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2024年05月19日
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いつかこの気持ちが伝わりますように

2009年07月09日

いつかこの気持ちが伝わりますように



「ねぇナルト。“面の兄ちゃん”はもうここに来ないっていったら寂しい?」
「……兄ちゃんもいろいろ任務とかあって忙しいんだってばね?なんたって暗部だもんね!オレってば平気!むしろOK!」
ナルトの瞳が過剰な水分でゆらゆらし始めて、強がっちゃってるのが丸わかり。
「いや違う。暗部辞めんの」
淡々と告げる俺をナルトがまっすぐ見つめる。
「えーとそれってば忍者辞めるってことだってば?」
「違う。忍者は辞めない」
「?」
頭に疑問符をたくさん浮かべてる状態のナルトがぱっと顔を明るくする。
「あ、わかった。本当に好きな人ができた?」
「それも違う。俺はナルトが好きだっていつも言ってるじゃない。俺のお嫁サンになる人のことを好きじゃなくてどーするの。だいたい本当に、ってなんなの?俺の気持ちを疑ってるのか?失礼な話だな」
う、と言ってナルトは言葉に詰まった顔をする。赤い顔をして。
相変わらずこの話に弱く、すぐ照れる。
「まぁ延々とこういう意味のないやりとりを続けてもしょうがないから本当のことを言うけど」
「意味ないって!」
ムキー!と抗議するナルト。
それをよそに俺は後頭部で結び目を作っていた面の紐を解く。
「言ってなかったけどさ。俺の名前ね」
「兄ちゃ……」
「はたけカカシっていうんだよ」
面を外して床に置くとささやかな音がしたが、沈黙が支配する部屋では大きく響いた。
 

「面の兄ちゃんも、オ、オレを騙していたってばー?」
涙目になったナルトが俺を責める。
俺の胸元で拳を作ってある意味リズミカルに叩いてる。
それがちっとも痛くなくて思わず笑みがこぼれそうになる。
「騙してないよ。言うのを忘れてただけだしナルトも聞いてこなかった」
ナルトからまたヒクッという音がする。
「名前とかそんなのよりも最初から俺を見てくれてたでしょ?それが嬉しかったんだよ?」
最初の出会いから比べれば大きくなったけれどまだまだ小さくてコドモな俺のお嫁サン。
俺そのものを見てくれたこの小さな存在に救われた。
生きたくなった。
「だってだって……!」
「それに俺はお前を裏切らないよ」
ナルトの動きが止まった。あの瞳で俺をじっと見ている。
「ずっとそばにいるからね」
ふふ、ふふふ。笑いがこぼれてしまう。そんな俺を訝しげにナルトは見返してきた。
「兄ちゃん……?」
「もう毎日一緒だからなー!俺嬉しくて嬉しくて!」
「……え。あ。ああっ?」
咄嗟にナルトを自分の腕の中に閉じ込めてしまったのは、日々の経験からくるものだ。
「お嫁サンだからって修行には手加減しないけどねー!ビシバシ鍛えちゃうよー!」
「当たり前だってば!あとッ!お嫁サンいうのはやめろってば!」
ナルトを抱え込んだまま床に転がる。
「ほら。カカシ先生って言ってごらん?ナールト?」
真っ赤な顔をしてぎゃーぎゃー騒ぐナルトをその程度の抵抗で離したりはしない。
絶対この手を離さないから。
安心してお嫁に来なさいね。

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俺様カカシとおぼこなナルトちゃんシリーズ
2009/07/01初出

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