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2024年05月19日
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強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 9

2009年11月08日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 9


明日にはここを発ちます。
夕食時にカカシ先生がタズナさんに告げた。
波の国の任務は完了した。
オレ達は木の葉の里に戻るのだ。

就寝に備えて井戸の前で歯を磨いていたらカカシ先生が窓枠に手をかけて上半身を乗り出してこっちを見ていた。
なんだってば?と目で訊ねると、ちょいちょいと手招きをしてきた。

「お邪魔しますってばー……」
襖を後ろ手で閉めながら小さい声で言うと「普段はそんな殊勝なこと言わないで入ってくるのに。遠慮しちゃってるの?」とカカシ先生がくすくす笑う声が聞こえた。
先生は窓の桟に体を預けた状態。
窓が開けっ放しになっているせいか波の音が聴こえる。
部屋には灯りがついてないせいで暗くて、先生は月明かりを背にしているから表情が見えないけどオレを見ている気がする。
「ナルト」
なぜか名前を呼ばれただけなのにびくついてしまう。
先生から醸し出される気配が鋭すぎて、肌がチクチクする。久々の感覚だった。
「な、なんだってば?」と返事をするのが精一杯になるほどに部屋を支配する空気はいつもと異なっている。
「あー……あの時のチャクラの放出、さ。今回が初めてだよね?」
うん。
「チャクラの源がナニか、お前わかっているよね?」
うん。あれは九尾。
「あれってお前の呼びかけにアレが応えたんでしょ」
うん。オレが頼んだから。
「対話、出来るんだ?」
うん。ずっと前から。
「開放したときにさ。意識、引き摺られなかった?」
うん。危なかったけど九尾が助けてくれてたから。
言葉が凍りついたみたいに出てこない。だから返事の代わりに頭を動かした。
でも先生からすればそれで十分で。
先生はわかっているんじゃないかなと思う。あれは九尾だって。
でもその点を追求することなく次々と質問が繰り出してくる。
聞かれたらちゃんと答えるのに。答えたいのに。
そして矢継ぎ早の問いかけから、一拍おいて。
「それであの力を解放したのは、サスケの為?」
「え……」
部屋を沈黙が支配する。
答えたいのに、口が開かない。体が動かない。
「ねぇ、ナルト。サスケの為だったら、お前、死んでもいいの?」
「……っ」
先生はオレをいつも以上に見ている気がする。
違う。
視線を向けることはなくてもいつも。
いつも先生は視ているんだ。
闇に慣れた目であっても月を背にしている先生の表情は窺い知れない。
けれどもその瞳は強くオレを貫いてくる。

「ねぇナルト?」
『犬がお前を』

音が重なった。
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