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2024年05月19日
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花咲け恋の歌 1

2009年09月23日
「そっかーお前がサスケの秘蔵っこのカカシだってばね!オレ、うずまきナルト!よろしくだってば!」
目の前ででっかい声を上げ、何が楽しいか分からないけれどニコニコ笑っている変な女。
それがうずまきナルトだった。


花咲け恋の歌 1



演習中のど真ん中に突如現れた女を俺をはじめ、紅もアスマも胡散臭げに見る。
「そっちが紅に、あとアスマだね。お前達のことはサスケからよく聞かされてるんだってば。将来有望だってすっごい褒めてるんだよー」
「サスケ先生が?」
「俺達を?」
「褒めてる……?」
俺達の視線がある一点に集中した。
その先に立っていたサスケ先生はというとふいっと視線を逸らして「余計なことをいうんじゃねーよ、ウスラトンカチが」とか言い捨てていた。
「「「……」」」
サスケ先生ははっきり言うと口が悪い。
普段から寡黙でそこが本人の容姿もあいまってクールでかっこいい、とか言うくのいちも多いが単純にボキャブラリーが足りないんじゃないかと俺は思う。
その証拠に口を開けば暴言しか出てこない。
こんなんでよく上忍師なんてやっていられると感心する。
だけどもウスラトンカチ呼ばわりされたうずまきさん……は相変わらずニコニコしている。いやあれはニンマリしているというのか。
そのうずまきさんの表情を見た時俺はまずい、と思った。
なんでそう思ったかはわからないが恐らく本能だ。すでに頭の中で警鐘が鳴り始めていた。
きっとこの人は。そんな予感が容易に。
そしてうずまきさんはというと。
「そう照れるなってば。サッケちゃーん?」
と言い放った。
「火遁、鳳仙火の術」
「え?きゃっ!」
「おいっ!」
「ちょ、サスケ先生!」
うずまきさんの言葉に反応したのか、サスケ先生が得意の火遁を放った。
もちろんそこには俺達もいたわけで各自その場を離脱して避難をする。
「覚悟しろウスラトンカチがっ!」
「へっへーんだ!そんなんでオレを捕まえるのは無理だってばよー!」
演習場の中央にはサスケ先生とうずまきさんの二人。
さっきから殺伐とした術の応酬が続いているはずなのに。
「サスケ先生、なんだか嬉しそうね」
紅が呟いた。

「ん。オレってばサスケが下忍の時、同じ班だったんだー」
昼休憩。うずまきさんが持参したというおにぎりを手渡しされながらそんな話をきく。
口をつけると握り具合といい塩加減といい絶品のおにぎりだった。ただデカイのが気になるといえば気になる点。
両手で持たないと無理なそれを食べている姿は可愛く表現すれば栗鼠の集団のようだ。
「ならうずまきさんも上忍なのか?」と1個平らげたアスマが聞く。
「ううん。オレってばまだ下忍なんだよねー」
うずまきさんはてへへ、と照れくさそうに笑って答えるが俺達にとっては衝撃的だった。
さっきまでサスケ先生と堂々と渡り合っていたうずまきさんが下忍?というかあれで俺達と同じ階級?
「……こいつが中忍試験を受けたのは1回だけだ。あとは師匠の方針とかで修行の旅とかなんとかいって里にいるほうが珍くて昇進試験は受けてない」
黙々とおにぎりを頬張っていたサスケ先生がふと気がついたように「おかか、か」と呟く。
「サスケ、おかかのおにぎり好きだったなーって思ってさ。わざわざ作ってきたってば」
うれしい?うれしい?と悪戯っ子みたいな表情でサスケ先生の反応を窺っているうずまきさん。
心なしかサスケ先生の表情は柔らかい、気がする。
その親しげな雰囲気に俺は「サスケ先生とうずまきさんってもしかしてお付き合いしてるんですか?」とずばり直球な質問をした。
紅とアスマがそんな発言をした俺を見て互いにアイコンタクトを交わしている。
「そうだ」
「んなわけないってば。大体人のことを散々ウスラトンカチとかドベとか好き勝手呼んでさ。こんな口も性格も悪いヤツを好きになったらオレの人格が疑われるって」
サスケ先生の言葉を遮って笑ううずまきさん。ホント、コロコロよく笑う人だ。
「やはり男は性格ですか」
「うん。まぁサスケは顔だけはいいからモテるだろうけど恋人がいないのがその証拠だってば」
「……ちっ」
俺から見てもサスケ先生の漆黒とうずまきさんの金色はお互いに映えると思った。

午後はうずまきさんを交えての仮想敵演習だったがなかなか興味深い展開だった。
移動スピードが尋常じゃないくらい速い、というのは先のサスケ先生とのやりとりでもわかっていた。
それ以外がどうにも腑に落ちないレベルなのだ。
俺やアスマの攻撃ならどんなものでも紙一重でかわす癖にあっさり紅の幻術に引っかかってしまった。
中忍になれないのは本当に選抜試験を受けられなかったからなのか、と疑ってしまうくらいにはお粗末なオチだった。
解呪してもらったうずまきさんは照れくさそうにしているしサスケ先生は「だからお前はドベなんだ」なんていうし。
それでもフォローする人がいれば能力をいくらでも発揮できるタイプなんだろう。
サスケ先生が解散を告げれば本日は終了。
「じゃ、また。今日は楽しかったってば!」と手を振るうずまきさんの頭をサスケ先生が叩いた。
「勝手に乱入してなに調子いいこといってんだお前は。ほら行くぞ」
「むー?!サスケ、エラソウだってば。」
「それがどうした」
いつもと違うサスケ先生、とうずまきさんが連れ立って歩いていくのを見送る。
「カ・カ・シー?」
「さっきから熱い視線だしまくりだな。おい」
俺の両脇を紅とアスマが固める。
「……別に熱い視線なんて出してないし」
「またまたー」
そう言って紅がにんまりと笑う。
同じような表情はうずまきさんもしたのに印象がまったく違う。少なくても紅の笑顔を見ても警鐘は鳴らない。
「たまには三人で飯食うかー」
「賛成ー」
俺の意志を無視して話を進める二人にため息をつく。

下忍でいっぱしの収入を得ているとはいえ、懐に余裕があるわけでもない。
だから量と質、お手軽さから行く店は限られる。一楽もそういう店のひとつだ。
だから足を運んだ俺達の視界に入ったのが先ほど別れたサスケ先生とうずまきさんなのは本当に偶然だと思う。
そして「おっちゃん、お代わり!」といううずまきさんの目の前にはどんぶりがすでに2つ重なっているのは気のせいだろう。
「サスケ先生、デートですか?」と店内に入った紅が尋ねる。
「そうだ」
「違うってば」
あははーと笑ううずまきさんの反応に舌打ちをするサスケ先生。デジャブだ。
他愛のないおしゃべりをしながらラーメンを食べる。賑やかだったのはうずまきさんがいるせいかもしれない。
「ご馳走様ですってば!人の奢りだと美味さも格別だってばよー!」
「それはなによりだ」
三杯目を平らげたうずまきさんは満足気な表情で対照的にサスケ先生の表情は優れない。
俺達の分もサスケ先生の奢りになったせいだろうか。
「んじゃ」
うずまきさんの呼びかけにサスケ先生が手を上げて答えるとにっこり笑って、うずまきさんはその場から消えた。
「本当にデートじゃなかったんだな」とアスマがぼそりと呟く。
隣に座った紅も頷く。
「うずまきさんって楽しい人だし人気ありそう。サスケ先生、ライバル多いんじゃないですか?」
ラーメンのスープを飲み干したサスケ先生は丼を置き「やつはニブイからそういうのに気づいてないだろ」と言う。
ライバルうんぬんについては否定しなかったからこれは本当に多いのかもしれない。
「……やっかいというか手強いんだよあいつは。いろいろと」
そう呟いたサスケ先生は外に視線を送っていた。
見えるのは月。
瞳の奥に複雑な感情が見え隠れしてるような気がする。
が、それは自分がちょっと感傷的になっているせいでそう思い込んだだけで、サスケ先生が言った「手強い」の真実の一端を知ることになるのはたった数時間後だった。


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4万HITSリク文。長くなったので一旦切ります。
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