忍者ブログ

[PR]

2024年05月19日
×

[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。

強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 8

2009年10月31日
強さも弱さも全て飲み込んで(LOV4) 8


「白サン?なんでここにいるってば?」
結界となっていた幾多の鏡。
それはオレから溢れたチャクラによる衝撃で、すでに粉々で。
キラキラと地に降り注ぐカケラ。
そしてそれまで纏っていた過度なチャクラが嘘のように鎮まっていく。
『お主というやつは……』
オレの動揺に腹の中の九尾が小さく、本当に小さく呟く。
この目の前に立つ奴も。
そして。
あの犬も。
『お前を気に入っているのだから仕方ない。それ故、我も付き合うとしよう』
己が持てる心の強さで、生き抜いてみせろ。
そして決して忘れるな。
見留めるがいい。その最後を。最期を!

タズナさん監督の大橋建設は順調に進んでいる。
工事に関わる人達の表情は一様に晴れやかだ。
この地は流通が海路に頼っていた点もありそこに目をつけたガトーという奴が牛耳っていた。
だからこの橋が完成するとなれば流通経路が二分され儲けが減る。そうなる事をどんな手を使ってでも阻止しようと思った故の行動、とはサクラちゃん談だ。
そのために人を殺すってば?
と問うとサクラちゃんは困った顔をして海平線の向こうに視線を流した。
海風を受けてサクラちゃんの髪が流れる。
「……ごめんってば」
「ううん。私もね、今回のことでいろいろ考えたもの」
再不斬と白は抜け忍で。
追われる身であった彼らだって生きるためには稼がなくてはいけない。
庇護を頼んだ先がガトーだった、というだけだ。
道具として里の掟に縛り付けられて順応に命令に従う。
それが忍び。
だけども白サンは里ではなく、再不斬さんの道具、といった。
それが当然だと言い切った。
その白サンは再不斬を庇ってカカシ先生の手にかかって死んだ。
再不斬はガトーの首を刎ね、その手勢を半数にまで討ち減らして、地に倒れ伏した。
あれも忍びとしての在り方なんだろう。
でも道具と割り切っていいんだろうか。
だって自分は忍びであるけれども人だ。うずまきナルトという人間なのだ。
それに白サンは最後まで道具である己ということに重きを置いていたけれども、再不斬はそれだけじゃないなにかを白サンに思っていたはずなのだから。

「ねぇナルト」
「なに?サクラちゃん」
「あの時、あんたさ」
オレの表情を伺いながら問いかけるサクラちゃん。
あんたさ、と言ったサクラちゃんは口を噤んでいる。
続く言葉はきっと「あの時のあんたのチャクラ。あれは何?」だ。そして「あんたって一体何?」だ。
いたたまれなくてオレは俯く。
聞かれたら正直に答えたほうがいいんだろうか。
横からため息が聞こえた。
チラッと視線を向けるとサクラちゃんがまっすぐオレを見ていた。
「……っ」
「ねぇ、ナルト。私たちさ……もっともっと強くなろう?」
「……うんってば!」
サクラちゃんが空を見上げる。
つられてオレも見る。
二人で見上げた空は青がどこまでも広がっていた。

風が流れる。
そこに浮かぶのは。
「あの時僕は言いました。誰かのために強くなりたいという気持ちがあれば、と。その誰かが見つかりましたね?」
微笑む白サンの顔。
PR
« ++ | HOME | ++ »