

「ナルト」
ちょいちょいと手招きをすると仲間達の輪から離れて近づいてきた。
「はい。これね、先生からナルトに」
そう言って小さい紙袋を押し付ける。
「……オレってば先生にバレンタインデーチョコあげてないってばよ?」
「うん、まぁ気持ちってやつ?」
カカシが差し出したそれを当惑顔で見ているがかまうことはない。
あげたいからあげる。これだ。
決してホワイトデーに託けないと贈り物の1つも渡せないというわけではない。
断じてそんなことはない。
「ナルトちゃん。カカシ先生からのプレゼント、もらってあげたほうがいいと思うの。でないとカカシ先生、きっと土下座してでもナルトちゃんに渡そうとするんじゃないかな」
もしもしヒナタさん?さりげなく酷いこと言ってませんか?そんなツッコミをいれてしまいそうになるカカシ。
いつの間にかナルトの右隣にヒナタが立っていたのだ。
「カカシ先生、ナルトにだけですかぁ?」
そして左隣にはイノが。
さらにナルトの後ろに立ったサクラが肩口から紙袋を覗き込む。
「これ……!」
「なに?なんだってばサクラちゃん?」
サクラが顔をあげてカカシと視線を合わせる。
「カカシ先生ー?バレンタインチョコのお返し、あれって私達4人で作ったんですよー?」
サクラの目が笑っている。
「こんなブランドショップの包装紙につつまれたものをナルトにだけなんて!やだなぁ私の尊敬する師が贔屓するなんてー。私も先生の可愛い部下なのになー」
「ええ?高いってば?」
「そーよーすごい高いわね」
ちょっとサクラ、そんなこと言わなくていーの!と心の叫びをあげるカカシ。
案の定「そんなの受け取れないってば!」とサクラの言葉を聞いてナルトはあせっている。
「そんなの気にしなくていいから!」
「だって!」
こうなると押し問答である。
それを打開する展開はやはり敵からのアクションだった。
「ナルトちゃん、自分だけプレゼントもらうのって心苦しく思っているのね」とヒナタ。
「そういうこと言っちゃだめよぉ。だってね」とイノ。
「もちろんカカシ先生は私達にも用意してくれているのよ。ナルトを驚かせようと思っての行動なのよ。ね?カカシ先生?」とサクラ。
だから遠慮しないで受け取っちゃいなさい。
三人の乙女はナルトの心情を汲み取り、そして揃ってカカシを見つめるのであった。
 

「あー。なんか思い出したぞ。“将を射んと欲すれば先ず馬を射よ”だったか」
紫煙を燻らせる男が語る。
あー。将を得んとせば馬を射よ、とも言いますねぇ。・・・“馬”、多そうですよねぇ
口に銜えた千本を揺らめかした男が応えた。
彼らの目に映るのは泣きながら某ブランドショップとやらに走っていく里の至宝の姿であった。
 

どっとはらい


-----------
2009/3/15初出

PR
« ++ | HOME | 花香る桃色の日 »