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2024年05月19日
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自業自得

2009年04月08日

 「え?」
カカシは自分の耳を疑った。
「だから。任務だと言っているであろう。
単独での里外任務。ランクS。所要時間は5日。」
「え?」



自業自得



ちゃんと伝わっているのか否か。
同じ言葉を繰り返すカカシの様子を見て三代目は怪訝そうな表情を隠しもせずに目の前に立っている男を見遣る。
「……お前の希望に則ったのにその態度はなんじゃ?
この時期にお前に見合った任務というのはそうそうない。
たまたまこうして……」
「だって明後日はバレンタインデーじゃないですかッ!」
何を言っているやら。
2ヶ月ほど前に来るその日に里に居たくない。
里外任務であればどんなものでも引き受けます!
と言ってのけたのはお前じゃないか。
それを聞いてカカシは一瞬硬直し、そして目に見えるほど萎れていった。
そしてこう叫んだのであった。
「2ヶ月前の俺の馬鹿!大馬鹿!」
 

カカシが過去の自分を罵るのも理由がある。
彼が受け持っているヒヨコな部下の1人、ピンクの髪を持つ子が任務の帰り道にバレンタインデーにかける気合をそれはそれは大いに語ったのであった。
本命でしょ、義理でしょ、そしてお世話になっている先輩忍者の皆さんにもね!しゃーんなろー!
黒髪の子は聞こえてない風を装って先を歩く。
しかしそれを聞いた金色の髪の子がカカシの袖をくいくいっと引っ張りながら尋ねたのだ。
「感謝の気持ちってのでチョコを贈るのもありなんだってば?
だったらオレ、カカシ先生にあげたいな」
その後に続いた、もちろんイルカ先生にもあげるんだーと無邪気に笑う金色の子の言葉は当然耳に入っていない。
あ、でもオレってばあんまりお金ないや、と言うとピンクの髪の子がくるっと振り返り、じゃぁ一緒に手作りしましょー!その方が安く上がるわよ!と言う。
だったらいのとヒナタも誘おうってば!そうそう、ヒナタってお菓子作るの上手いのよ!
女の子2人がキャッキャと盛り上がっている。
 

そんなカカシの勝手な事情なぞ三代目の与り知らぬところである。
今やカカシはグラウンドにがっくり膝をついている負け投手状態だ。
放っておいたらいつまでもそのポーズでいるだろう。
そしてそこに根つくのだ。うざいことこの上ない。
「さっさと行かぬか」
するとうちひしがれていたはずのカカシがクワッと目を見開いた。
「だったら2日で片をつけてきます!ええ、そうです!天地神明に誓って!」
そして瞬身の術でその場から消えたのであった。
 

結局。
確かにカカシは任務を2日で完遂したのだがやはりその反動があった。
任務をこなすためとはいえ写輪眼を酷使しまくったのだ。
その結果里に戻った途端に倒れ込みそのまま木の葉病院に収容。
次にカカシが意識を取り戻したのは4日後。
最初に目に映ったのは愛しい金色の髪の子。
「ナルト……。俺の分のチョコは?」
目覚めの言葉としては不適切であろうがそれを責める人はこの場にはいない。
当の子供はというと一瞬きょとんとした顔をしたが、ああ!と手をポンとうつ。
「あのさ、ヒナタがさ、手作りは日持ちしないっていうからさー全部配っちゃった」
だからもう無いんだーとニシシと笑う。
その瞬間カカシが真っ白に燃え尽きたとしても致し方ない。
それはここを読んでいる皆の周知のこと、そしてお約束だからだ。
 

どっとはらい。

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2009/02/15初出

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