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2024年05月19日
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まだ一緒にいるだけだった頃のお話

2009年08月05日

じりじりと周囲を焼く太陽。
それを反射してきらめく川の水面。
毎度おなじみDランク任務のゴミ拾い。
ヒヨコ達に背負わせた籠。
これがいっぱいになるまで頑張りなさいよーとカカシがそう言って送り出したのは太陽が頭上高く居座る時間帯だったのも毎度おなじみ。
数時間後。
ヒヨコらの頑張りで川の周囲はずいぶん綺麗になった。
来たる夏。ここは水遊びの場になるのだ。
「はい、おつかれさんー」
コドモというのは元気の塊とはいうけれども任務終了を告げた瞬間、さすがに疲れたのか三者三様の態で座り込んだ。
そして来たる夏。Dランクといえども体力の消耗が激しい状況下での任務は続くのだ。
 

で、卓を囲む四人。
 

「焼肉……とは違うってばね?」
「そ。これはホルモン焼き」
網の上に置かれた不思議な形状の鉄板鍋を見守るコドモ達をよそにカカシは注文する。
店員が持ってきた味付け肉の形状も見慣れないものなのだろう。やっぱりコドモ達は不思議そうな顔をする。
それをカカシは目の端で捉えつつも次々と鍋に投入する。
具材はシンプルに肉とキャベツと豆腐。人数分プラスαなのは育ち盛りなコドモ達を配慮して。
ご飯もそれぞれ用に注文した。
すん、とナルトが鼻を鳴らした。
「オイシソーな匂いがするってば!」
「そうね!」
ナルトとサクラがそわそわし始める。
そして「そろそろいいんじゃないのか?」と箸をのばしたサスケの右手を唐突に鍋奉行になったカカシがペシンと叩き「あと1分待ちなさーいね」と告げた。
具材から出た水気が汁となり、焼きというか煮になるがこれこそが柔らかの秘密。
「ささ、今が食べ頃!早い者勝ち!」と合図するとコドモ達は一斉に鍋を突き出した。
肉を口に含んで噛む。
「お?」という表情を見せても飲み下す頃には三人とも満面の笑み。
汁を吸って柔らかくそして味をつけたキャベツと豆腐もうまい美味い!と言って箸が進む。
カカシがこっそり肉とキャベツを追加注文したのもわからぬほどに夢中になって食べている。
最初の美味さの衝撃からようやく我に返ったナルトが「でもホルモンってなんだってば?」と問う。
「モツって言ってわかるかなぁ。内臓のことね。小腸、大腸の肉。まぁ胃、肝臓、心臓、腎臓、子宮、肺とかも含めるかなー」と告げるとナルトとサクラが微妙な表情を見せた。
「ホルモンは部位にもよるが焼肉に比べてカロリーは約半分なんだぞ。亜鉛などミネラルも豊富で低カロリーなのに体にうれしい栄養がたっぷりだ。しかも夏バテなどにも効果的な、ビタミンB群を多く含んでいる。ビタミンB1は神経の調整作用や、疲労回復の効果、ビタミンB2やB6などの美容によいとされていて……女性に嬉しいコラーゲンも豊富に含んでいるんだぞ!」
まぁコドモなうちにはコラーゲンとか美容とか言ってもねぇとカカシは言うがなにやらサクラの箸の動きが速くなっている。
よく見ると自分の小皿とナルトの小皿に2:1な割合でひょいひょいと肉を乗せていた。
そして染み染みに汁を吸って美味しくなったキャベツと豆腐と(サクラの箸にひっかかからなかったはぎれな)肉をサスケが無言で食べている。
当のナルトはというと「よくわからないけど、美味しければいいってばよ!」と皿に乗せられた肉をむぐむぐと口にしている。
「お前らにはまだまだ実感ないかもしれないけども夏場の暑さで消化器系がやられちゃうってのもあるわけ。今日はそれの予防も含めてね」
キャベツと豆腐を各人の皿に乗せるカカシの説明にきょとんとした表情を浮かべるナルト。
「つまりね、薬食同源思想。"肝臓を食べると肝臓に効く ”“心臓を食べると心臓によい”って言われているそれ。消化器系は内臓だから今日のはまさにってやつよ」
とサクラがナルトのお腹あたりを指差しながら説明する。
「なるほどな。医食同源、ともいうやつか。だったらお前は脳を食え。ウスラトンカチ」
とサスケの一言にムキーッとナルトが暴れる様子もいつものことで。
締めはうどん。
残った汁も根こそぎいただく焼きうどん風にする。
 

「ご馳走様でした!」
と店先でニコニコ顔なコドモ達に明日の予定を伝え遅刻しないよーにねと解散の指示を出すカカシに瞬時にツッコミが入るのもいつものこと。
それぞれが家路につく光景もいつもこと。
だけども。
さっきサクラがナルトのお腹を指差したその時。
一瞬間を置いて、だけれどもナルトの表情が強張ったのをカカシは見逃さなかった。
それでもやっぱりいつものように笑うナルトがいて。
……封印とは関係ない。皆でご飯を食べるって楽しいでしょ。だからね。
そういうつもりだったのに。
小さくため息をついてカカシは自分の頭を掻いた。

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