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2024年05月19日
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人事異動は公私混同

2009年08月20日

人事異動は公私混同



「火影様に折り入ってお願いがあります」
執務室に片膝を立てて控えている者は動物を模した面を被った、銀色の髪をもつ男であった。
 

「おお、カカシよ。お主がそういうことを言うのは珍しいな。一体なんじゃ?」
愛用の煙管で紫煙を燻らせていた三代目火影は話の先を促した。
命じられるまま任務を淡々とこなす、このはたけカカシという男。
物心がついたころから忍びの天才でずば抜けていた。
だから周囲は術を与え仕事を与え、そしてこの男はそれを拒否しないものだから……子供らしい子供時代を送ることなく里の戦力として、里一番の便利屋として生き抜いてきた。
その男からの「お願い」。
知らず知らず、三代目は嬉しそうな表情を浮かべた。
「実は」
「うむ?」
「暗部を辞めさせていただきたいのです」
「……なんじゃと?」
「聞こえませんでしたか。ですから暗部を辞めさせていただきたいと」
「いや、それは聞こえておる」
「ではそのように」
「……何故じゃ?」
忍びとして必要なものはすべて持っていて、天職といえる仕事についているはずのカカシのお願いの内容はかわいらしいものではなかった。
その衝撃に三代目の優秀な頭脳の回転は幾分ゆっくりと回ってしまったようだった。
「忍びとしての限界を感じておるわけではないであろう?」
「それは勿論」
「では何故じゃ」
三代目には今だその意図・真意が把握できない。
煙管の中の煙草からジリッと焼ける音がした。
沈黙が支配する中、カカシがようやく口を開いた。
「ナルトが」
「ナルト?あの子がどうした」
そういえば以前森の中で意識を失ったというナルトを抱え込んでカカシが火影邸を訪れたことがあったな、と三代目は思い出す。
「はい。ナルトがアカデミーを卒業して下忍になるわけじゃないですか」
「……もうそのことが耳に入っているのか」
ナルトがアカデミーを卒業できたのは喜ばしいことである。なにせ潜在能力は悪くなく、むしろいいはず。
(あやつを親に持っているんじゃからの)
しかしナルトの不幸はその親の所業のせいでもある。
ナルトの担当上忍は慎重に決めなくてはいけない。
指導能力に優れ、忍びとしてだけではなく人として健やかな成長を導いてくれる者。できれば偏見なく接してくれる人間。
指導能力だけでいえばエビスが、成長を導くという点でいえばイルカが適任だったがそれぞれ足りぬ部分がある。だからアスマに頼むつもりだった。ナルトのことをまったく知らぬわけでもないし自分の意図も理解したうえでアスマらしいやり方でナルトに接してくれるだろう。そんなことを思いつつ三代目は椅子に深く体を預けた。
そしてふと思う。なぜカカシの暗部解任願いにナルトのことが引き合いに出されたのだ?
三代目が視線で話の先を促す。
「俺はあの子の指導教官になりたいのです。だから暗部は辞めます」
再び沈黙が部屋を支配した。
「……ナルトの担当上忍はアスマにするつもりだ」
「なんですって?それって贔屓も贔屓、身内贔屓えこ贔屓ってやつじゃないですか!」
それまで淡々とした口調で会話をしていたカカシが被っていた面を床に叩きつけた。
「贔屓とかではなく」
「勘弁してください!アスマは喫煙家でしょ!ナルトの心身共に悪い影響与えますよ!健やかな赤ちゃんが産めなくなったらどうするっていうんですか!それよりも俺の目の届かないところで悪い虫がついたらどう責任とってくれるというんですか!」
「お主さっきから何を言っている」
「ナルトは俺の嫁ですから心配して当然です!」
踏ん反り返ってそう返答したカカシの言葉に三代目は顎が外れたのかというほどの間抜けな表情を晒した。
「よ、嫁?いつそう決まったのだ!」
「初めて会った時に決めました」
「カカシ!おおおおお前、自分の年はいくつだと思っているんじゃ!」
「27ですね。ナルトは13ですから14歳差ですがそれがなにか?」
「問題大有りじゃ!大馬鹿者!」
三代目から一気に噴出したであろう怒気に窓ガラスがビリビリと揺れた。
その刹那建物自体からカッと閃光が漏れた。
続いて起こる建物全体の揺れと連続する不穏な音が周囲にいた忍び達の耳に入ったのでその出所に駆けつけた。
駆けつけた先は火影の執務室。
木製の扉はどんな衝撃を受けたのかわからないが通路の壁に吹っ飛んでいた。
恐る恐る室内を覗いた彼らが見たものはもうもうとした白い煙の中、三代目火影とはたけカカシがお互いを牽制しつつも罵り合っている姿だった。
「俺は絶対ぜーったいナルトの担当上忍になりますから!」
「絶対許さん!」
「なんで反対するんだこのクソジジィ!もしやアンタもナルトに惚れてるのか?そうなのか?だったら殺す殺すコロース!ナルトは俺の嫁だーっ!」
「こ、この痴れ者がーッ!」
この騒ぎは奈良シカクが呼び出されカカシを術で押さえつけるまで続いた。
 

結局カカシに根負けした形で三代目がその言い分を聞きいれることになったのだが、この騒ぎではたけカカシの印象が変わったというのはもっぱらの話である。

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俺様カカシとおぼこなナルトちゃん。
こうやってカカシはナルトちゃんの担当上忍という立場を手に入れたのでした。

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